第10話

 犬の変化は、そばにいる人間が一番気づきません。

 もし予兆があっても、「気の所為であって欲しい」という気持ちで、誤魔化してしまいます。


 二〇二四年一月。

 だんだんと、フランスの食欲が落ちてきました。今年は比較的暖冬でしたが、どんどん気温が落ちてきて、それで食欲が落ちているんだろうと思っていました。

 ある日のことです。フランスが、中途半端にゴハンを残しました。そこにチワワが割り込んで、食べようとします。


「ちょっと、フランス! チワワが食べる前に早く食べて! ロンズ、チワワ抑えておいて!」


 母が言いますが、フランスはちっとも食べません。

 仕方ないのでチワワを離し、チワワはそのゴハンを躊躇いなく食べました。それを見て、フランスは目を細めていました。




 ある日。

 フランスがハウスに戻らないと言って、こたつから離れなくなりました。

 その日は九州にも寒波が来ていて、ハウスにしていた廊下は暖房はつけられるものの、中々温まらない部屋でした。

 私は、フランスが寒い方が良くないと思って、一緒にリビングで寝ることを決めました。


 横たわるフランスの胸は、走ったように大きく動いていました。

 お腹は心臓による腹水で溜まって、まるで妊婦のようでした。五月に子宮蓄膿症が発覚して、手術をした後に腹水が溜まったので、先生からは「もし子宮蓄膿症の前に腹水が溜まったら、手術は出来なかった。タイミングがよかった」と言われました。




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