きょう、エミリちゃんが死んだ。でも、わたしは何も知らない。

5

おわりに

今回、私は事件の被害者である松永英美莉と関わりのあった四名に話を聞いた。

取材を重ねていく中で明らかになったのは、被害者の極悪非道な〝悪〟の側面だった。

中学時代、クラスメイトに窃盗や売春を強要していた被害者は、高校生になるとさらに凶悪化していく。

特殊詐欺グループのボスとなり、金銭的に困窮している若い女性たちを集め、「かけ子」や「受け子」などの仕事をさせていた。

巧妙かつ卑劣な手口は、Aさんが話してくれた通りである。

いかにして被害者の卑劣な性格は形成されたのだろうか？

被害者の家庭は、経済的には裕福だったという。

小学校生い立ちまで深掘り出来なかったことが悔やまれる。

今回の取材の中で、印象に残っている言葉がある。

因果応報――。

殺されて良い命など存在しない。

殺人を是認することは決して許されない。

しかし、被害者の極悪非道な〝悪〟の側面を知ってしまったいま、心にモヤモヤした気持ちが残る。

最後に、今回取材させていただいた四名に、心からお礼を申し上げたい。

追記

東京湾女子高校生死体遺棄事件の続報が流れた。

東京都江東区の東京湾で松永英美莉さん(17)の切断遺体が見つかった事件で、警視庁は記者会見を開いた。

警視庁は、暴力団組員の男(36)を死体遺棄の疑いで逮捕したと発表した。

「やはり犯人は暴力団でしたね」

私はAさんにLINEを送ろうとした。

しかし、Aさんとのトーク画面は「メンバーがいません」になっていた。

Aさんは友だちリストからも消えていた。

Aさんに何があったのか、私は知らない。

自首したのだろうか？

もしくは……。

正直、怖い想像も頭をよぎった。

あたしの最期も相当ひどいものでしょうけどね（笑）――。

Aさんの悲しそうな声が、耳の底にこびりついていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(完)

Copyright (C) 2024-御伽あまね