ライン

雨宮結城

Battle 1

 桜が舞い散るこの春、少年少女達は高等学校あらたなせかいへと、踏み込んでいく。



 この男もまた、新たな世界に心驚かせながら、その舞台スクールに上がった。


「ここか」


 彼が入ったその高等学校は、不良達の中では知らぬ者はいない、東京屈指の不良校。


星鈴高校しょうりんこうこう


「おい」


彼が浸っていると、一人の男が絡んで来た。


「おめぇ……見ねぇ顔だな、新入りか?」


絡んできた男は、星鈴高校の生徒だった。


「今日から星鈴の原澤鋼はらさわこうだ。お出迎えはアンタだけか」


「新入り君よぉ、ようこそと歓迎されると思ってんのかコラァ。 ここ、星鈴だぞ。分かってんのか」


「あぁ……星鈴だろ。 不良偏差値がめちゃくちゃ高いヤンキー高。 そんぐらい知ってるよ」


「じゃあ、なんで来た。 お前みたいな雑魚が」


「なに言ってんだよ。だから来たんだろうが」


「てめぇ……調子にのんのもほどほどにし……っ!」


 彼が言い終わる前に、原澤は軽めの殴りをぶつけた。


「__! てめぇ……」


「今のはほんの挨拶だよ。で、ここのさいきょうって誰だよ」


 原澤が問い詰めていると、体育館の方から、声が聞こえてきた。


「あっちか」


 殴り倒した相手を置き去りにし、原澤は体育館の方へと向かった。


その体育館では、入学式が行われていた。


 だが、名高い不良校の入学式が普通の入学式のはずがなく、体育館は不良生徒達が暴れ回り、荒れていた。


「おぉ……荒れてんなぁ」


 原澤に映った体育館の光景は、新入生同士が同じ新入生を見つけては、殴り始めるという、いかにもな光景だった。


「ま……分かってはいたけど。それより頭を探すか」


 原澤は、暴れ回っている同じ新入生達をスルーしながら、星鈴の最強を探していた。


 すると体育館のステージに、仰向けで寝ている一人の男がいた。


「なあ」


 原澤がその男に話しかけるが、その男は寝たままだった。


「星鈴の頭ってアンタか?」


 この一声を合図とするかのように、暴れ回っていた新入生達は止まり、全員が原澤の方へと視線を向けた。


「おい」


そんな中、原澤の横にいた男が話しかけてきた。


「お前、新入りだろ」


「俺は原澤鋼。今日から星鈴だよ」


「俺は三年の加藤陽也かとうはるやだ。てか、原澤鋼か。 なんか聞いたことある名前だな。ここに来る前なんかしてたか?」


「さあ、どうだうな」


「まあいいや、アイツに用なら、なんかアクション起こさねぇと起きねぇぞ」


「アクション?」


「おい!」


「あ?」


 加藤と原澤が話していると、新入生の内の一人が原澤の方へと向かってきた。


「てめぇなに勝手に頭に挑もうとしてんだコラァ」


「あぁ、やっぱあそこにいるのが頭なのか」


「俺を無視して頭に挑むとかふざけてんじゃねぇぞ、あぁ!!!」


「アンタ誰?」


「俺は槅村中さねむらちゅうで番張ってた晃希てるきってもんだよ。お前だってそんぐらい知ってんだろ」


「あぁ~、槅村中ね。なんか弱いやつがイキがってるって聞いたけど、アンタだったか」


「あぁん? 今なんつったお前」


 原澤からすればなんでもない発言でも、晃己は腹を立て、周りは笑っていた。


「やめとけやめとけ」


「お前死んだぞ」


「あーあ、こりゃあ死人がでるぞ」


「晃己は槅村の無敵番長だったんだぞ」


 周りからの晃己の評価は高く、原澤もこの男が騒いでいる新入生の中で一番だと悟った。


「お前、1回死ね」


 晃己が右腕で原澤の顔目掛けて拳を当てようとした瞬間、原澤はその拳を斜め左に避けてかわし、その状態から右脚を振り、晃己の顔に炸裂した。


その蹴りの威力に、晃己は倒れた。


「……」


一瞬の出来事に周りの新入生は固まった。


 倒れた晃己に加藤は近づき、しゃがんで顔を確認した。


「気絶してんな」


 確認した後は、加藤はもう一度原澤の方へ行き、話しかけた。


「やるじゃん。 二つの意味で」


「二つ?」


「アイツ起きたよ」


「え?」


 全員がステージの方に顔を向けると、先程まで寝ていた男が起き上がっていた。


「起きてる……」


思わず言葉が出た原澤。


「お前名前は?」


男は話しかけながら、原澤の方へと歩いた。


「原澤鋼」


「原澤鋼君か、じゃあこうちゃんで」


「え?」


「俺は三年の光村司みつむらつかさ、みっちゃんでいいよ」


「えっと」


陽気な雰囲気に、原澤は戸惑っていた。


「ようこそ星鈴へ。これからよろしくね、こうちゃん」


「あ、はい」


「はるっち行こ」


「その呼び方やめろって」


 星鈴最強の光村司と、その相棒の加藤陽也。二人は体育館を後にした。


「あれが頭? どうなってんだここ」


原澤鋼の摩訶不思議な新生活が今始まった。

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ライン 雨宮結城 @amamiyayuuki0523

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