大文字伝子が行く224

クライングフリーマン

身バレの先輩

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 橋爪警部補・・・愛宕の相棒。普段は、丸髷署生活安全課刑事。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 高木(結城)たまき警部・・・警視庁捜査一課からのEITO出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 青山たかし・・・元丸髷署生活安全課警部補。EITOに就職。江南(えなみ)美由紀と結婚した。EITOガーディアンズ(EITOボーイズ)所属。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 西部警部補・・・高速エリア署刑事。

 早乙女巡査部長・・・元EITO出向隊員。今は島之内署交番勤務。

 早乙女所縁(ゆかり)・・・早乙女の長女。高校3年生。

 早乙女弓弦(ゆずる)・・・早乙女の長男。中学3年生。

 早乙女柚葉(ゆずは)・・・早乙女の次女。小学5年生。ナチュラル・デプスの配下に轢き殺された。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 1月17日。午前9時。EITO大阪支部。会議室。

 大前は、東京本部の早乙女元隊員の娘のことで、東京本部の伝子や斉藤理事官とマルチディスプレイを通して話し合っていた。

 今日は、阪神淡路大震災から29年。隊員達の殆どはパトロールに出ていた。

 こういう『記念日』はイベントが行われる。その表裏で犯罪が起こる可能性は低くないのだ。

「今夜がお通夜ですか。総子が、何でウチらを最終決戦に呼んでくれへんかったんや、水くさい、って怒ってました。」

「それは大前さん。端的に言うと、アイラブ系テロリスト組織が暗躍し始めたから、組織力、機動力を知られたく無かったからです。コンティニューが詳細に調べ上げていたことは、想像出来ましたが、奴らが、どんな情報を持っているか、どんな行動を取るか分からなかったからです。大阪支部の存在くらいは知っていたかも知れませんが、例えば、オスプレイが何機所有しているかなんかはトップシークレットででしょ。結果的に大仏のアパートから、PCが見つかり、アイラブ系にハッキングされていたことが分かり、映子が久女と不仲だったことから、口頭データくらいしか映子は知らなかった、詰まり、漏れていなかったことは分かりました。牧場から渡されたICレコーダーから余分なICチップが見つかり、かなり入念に調べ上げたEITOのデータだと分かりました。だからこそ、大仏のデータは、映子の日記風のデータ以外はハッキングされていないと思います。」

「じゃ、EITO大阪支部のデータは漏れていない、と。ああ、幸田所員が踏み込んだ、映子が潜んでいたアパートの部屋からは、データらしきものは見つかっていません。」

「恐らく、牧場冬吉が処分したのでしょう。」

「幸田所員が浮気調査依頼を受けた時は、牧場はホテル暮らしをしていたようです。勿論、調べましたが、何も出ませんでした。ああ、それから、伝子さん自身も早乙女さんの子供が犠牲になったことで自分を責めていないか、って総子が言ってました。」

「方々から言われていますよ。早乙女さんが辞めた発端が、総理のSPに入った時のミスでしたから。慰留はしましたが、ショックが大きかったようです。」

「その事件のお陰で、身バレしちゃったわ。事故の取材に行った記者が、総理の会見の時の事件を覚えていたのね。コレを見て。」と、入って来た芦屋三美が新聞を広げた。

 記事には、『元SPの子供が、怪人二十一面相の犠牲になった』と書いてあった。

「もう、交番勤務に戻れないわ。」と、一美は言った。

「四十九日までは、停職ってことにしているけど、子供の兄弟が・・・。」

 そこで、横から理事官が言った。「今、連絡が来た。交通事故、これは煽り運転だったが、交通事故で入院していた叔父が、2人の子供を引き取った。早乙女元隊員は、交際中の西部警部補が引き取るらしい。葬儀の後、自宅を引き上げる。早乙女君には、護衛をつけ、保護しよう。勿論、残った子供達もだ。新しい敵が、また襲ってくるかも知れないからな。大前君。こっちは心配ない。阪神淡路大震災関連の事件が起こるかも知れないんだから、頼むよ。」

「勿論です。了解しました。」

 通信を切った大前は、隠れていた総子に言った。「総子。納得したか。」「うん。幸田の見舞い済んだら、ウチもパトロールする。」

「コマンダー。」「何やヘレン。」「ウチ、手紙出していいですか?『身バレの先輩』として。」「ああ。ええ子や。」と、大前は、ヘレンの頭を撫でた。

「あんた。パワハラやで。」と紀子に注意された大前は、「えらい、スンマヘン。手紙書いたりや。」と照れ笑いをした。

 午前9時半。EITO東京本部。会議室。

「マスコミかあ。厄介だな。ヘレン隊員の時も大変だったものなあ。」と、夏目警視正は言った。

「理事官。警視正。大文字。早乙女隊員は、折を見て復活させることを提案します。」

 筒井は、神妙に言った。「勿論、本人次第だし、西部警部補の考えもあるだろうけど、交番勤務には戻れない。かと言って、警視庁の仕事にも取りにくい。他の自治体に転勤という選択肢もなくはないが。」

