孤独を愛する芸術家

私は個性的な人が嫌われることを知っていて、あえて個性的に振舞っていた。

そんなことはしなくても、十分個性的だよ。個性隠しきれていないから大丈夫。

と無意味なフォローをされるほど、私は周囲から見て、十分過ぎるくらい個性的らしい。

そんな私の能力と言えば絵が上手いことと、音楽が得意なことだった。

叶わなかった夢もあるけれど、私は新たな夢を追いかけるのだった。

自分の望んでいるものが何なのか、それを知る為に私はオーストリアに行きたいと望んだ。

私は皆んな出来ているのに、私にだけ出来ないなんてことは無いんだと知っていた。

そうだ、私もやれば出来るんだ。

音大はとても高くて、一千万円して、行けなかったけど、音大に入る方法は他にもある。

金額を負担できる方法、それが何なのか今はまだ分からないけど、私は独学でドイツ語の勉強を学ぶことを決意した。

モーツァルトの小説を読んでいるうちに、彼の母国のオーストリアのことを知った。

そして私はそこにある、モーツァルト像に行きたいと思ったのだった。

きっかけは単純、彼の顔が好みだったから。

そして純粋な気持ちであることは確か。

私は彼という人間が好きで、彼の音楽が大好きだ。ただそれだけでいいんだ。

モーツァルト像に行き、モーツァルトのお店で、お土産を買う。

そんなことを夢見ながら小説を読んでいた。

私は自分のやりたいと思うことを全部やろうと決意した。そして職員さんにこう言った。

「オーストリアに行きたいの!だからドイツ語のレッスンをやらせてほしい!」しかしそんな真剣な思いは冗談になり、職員さんは大笑い。「そんなの無理に決まってるじゃん。レッスンはやらせないから。」と言われた。

「なら出来たらいいのね?」と思い、私は独学でドイツ語の勉強を学ぶことを決意した。

ここの職員さん達は意地悪な人が多く、私も苦労したものだ。

証拠がなければ、レッスンを受けることも、勉強をすることも出来ない。

結局自分で何とかするしかない状況に追いやられて、私は自転車を走らせ、図書館へと向かった。

司書さんに「初心者のドイツ語の参考書はありませんか?」と聞き、ドイツ語の本が置いてあるところまで連れていってくれた。

「こちらです。」司書さんがそういうと、私は丁寧にお辞儀をして、「ありがとうございます。」と言うと、ワクワクした気持ちで、自分に合った参考書を探し始めた。

カタカナが振ってある、分かりやすい参考書を手に取り、その参考書を借りると、「英語の勉強法と大して変わりないだろう。」と考え、英語の勉強法と同じように勉強をしていた。

この時は一日五時間、書き取りをひたすらし続けていた。

ただこの勉強法は間違っていると、後ほど気づくことになるのは、一年後である。

それから四ヶ月後が経ち、私はある程度の挨拶と、数字を読んだり、月数を数えたりすることまで出来るようになっていた。

そしてもちろん証拠もちゃんと記録として残してあり、唖然とした職員さん達はとても驚き、こうしてレッスンを受けさせてもらえることになったのは、高校三年生に上がった頃だった。

私は早速覚えたドイツ語を学校に行った時、黒板に書いていた。

丁度この頃絵の才能が開花するきっかけが訪れた。

それは修学旅行で、行った後の事だった。

学校にあまり行っておらず、授業で成績がやばかった私は、先生に「あんたはこれ描きなさい。花なんて描いている場合じゃない。成績がまずいんだから。」と言われた。

「はぁい。」ショックそうにそう言うと私は渋々その絵を描き始めた。

その集中力は高く、絵を描いている間は誰も邪魔できない程集中していた。

実際には名前を呼ばれても、「待って!今集中してるの。だから後で。」と言い、絵に集中し続ける感じだった。

丁度インターシップも重なっていた頃だったので、かなり大変だった。

八時間×二週間働いて、帰ったら直ぐに絵を描く、一日五時間以上は描いていた。

そうでもしないと間に合わないからである。

紙はしわくちゃになっていたがそれでも綺麗に保とうと、先生がダンボールで作った絵を入れるケースを貸してくれた。

それから私は絵を家に持ち帰ったりして、描き進めていた。

それから二ヶ月後経ったあとだった。

五時間×二ヶ月だから三百時間掛かったことになる。

ついに絵が完成して、一安心した。

その完成度の高さから先生は、コンクールに出品してみる?と言われ、私はもちろん喜んで承諾をした。

そして見事佳作に当選したのだった。

私はとても驚いたけど、先生はもっと驚いていた。

何故なら私は美術部じゃなかったからである。

そして私はその絵を描いたのは初めてだった。

だから選ばれたことにとても驚いていた。

皆んなおお喜びしていた。

そして私はドイツ語のレッスンを始め、先生と直ぐに意気投合し、仲良くなった。

「こういう施設の子にレッスンを教えるのが僕の夢だったんだ。でも誰もやってはいなかったから嬉しいよ。」と嬉しそうに話していて、私も思わずほっこりした。

先生もモーツァルトのことはよく知っていて、帰る前も長々とドイツ語の話や、彼の話をして盛り上がっていた。

ドイツ語で挨拶を交わすと、私は先生と勉強を開始した。

私はとあるネコ型ロボットが言っていた。

「未来は変えることだって出来るんだ。でもそれは君が努力をしなくちゃならないんだよ。」という言葉を思い出した。

そう、未来は変えることだって出来る。

今ならよく分かる。

恋愛をすることでしか価値を見出せなかった私の人生が、音楽や、絵画との出会いにより、キラキラと輝き出したのだ。

そのキラキラすることは自ら作り出すことが出来るのだ。






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夕暮れに染まる涙 ひつじの部屋 @himecan1122

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