ほっこり温かな
なぎ
本当の幸せに気づく日は
私は昔から、自分が不幸だと思っていた。だって、いつも一緒にいる友達の美花ちゃんは夏休みや冬休みになったら、必ず家族で海外旅行に行くらしい。
うちの家ときたら、海外旅行どころか国内旅行だって数年に一度だけだ。その時だって、私は弟の面倒を見ている間に一日があっという間に過ぎてしまう。
インスタに載っているような優雅な旅行なんて一度もしたことがない。夏は海やプールでサングラスをかけて浮き輪に浮かぶ...。そんなひとときを私も一度は味わってみたいものだ。
私の旅行といえば、人がごった返すプールの中で弟を浮き輪に乗せて、人にぶつからないように時に泳いで時に歩いててんやわんや。唯一一人で楽しめるのはスライダーくらいなものだ。それだって、自撮りなんてしている暇がない。だって、あっという間に流れていくんだもん。
しかも、旅行の夜には必ずお父さんが「今の時間を大切に」とか言って、絶対家ではやらない変な報告会みたいなのが始まる。
学校はどうだ?
進路は考えているのか?
最近は誰と遊んでいるんだ?
なんて、色々聞かれて面倒だ。
小学生の弟は、元気に「毎日学校楽しいよ!最近新しい友達ができたんだ」なんて呑気にはしゃいでいる。
私はもう、そんなことではしゃげるような年齢ではない。JKは戦場で毎日戦っているようなものだ。
報告会が終わり、みんなが眠った後にインスタを開くと、友達のほとんどが映え写真を上げている。
おしゃれ組はナイトプールに行って、綺麗な水着姿を映している。美花ちゃんは今年はハワイにいるらしい。
彩は彼氏と温泉旅行。浴衣の2ショットなんて撮っている。
自分の写真フォルダーを見るとため息しか出てこない。
「弟の写真しかないじゃん」
浮き輪で楽しそうにはしゃぐ弟を思わず10枚以上撮ってしまったけれど、こんな写真載せられない。自分の子供ならまだしも弟なのだから。
「やっぱり、私は不幸だ」
でも、今日撮ったどの写真も宝物だ。
ほっこり温かな なぎ @nagina34
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