「いいよー。」「いいよー、って簡単に言うなよ、大文字。」

「隊長は私だ。この際、なぎさも復帰しにくい状態だから、休暇を続けさせる。日向に副隊長させることを提案します。」と、今度は伝子が提案した。

「いいよー。」と言ったのは、理事官だった。

「同じ自衛隊組で、一番階級が上なのは、日向だ。空将も喜ばれるだろう。異存のある者は・・・いない。」

「でも・・・。あ。でも。」「命令だ。隊長の、おねえさまの。」

「はい。おね・・・隊長。」

 午前11時。

 お昼前のニュースで、ひき殺された女の子が警察官の娘で、以前総理の記者会見場で、ヘマをした女性警察官が左遷され、殺された、と報じられ、まるで『自業自得』のようなニュアンスで伝えられ、何故辞職しなかったのか、と叩かれた。マスコミお得意の偏向報道だ。

 正午。シネコン記者会見場。

 総理と副総監が、それぞれリモートの記者会見を行った。

 MC役が、市橋総理に話を振った。

「まず、元巡査部長の早乙女愛さんのお子さんの死にお悔やみ申し上げます。皆さんは、大きな勘違いをされているようなので、私から記者会見を申し出ました。国のトップを預かる以上、私は常に狙われています。今は、この様な記者会見のスタイルになりましたが、当時は常に警戒態勢が必要な記者会見でした。通常、国賓館から専門のSPが派遣されますが、あの時は、要員が足りないので、警視庁から追加のSP派遣を依頼しておりました。はい。十三番の都居新聞さん。お話が終るまで待って下さい。」

「何故、要員が足りなくなったのかだけ、お教え下さい。」「相変わらずマナーがなってない記者を送るのね。コロニーで入院したからです。SPも人の子、風邪も引けば、流行病にかかる場合もあります。あなた方は普段から、もう『収束』しているのに、『まだまだ終っていない』と言っていたではないですか?SPは絶対に病気になってはいけない、かからない、とおっしゃるの?」「でも、まだ、おわ・・・」「終る方の『終息』ではなく、落ち着く方の『収束』です。ちゃんと区別して報道して下さい、当時も『共存のフェーズだ』と専門家の方々の見解が発表され、緊急度の高い『2類』から『5類』に下げられたのです。話を戻します。あ、それから、会見の妨害をした都居新聞さんの発言権は取り上げ下さい。無理に発言しても、声はどこにも届きません。憎むべきは、ダークレインボーの新しい敵です。先日、『怪人二十一面相です。』と名乗ったけれど、彼のジョークです。早乙女さんは被害者。責めないで下さい。」

 ~~~回想~~~

「しまった。」声を上げたのは、早乙女だった。取り押さえた記者は毒を飲んで自殺していた。救急車が呼ばれ、運ばれたが、もう記者は息をしていなかった。早乙女は、スピーカーに気を取られていたのだ。

 ~~~~~~~~~~~~~

 総理は、回想していて、我に返った。不可抗力だったのだ。早乙女は取り逃がした訳ではない。一瞬の隙を突いて、記者に化けた敵の部下は自殺した。総理は傷一つ負っていない。ヘマと言ってなじる方がおかしい。早乙女は、『不問に付す』ことなのに、自分から責任取って、交番勤務に行ったのだ。

 MCは、副総監にバトンを渡した。

「交番勤務は、部署の一つです。単に担当の一つです。あなた方『会社員』には、『左遷』とか『栄転』とかはあるかも知れないが、それは違う。キャリアとノンキャリ?それはあります。確かに、学歴でスタートラインが違う。でも、実力で勝ち取る者もいる。今、警視庁テロ対策室にいる、新里警視は、ノンキャリからの警視登用です。女性です。本来ならば、個人情報で慎むべき発言だとは重々承知で申し上げます。『女性の地位向上』を常日頃叫んでおられる方々には『朗報』だと思いますよ。ご存じの通り、白バイ隊とは、主に都道府県警察本部交通部交通機動隊・高速道路交通警察隊に所属して一般に白バイ乗務で活動する警察官と、皇宮警察本部に所属する皇宮護衛官のことです。早乙女巡査部長は、女性白バイ隊の隊長でした。だからこそ、SPで応援に行ったんです。一瞬の隙を突いて、記者に化けた敵の部下は自殺した。総理は傷一つ負っていない。ヘマと言ってなじる方がおかしい。不可抗力なんです。彼女は、辞職しました。被害者の家族であり、被害者なんです。また、加害者を擁護しますか?加害者を擁護する者は、公安の監視対象になります。いつでも、スパイ候補として見ますよ。国民の敵は、貴方たちが簡単に『怪人二十一面相』と信じた悪党です。本当の名前?いずれ、犯行声明を出すでしょう、奴にプライドがあるならね。名乗らないなら、『通称怪人二十一面相』でも結構ですよ。」

