歯車は回り始める
自分の意思で生きたい。それが私の願いだったと気づいた。
私は制服をただ破いただけではなかった。
計画はちゃんとしていた。
一、学校に行けなくなる。
二、無理だと言われた英語の勉強を進める
三、記録はちゃんと取っておく
四、英語検定を受ける
五、こちらの意見を聞いて貰えるまでは絶対にイエスとは答えない
といったふうに考えがあったのである。
そして私はそれから自動的に学校に行けなくなり、児童相談所に移ることになった。
最初は漫画を読んだりしていた。
しかし暇な時間が長く、その間ずっと勉強をしていたのだった。
丁度中学生の英語の教科書が置かれていたので、それの書き取りをひたすらしていたのだった。一日十時間はしていた。
一ヶ月たった頃、制服が届くまでの期間、職員さんが訪問に来た時、施設に戻ってほしいと言われたが、私はこちらの言い分を聞いて貰えるまでは帰らないと言った。
それから私は自分の病気について話を聞いた時、私の病気が治らない病気であることをこの時知ったのだった。
しかし大人になるにつれ良くなっていくと言われ、安心した。
ひたすら勉強をしたり、漫画を読んだり、ミサンガを作ったり、小説を書いたり、絵を描いたりして暇を潰していた。
二ヶ月経った時、また再び訪問があり、子供達も心配しているから、戻ってきてくれないかと言われた。私は頷かなかった。
そして中学一年生の英語を独学で終わらせ、次は中学二年生の英語を開始した。
朝六時半に起きて、朝ごはんを食べて、勉強をして、小説を書いて、漫画を読むを繰り返し続けていた。
ここに来てから生活習慣が良くなり、眠れなかった夜も眠れるようになった。
多分、体罰や虐待がないからだと思う。
それでも当時のトラウマが鮮明に夢に出てくることもあって、ハッとして飛び起きることも結構あった。
その時は夜中に急に大きな声を出して泣き出したり、発作が収まらなかったりした。
私は皆んなのストレス発散の道具だった。
良く考えればその考えは間違いだった。
普通に言い返せばいいし、怒ってもいいし、喧嘩したって良かったのだ。
考えてみれば単純な話だった。
でも私は他人に関心がなく、そんな労力は無駄だと思っていた。
怒る方が疲れるから我慢をする方がまだマシだった。
三ヶ月後、訪問があり、ようやく向こうが折れて、私の意見を聞く気になった。
私はこう伝えた。
「自分のことは自分で決めたい。自分の意思で生きたい。」そしてそれを承諾してくれたので、制服も出来上がり、私は児童養護施設へと戻ることになった。
私を心配していた子は嬉しそうに私を出迎えてくれた。
三ヶ月後分の、洋服代と、お小遣いを一気に使って、ショッピングを楽しんだ。
洋服をたくさん買って、お菓子もたくさん買った。
久しぶりに飲むモンスターはいつもより美味しく感じて、久しぶりに見るドラ〇もんは面白さが増して楽しく鑑賞した。
私はあれ以降すっかりメガネを掛けた男の子のファンとなり、M〇テに出ていたその少年を褒め讃えていた。
それも何かのアイドルでも見ているかのように「きゃー!」と喜ぶので、「なになに?なんのアイドル?」と様子を見に来た女の子は急にスンとした顔になり、「なんだの〇太か。」と呆れ果て、その場を去った。
この少年のカッコ良さは誰にも理解されないものらしい。
皆んな彼のことを嫌っていた。
「ノロマ」「甘えてる」「アホ」といった感じで、彼を侮辱する人は結構多くいる。
しかし私は重要なのは、頭がいいとか、カッコイイとか、そんなことではなくて、人を思いやることが出来るのかが肝心だと思う。
そしてそれは強くなければ出来ないということを誰も知らない。
彼は人として出来上がっている。
だから私は彼を嫌いではなく、寧ろ彼が大好きだ。
私も同じ立場にいるから彼に共感できる部分が多くあるのもそのうちの一つだが。
私のように彼のファンだと言う人はSNSに結構いる。
その人達の集いのような雑談に参加したこともある。
そして地獄の日々も晴れたかと思うと、体罰と否定されることは終わらなかったのだった。
自分の意思で決められるようになったのはいいものの、結局英語検定は失敗に終わり、それをまた責められるのだった。
「ほらね、あんたには出来ないって言ったでしょ?」と自慢げに言われた時は本当に殺してやりたくなるほど怒りを感じたのを覚えている。
それでも私は諦めずに再チャレンジするのだった。
「できるまでやる。」そう誓ったからにはそれを叶えるしかないのだ。
私は音大を目指していたものの、特別支援学校というのもあり、諦めつつあった。
しかし他の道もあるはずと諦めずに方法を探し続けていた。
その方法がモーツァルトを通して、ようやく見つかったような感じがした。
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