第11話

 次の日。

 フランスは、前足で立つことも出来なくなりました。

 食事はとらず、水しか飲みません。それも、ほんの僅かでした。

 パンパンになったお腹の皮膚には、青紫色の血管が浮き出ていて、あれだけ大量にしていた腹水の入ったおしっこも、下痢の状態ででてきたうんこも、ほとんど出ませんでした。

 

 ――いよいよなんだ。理性が言いました。

 ――明日寝て起きたら、全部嘘みたいに治ってないかな? 感情がそう囁きました。



 その日もこたつを布団にして、フランスと一緒に眠りました。

 寝ている間に、心臓は止まってないだろうか。暗闇の中、何度もフランスのお腹に手を当てて、息をしているのを確かめました。



 ……命を背負うというのは、なんと苦しいことでしょう。

 今ここでフランスが死んだら、私は「もっとしてあげたらよかった」なんて、後悔しないでしょうか。フランスの使っていたタオルケットやクッションを見て、いないことに胸を締め付けられるのでしょうか。

 これから、フランスのいない生活に、私は耐えられるのでしょうか。




 朝、目を覚ますと、やはり息をしているフランスがいました。

 今日も、生きててよかった。

 そう思いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る