 記者会見は、当たり障りのない応答で終った。逆らうと『しょっぴかれる』ことが分かったからだ。記者達の多くは、サラリーマンなのだ。傍若無人でジャーナリストでなく、活動家の『感想』でかき回すのは、ごく少数なのだ。テロリスト扱いされれば、即無職、ただの求職者またはニートになる。

 午後7時。ある葬儀会館。

 僧侶の読経が続く。『ハナ』や弔電は、多くの人々から寄せられた。

 総理、副総監、警視総監のものは目立った。

 午後7時半。読経は終った。それを待っていたかのように、忍者の格好に般若の面を被った男達が乱入した。50人位の男達は拳銃を持っていた。

 家族、親族、僧侶、会館職員は、恐れて逃げた。

 入れ替わりに、エマージェンシーガールズが現れた。

 日向は言った。「自殺した記者もどきは、お前らの仲間だったのかな?それで、復讐か?お門違いも甚だしい。勝手に死んだ者の責任なんか誰が取れる?それとも、『怪人二十一面相』とやらの部下か?」

 リーダーらしき男は言った。「お前が隊長か?早乙女とEITOが関係あるかも知れない、と言っていたが、本当だったようだな。」「関係はあるさ。警察とEITOは協力関係にある。それくらい習わなかったのか?『年少さん』」

「年少さん、だと?お前は俺より年上なのか?衣装の上から分かるのか?」

 日向は、敵のリーダー、『枝』かも知れない男に向かって言った。

「年下と言ったんじゃない。『保育園児の下級生』並みだから、そう言ったまでだ。年少さん。来年は年中さん、かな?」

「舐めやがって、おい!!」

 彼らが拳銃を持ち直す前に、エマージェンシーガールズはそれぞれの武器を放った。ある者はブーメランを使った。ある者はシュータを使った。シュータとは、うろこ形の手裏剣で先端にしびれ薬が塗ってある。ある者は、水流ガンを使った。水流ガンとは、飛び出すとグミ状の液体に変化し、粘着液が敵を襲う武器である。ある者はペッパーガンを使った。ペッパーガンとは、胡椒等の調味料を原料にした丸薬を撃つ銃である。ある者は、フリーズガンで撃った。フリーズガンとは、冷凍させる為の、液体窒素を加工した弾を撃つ銃である。そして、ある者はパウダーガンを撃った。これは、実は、早乙女のアイディアを採用した、ベビーパウダーを噴射する銃である。

 敵の拳銃が殆ど使えなくなった所で、後方部隊がやって来た。メダルガトリング砲が、刺股が、ウッドフルーレが攻撃を開始した。そして、駐車場に出たエマージェンシーガールズはバトルスティックを持って闘い始めた。

 闘いは30分で終わった。日向は、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た通信機だ。

 葬儀会館の中。ロビー。

 会館職員が筆と墨汁を持って来た。

 この職員達は、実は、エマージェンシーガールズの警察組だ。

 そして、延びている男達の額にバッテンを書いた。

『片づけ隊』が来ると、日向の合図で、彼らの額は拭かれた。片付け隊とは、連行出来ないEITOに代わって、連行する警官隊である。愛宕と橋爪警部補は、彼女達が、おしぼりを持っているので、首を傾げた。

 葬儀会館。事務所。

 支配人が伝子に挨拶した。「ありがとうございます。警備員では、対処出来ることではありませんでした。」「有名になってしまいましたからね、早乙女さんは。お礼を言うのは、制服をお借りした我々の方です。」

 エマージェンシーガールズの警察組は、会館の制服から警察官の制服に着替えて出てきた。と、伝子は早乙女の一家と体面した。

「隊長。明日の告別式は・・・。」と言う早乙女に、「明日は大丈夫だろう。今日は、お互いの『小手調べ』だから。でも、配備はさせます。」と、伝子は応えた。

「隊長さん。母を現場復帰させてください。僕や姉は、太郎叔父さんの家に行きますから。西部のおじさんは、いや、お義父さんは、お母さんを守ってくれる。」と、ゆずるは言った。「了解した。」と、伝子は短く応えた。

 早乙女に西部は深くお辞儀をした。

 葬儀会館の外。

 インカムで、帰還の合図を受け取ったエマージェンシーガールズの本隊は、去って行った。

 少し離れて監視する男がいた。その男から少し離れた車に、中津健二や高崎がいた。

「なかなか、やるな。新副隊長。」と中津は言った。

「フル装備で行って、大丈夫なんですか?」と、高崎は尋ねた。

「フル装備?そう見えたんなら、上出来だな。前哨戦用に作戦を練ったらしい。兄貴が言って笑ってたよ。」と、中津健二は笑った。

 午前0時。ナチュラル・デプスの最初の挑戦状が、Tick Tack動画として、アップロードされた。

 ―完―

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