オチャメな魔族と目下のスライム

フィステリアタナカ

オチャメな魔族と目下のスライム

「そうだスライム。わらわはかき氷が食べたいのじゃ!」


 ボクは水系の魔法が得意なスライム。今、上位魔族五天王ごてんのうの1人、タンヤオさんから氷を作れと命令された。


「タンヤオさん。ボクの魔法で氷は作れますがシロップがありません」

「ん? ギャロップは無いのか?」

(タンヤオさん。ギャロップではありません。シロップです)


「はい」

「そうなのか。何か甘い物はないかのう」


 タンヤオさんはキョロキョロと部屋を見て、見つけた棚の中をあさっている。


「おっ、団子がある。4つあるぞよ」


 タンヤオさんは棚から何かを取り出しているようだ。


「スライム。1つあげるのじゃ! わらわは優しいのじゃ!」


 ボクはタンヤオさんから丸い物を1つ貰った。


(タンヤオさん。これホウ酸団子です、ボクに食べろと)


 ボクが固まっているとタンヤオさんはいっぺんに3つホウ酸団子を食べた。


(大丈夫なのかな。上位魔族だから大丈夫か……)


「変わった味の団子じゃのう」

(そうですよ。ホウ酸団子ですから)


「ん? スライム食べないのか?」

「はい」

「それならわらわが貰うぞよ」


 タンヤオさんはボクからホウ酸団子を奪い、それを食べる。


「な、な、なんじゃ。ポンポンが痛いのじゃ……」

(上位魔族でもホウ酸団子はダメなのか)


「ス、スライム、まさか毒を盛ったのか?」

(あの短時間に毒を盛るって何かのマジックですか)


 ボクはタンヤオさんにアクアヒールをかけていく。


「ふぅ。ありがとなのじゃ。やはり一家に一台魔法使いは必要なのじゃ」

「タンヤオさん。ボクはみんなから掃除屋って言われています」

「ん? そうなのか? 水系の魔法が得意そうじゃから、なんとなく魔術師だと思っていたのじゃがのう」

「ボクが汚れを吸収して掃除しているところを見ていますよね?」

「おう。そうじゃそうじゃ。子供達のち〇ち〇体操が活発じゃから、スライムも大変じゃのう」

(ボクが掃除するのは新陳代謝などで出た垢です。ち〇ち〇体操ではありません)


「あっ、思い出したのじゃ。主が熱を出したのじゃ」

「えっ、大変じゃないですか!」

「たぶん主は大丈夫なのじゃ。熱が42.195キロじゃからの」

(熱の単位がおかしいです。マラソンですか? それに体温が42度以上だと死にますよ)


「タンヤオさん。氷嚢ひょうのうをすぐに作ります」


 ボクは近くにあった袋に魔法で作った水と氷をいれ、タンヤオさんに渡した。


「スライム。ありがとなのじゃ」


 タンヤオさんが氷嚢を持って扉に近づくと、


「ゴ、ゴキブリじゃぁぁ!」


(まあ、いますよね。ホウ酸団子があるくらいですから)


『インフェルノ!!』


(タンヤオさん。火力強すぎて、部屋が燃えて炭化しています)


 ボクはタンヤオさんがやらかしたので後始末、消火活動をしていく。


「ふぉふぉふぉ。スライム、ありがとうなのじゃ。主には内緒なのじゃ!」

「このことは言っておきます」

「スライム! 主に言うのはダメじゃ! おやつが貰えなくなるのじゃ!」


 ボクはタンヤオさんにアイスアローをぶっ放し、タンヤオさんの主にラリアットをかましてもらうようお願いすることを決めた。


(きつく叱ってもらおう――あっ、新しい氷嚢作らなきゃ)

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