No.3 天使の夢

 天使の夢を見ることがある。僕は見覚えのある校庭の真ん中で、白い日差しを浴びている。ふと背中に、体内の鎖骨から肩甲骨に圧迫するような違和感を感じる。いつもここで、僕の頭に嫌な直感がぎる。はたと何かに気がついた束の間、鈍い神経痛のようなそれはにわかに明確な受け入れ難い痛みに変わっていく。裂くような痛み。耳鳴りがひどく立ってはいられない。肩甲骨が芽吹く植物のように突出し肉を抉り、感じたことのない激痛に絶叫する。焼けるような背中に触れようと手を伸ばす。が、触れられない。眩暈のような吐き気で、自分の肩を抱くような姿勢で蹲った。白線で囲われた200mトラックの中、身体中に汗が滲んで、生理的な涙がとめどなく流れて蜃気楼まで見えそうだった。僕はただ罰を受けるように痛みに耐えた。

 どれほどの時間が経ったのか、背中の肉を抉る感覚は止んでいた。二つの風穴のような生傷には強い熱と痛みが残っている。

まだ血と体液で湿った大きな翼は、眩しいほど鮮明な影を落としていた。

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夢図鑑 那月 @Nazuki___72

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