第36話 ようやく始まった!!
本当にこの短時間で色々起こり話が進まなかった。
メシアは顔を真っ赤にしながら急いで着替えに向かった。
程なくして戻ってくると最初とは違い薄いピンクと白のドレスだった。
メシアは俺の隣に座ると、「──ふー……っ」と息を吐くと、こちらに視線を向け言った。
「アイルさん、はだ……は今は忘れてください……その内────」
「──えっと……なるべく心がけるよ……。(『その内』って……何……?)
最後に疑問を抱きながらも、そう返し落ち着くと、改めて自己紹介の続きから始まった。
俺は終わったので、隣のユイ先輩が立ち上がると口を開いた。
「──メシアちゃんには言いましたが、改めて自己紹介をさせて頂きます」
そう言うと、陛下と目の前の3人に向けて始めた。
「私は
この紹介にまたしても騒めきが起こっていた。
メシアの時もそうだったが、やはりユイ先輩は有名らしい。
それを確認する様に、陛下が口を開いた。
「君が〈聖教会リサル〉史上最年少で聖女になった天才か……。10歳にして聖白魔法の最上級の一つ、
その陛下の言葉にユイ先輩は、少し表情を暗くして返した。
「──そう言われ光栄です……。ですが、
その返答に、陛下はユイ先輩の気持ちを和らげるように告げていた。
「──確かに始まりはエミラであったかもしれないが、それを自分の才能と努力でものにしたのはユイ──君自身の力だ。だから、堂々としていたらいいのだよ」
陛下の言葉に頭を下げてお礼を言うと、静かに座り、隣のミヤさんが立ち上がり続けた。
「ワタシはミーヤセルカと言います。ユイと同じく、聖教会リサルの聖女です……一応。あと転生者ではないので……。今となっては、戦士の様な格好ですが、ワタシ自身、接近戦が得意なので、この様にチェンジしました。ワタシも聖白魔法を使えますが、ユイ程の力はありません。ですが、聖属性を纏った接近戦ではユイには勝ると思います」
そう説明すると、向かいの騎士と女性、老人は感嘆していた。
陛下も大きく頷くいていた。
そして、ミヤさんが席につくと、入れ替わりに剣崎先輩が立ち上がり、始めた。
「僕はリスティラードではスタル・ディザルークという名前で、
と言おうとした時、剣崎先輩の言葉を遮り騎士が声を上げた。
「貴殿があの雷剣の使い手で、天才剣士と言われていた、ディサルーク殿か!」
「まぁ、天才かどうかは僕には判断出来ないが、雷剣の使い手ではあるよ……」
これを隣で聞いていたミヤさんが呟いた。
「やっぱりアンタもそのスジでは有名だったんだな……細長いの……」
「──おい。ミヤ、お前は僕にケンカを売っているのか?」
「お? やるっていうのかい!」
このままでは、また何かが起きそうなので俺は急いで口を挟んだ。
「──め、メシア! 俺達は終わったから、今度は逆にお願いするのよ!」
俺の慌てた言い方に、察したのか、メシアが直ぐに向かいの人達に自己紹介をする様に促していた。
すると、陛下側に一番近い老人が立ち上がり始めてくれた。
「やれやれ、ようやく順番が来たか……はっはっはっ!」
怒った感じはなく、これまでの流れを面白がっていた様に軽く笑みをこぼしている。
始まるまで時間がかかったにも関わらず、怒られなくてよかったと安心した。
「ワシは大臣をやっておるドルテオ・メールテルトという者だ。陛下と共にライテルーザの政治と経済などを執り行っている。お主達のやり取りは笑わせてもらったぞ! メシア皇女を惚れされるとはな! はっはっはっ!」
その言葉にメシアは慌ててメールテル大臣に「──ドルテオさん! それはもういいですから!」と言って次の自己紹介をお願いしていた。
これに促され、隣に座る騎士が立ち上がっていた。
大柄だとは思っていたが、実際に立つと想像以上に大きった。
優に2メートルは超えている。
額の大きな傷はこれまでの激しい戦いを乗り切った証なのだと思わせていた。
「俺はライテルーザの騎士団の騎士団長をやっているティグ・レイバーンだ。俺は悪意ある者達から陛下及び、皇女、そしてライテルーザの民達を守る役目を担っている。此度の出来事は当然ライテルーザ全体に脅威を与えるものと理解している。これからどの様なことが起こるか分からないが、君達にも力を貸してもらうことになるだろうな」
そう言い席につくと、メシアは2人の後ろに控える小柄な女性に自己紹介を促した。
これに、「──私の様な、いち部下がメールテル様とレイバーン様と同じように自己紹介をするなど……」と言っていたが、メシアは言った。
「何を言ってるのですか。あなたは重要な役目を果たしてくれているので当然ですよ! シャールさん?」
そういわれたシャールという小柄な女性は照れながら口を開いた。
「私はメールテルト様直轄の情報局、情報調査官のシャール・アイノルアと言います。一応その中では、リーダーをさせて頂いております」
そう紹介すると、陛下はこの度の状況に至った、原因の調査結果を続けて話す様に指示した。
これに従いシャールは、テーブルを挟み向かいに座らされている、ベルファ公爵に目を向けながら、この場の全員と情報を共有する様に調べた全てを話し始めた。
「──陛下達にはお話ししたことと重複する部分とあるとは思いますが、最初から話をさせて頂きますそれではまず──」
シャールさんはそれから知り得る全てを話してくれた。分かりやすく端的に。
シャールさんの調査によると、やはりメシアに刺客を向けたのはベルファ公爵であり、それを進言したのはエミラという事であった。
さらに唆した言葉というのが、ミリーザ陛下の本当の子供が生きているという出だしからであった。
確かにそんなことを言われれば、単なる冒険者であったメシアは邪魔になってしまう。
だが、単純にそれだけなのかが気になった。
そう思っていると、陛下が口を開いた。
「──シャールよ、ご苦労だった。残りの事実はベルファに聞くとしよう」
そう言うと、ベルファ公爵にこの様な愚行を犯した理由を話す様に命令した。
これに反応して、これまで黙っていた公爵が全てを語り始めたのだった。
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