第35話 ドラゴン乱入

 アイルはメシアを不可抗力で全裸にし、色々責め立てられた。


 それに輪をかけるように、ユイが言わなくていいことを言った。

 

「──アイル君! 私との粘膜の繋がりを言っていなかったわ!」


「──!!!? どーいう事ですか!? ね、粘膜って……!?」


 即座に反応したメシア。

 ミリーザは娘に外套を掛けている。


 ミヤは顔を押さえながら「──なんで言ったんだよ……ややこしくなるだろ……」と言っている。

 剣崎はテーブルに顔を伏し頭を押さえながら項垂れている。

 

 騎士、老人は呆れている。

 その後ろにいる女性は、──氷の様に冷たい目でアイルを見ている。


「ユイ先輩! それだけだと誤解されます! リンクするためにと説明しないと!」

 

 そのアイルの反応に、ミヤさんは立ち上がり言った。

 

「──あんたはバカなのかい!? なんで単純にキスしたって言わないんだい! その言いじゃぁエッチっぽく聞こえるだろ!?」


 アイルは今さらながらに気づく。

 ソフトな言い方にしようとした結果、選択をミスした──


 いや、正確には焦ってしまって何を言っているか分からなくなっている。

 

 メシアは口をぱくぱくさせながら驚きを隠せていない。

 すると、今度は予想もしなかった場所から声が聞こえて来た──


「「──メシアおねえちゃーーーん!!」」


 これと同時に、凄まじい音を立て、二つの影が会議室の側面を破壊し入って来た。

 

「「メシアおねえちゃんも唇を奪いましょう!!」」

 

 その場の全員が驚き、壁を壊したと思われる影に目を向けていた。

 

 そこには、赤みを帯びた銀髪に、白のヒラヒラがついたスカートを履き、そのスカートの下から純白の尻尾が出ている──顔がそっくりな少女だった。

 

 付け加えれば、言葉自体も揃っている。

 それを見たメシアは驚きながらも、2人の名前を言った。

 

「リル!? ルル!? どこで聞いたたのよ!?」

 

「「──メシアおねえちゃん忘れたの? 『すぐに連絡を取れる様に』ってつないだでしょぉー……」



 そうなのである、ドラゴンとメシアとの間には、直ぐに連絡を取れる様に繋がっている。


 メシアはその事に気づいた。



「──そー言えばそーだったわよね……。でも、あなた達見張りはどうしたの!?



 メシアの言葉に「「──あ……」」と言っている。

 すると続けてもう一つの影が入って来た。

 

「リル! ルル! あんた達何してんのよー!! 会議の途中だし、見張りの途中なのよ! 勝手な事をしないでよ! メシアお姉様に怒られるわよ!」

 

 そう言い入ってきたのは、リル、ルルという少女に髪色も顔もどことなく似ている少女。


 2人よりはやや年齢が上の様に思える。

 服装は細身のシャツに、膝上の純白のスカート、その下には黒のレギンスを履いている。

 因みに尻尾は出ていない。

 

「リルア! あなたまで!?」

 

 そう言われるとリルアという少女は慌てて言った。

 

「メシアお姉様! 誤解しないでください! 私は2人を連れ戻しに来ただけです!」

 

 そう言うが、先の2人の少女は顔を見合わせると口を揃えて言った。

 

「「あーーおねぇちゃんずるーい! おねーちゃんも言ってたじゃない! 『──これは私が行って唇を奪う様に言おうかしら!』って!! だから、私たちがおねーちゃんの代わりに来たんだよ!!」」


「そうは言ったけど! 会議中に飛び込む程考えなしではないわよ! あんた達考えてなさすぎよ!」

 

 このやりとりを見ていたミリーザは口を開いた。

 

「──メシアよ…。この子達はお前のドラゴンだな?」



 その言葉に、アイルは「──ん!? ドラゴン?」と思い浮かべると、メシアに聞いた。


「メシア、もしかしてこの子達は──」

 この続きを言う前に先にメシアが言った。

 

「そうですよ! この子達は、さっき私が見張りを言ったホワイトドラゴンですよ。お姉ちゃんがリルアでこの2人の妹が双子のリルとルルと言うんです」


人化じんかもできるんだなぁ……」

 

「まぁホワイトドラゴンは、ドラゴン種族の中でも、古代エンシェントドラゴンに次ぐ種族になるんですよ。だから、人化もお着替えするくらいのものなんですよ」

 

 そう笑顔で言っている。

 だが、ミリーザは怒りながらメシアに告げた。

 

「──メシア、この壁の修繕費はお前のお小遣いから引いておくからな……」


「そんなぁ〜……」

 メシアは恨めしそうにリルとルルに視線を向けると言った。

 

「リル? ルル? 連帯責任って知ってる?」

 

「「……へ!?」」

 

 声を揃えて言う。

 姉のリルアは腰に手を当て黙って見ている。

 そしてメシアは2人の双子に残酷な事を言った。

 

「2人は当分の間お菓子抜き!!」

 

「「えーーーー! そんなぁ〜……ひどいですぅ〜メシアおねえちゃ〜ん……」」

 

 リルとルルはその残酷な言葉に、悲しそうな表情をしていた。

 そして、尻尾をばたつかせる双子の服を引っ張り、姉のリルアは「──ほら! 行くよ!」と言い引きずって行った。


 だがこの時、双子の尻尾はある布を巻き込んでいた。

 その外套は長すぎた──メシアに……。


 巻き込まれた外套は、羽織っているメシアのバランスを崩した。

 

「──え? あ、あえ?」


 気づいた時には遅すぎた。

 

 バランスを崩したメシアは、アイルに向けて一直線に倒れてしまったのだ。

 

 この予期しなかった事に、双子の言っていた『『──メシアおねえちゃんも唇を奪いましょう』』という事が現実となっていた。

 その上、全裸で覆い被さるというおまけ付き……。

 

 ユイは大声を上げ、ミヤは頭を抱えて、剣崎はもう意識が遠のいている。

 

 騎士はため息、老人は大笑い、後ろの女性は「──これは責任問題ね……」と言った。


 女帝ミリーザは、目を細め、天を仰ぎ飛躍した言葉を呟いた。

 

「──大々的に式を挙げねば……孫、楽しみだわ……」


 アイルは思った──


「──話進みませんでしたーーーー!!!!」

 

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