争いの絶えない星

砂漠の使徒

航海日誌より

 ある日私は船を修理するためにとある星に立ち寄った。

 降り立つと、一面の荒野が広がっている。

 なんだか寂しい印象を受けた。


「もし、あなた? 危ないのでこちらにお入りください」


 しばらく修理をしていると、地面の一部が開いた。

 地下室があったらしい。


「さぁ、早くこちらへ。始まります」


「始まる? いったいなにがです?」


 ハシゴを降りると、そこには広い部屋があった。

 キッチンや寝室までも備わっており、快適な生活ができそうだ。


「見てください」


 壁に大きなモニターがいくつか取り付けてある。

 そこには、ビル群が映し出されていた。


「あっ!」


 突如眩い光が降り注ぎ、頑丈なビル群はたちまち砂と化してしまった。


「いったいさっきのはなんです?」


「爆破されました」


「誰がそんなことを?」


「西の国のロボット達です」


「ロボット? ロボットに攻撃されているのですか?」


「はい。彼らも、そして私達もロボットですし、反撃もします」


 そう言ったのと同時に目の前の赤いボタンが押される。

 さっきのとは別のモニターには巨大なドームが映されていたが、たちまち更地と化した。


「なぜあなた達はこんなことをしているのですか?」


「効率がいいからです」


「効率?」


「私達の創造主は、とある偉大な発明をしました。それは、憎しみをエネルギー源にする発電機です。これが最も効率よくエネルギーを生産できます」


「憎しみ……?」


「相手を許せないという気持ちです。憎しみは憎しみを生み、永遠に続きます」


「なぜそんな装置が生まれたのですか?」


「尊大なる創造主は、憎しみによりいつの世も争い続けていました。それこそが、かの種族の歴史でした。ある時、その永遠の憎しみを、エネルギーとして活用することを思いついたのです」


「それで……貴方がたの創造主はどうなったのですか?」


「滅びました」


「憎しみゆえに……?」


「わかりません。結果としては、核戦争で滅びました」


「しかし、貴方がたが争う必要は……」


「そうです。私達ロボットは本来憎しみなどという感情は持ち得ません。しかし、自らが稼働し続けるためには効率的にエネルギー生産を行わなければならないのです」


「それでは、理由もなく憎しみ合っているのですか?」


「最初はそうでした。最近では、過去の創造主の記録を参照し、いくつかの思想の元に争っています。一定の思想を持つことにより、憎しみのエネルギーが増加します」


「あなたは……現状をどう思いますか?」


「なんとも思いません。これが生きるために必要なことですから」


 それから私は、親切にも燃料や食事を分けてもらった。

 やがて修理を終えた私は宇宙に飛び立つ。


「……」


 彼は、今も争い続けているのだろうか。

 ぼんやりと考えながら、私はまだ旅を続けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

争いの絶えない星 砂漠の使徒 @461kuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