風紀監査ゲーム

天海エイヒレ

風紀監査ゲーム

 ある男は言った。風紀監査とはいわばゲームだ。決められた規則に従う単純なゲーム。



「もういいですよね、委員長。何も出てこないでしょう」


 目の前の下級生は、どこか焦ったように言った。額には汗が浮かんでいる。風紀委員長としての勘が、何かを隠していると告げていた。


 監査で決められている規則は、大きく分けるとふたつ。ひとつ、服装に乱れがないこと。ひとつ、学校に不要な物を持ち込んでいないこと。

 服装について、下級生に問題はなかった。詰襟は一番上まで閉められ、校章やボタンに不備もない。持ち物も、鞄の中は勉強道具だけだった。


「君の言うとおりだ。確かにバッグからは何も出てこないようだ」


 ほっ、と下級生が息を漏らすのが分かる。警戒を緩めたその一瞬で、僕は下級生の腹部に触れた。とても人間の腹筋とは思えない、硬い感触があった。


「ほう、ずいぶん鍛えているようじゃないか。まるで機械に触れているようだ」

「あ、えーっと、俺、バスケ部なんすよ。普段から、鍛えてるんで」

「そいつは良いな。ならば少し確かめさせてもらおうか」


 握り拳をギュッと握り、僕は下級生の腹部を殴ろうとする。すると、彼は慌てて叫んだ。


「わああああ! ごめんなさい! 壊れるからそれだけはやめて」


 観念した下級生は、服の内側に隠していたものを取り出した。出てきたのは、最新のゲーム機だ。当然、学校に持ち込んで良い物ではない。


「規則違反だ。後日改めて、先生から連絡がいくだろう。それまでこいつは、僕の方で預からせてもらおう」


 違反者名簿に名前を記載し、ゲーム機を没収箱へと入れる。箱にはすでに、漫画やお菓子などが大量に詰められていた。全て持ち物違反した生徒から回収したものだ。普段から規則遵守を呼びかけているというのに、大量の違反者が出てしまうのは大変嘆かわしい。


 トボトボと校舎へ向かう下級生を横目に、僕は次に待機していた生徒を見る。遅刻ギリギリに登校してきた、最後の生徒だ。


「景気良さそうっすね、先輩」


 因縁の相手が、目の前に立っていた。



 風紀委員会の仕事は、実に地味な活動だ。花の水やりや電気の消し忘れの見回り、消化器に破損がないかの確認など、雑用といっていい仕事ばかりである。毎日活動しているというのに、ある仕事を除いて、風紀委員の活動内容を知る生徒はほとんどいない。

 けれど僕は、風紀委員会の仕事が好きだった。陰から学校を支え、秩序を守る仕事に誇りを持っている。高校一年生の頃から熱心に取り組んでいた甲斐あって、三年生になって委員長という立場に就任した。慕ってくれる後輩たちは皆まじめないい子たちばかりだ。


 今日は朝から、一年生の光太こうたと花の水やりが予定されている。水の温度を上がりやすい昼間の水やりは、かえって植物に害を与える場合がある。植物の正しい成長を促すために、朝早く登校して水やりをする必要があった。

 待ち合わせの正門前に到着したものの、光太の姿はない。腕時計を確認すると、時刻は待ち合わせの5分前を指していた。必ず5分前行動を心掛けている光太が遅刻をするとは考えにくい。あたりを見回すと、遠くの方から声が聞こえた。


「委員長! こっちでーす!」


 100メートルほど先にある校舎から、光太がこちらを呼んでいた。折りたたみ式の長机を両手で抱え、運び出そうとしている。一人で運ぶには困難な大きさのテーブルを抱え、苦戦しているようだ。僕は光太の元へ駆けつけ、テーブルの端を支えた。


「机を準備するということは、そういうことか?」

「はい。やるみたいですよ、風紀監査。今朝、先生に言われました。風紀監査をやるから、水やりなら後から登校してきた委員に頼めって」


 風紀委員会の活動の中で唯一、全生徒が認知している活動が風紀監査である。風紀監査とは、不定期で行われる服装検査ならびに持ち物検査だ。風紀委員を含めた全校生徒を対象に、登校時に抜き打ちで行われる。風紀委員ですら監査の日程は知らされていないので、こうして当日の朝に準備することになる。


 テーブルと椅子、違反者が出たときに名前を書くためのノートと違反物の没収箱を並べて、正門側の準備は完成した。


「よし、次は裏門だな」

「あ、裏門の設営なら終わってますよ。委員長が来る前に済ませました」

「そうか、手際がいいな」


 褒めてやると、光太は照れくさそうにはにかんだ。風紀監査は二名の風紀委員が正門と裏門に分かれて行われるが、既に裏門側の準備は終えていたようだ。風紀委員の後輩たちは優秀な生徒ばかりで、誇らしい。


「では、風紀監査を始める。まずは委員の相互確認だ」


 風紀監査では、我々風紀委員もチェックの対象にあたる。知り合いだからといって手を抜くことはない。

 とはいえ、我が校の規則はそれほど厳しいものではない。服装が乱れていないか、学校に不要な物を持ち込んでいないか程度のものだ。


 光太の服装は模範的なものだった。詰襟は一番上まで閉められ、ボタンと首元の校章はピカピカに輝いている。スラックスにはシワひとつなく、左手には腕時計をしていた。前髪は目までかかるほどやぼったい長さだが、うちの高校に頭髪規定はない。


「服装に問題はないな。バッグの方も確認させてもらうぞ」


 許可を取り、光太のスクールバッグの中身を見せてもらう。教科書にペンケースに水筒と続く中で、ひとつ不審なものを見つけた。


「これはなんだ?」


 バッグから出てきたのはトランプだった。外箱だけトランプ風のペンケースかと思ったが、中身はしっかりとカードが詰められている。風紀委員たるものが、遊び道具をもってくるなど言語道断だ。


「すみません、それ遊ぶためのものじゃないんです。僕、手品部に所属しているのでカードマジックをするのにどうしても必要で」


 申し訳なさそうに眉尻を下げ、光太は言った。学校に必要なものとは、授業だけでなく部活動も含まれる。手品部の活動の道具であれば、違反には当たらない。


「そうか、疑ってすまなかった。だが玩具として使用するなよ」

「はい、もちろんです」


 その他、光太の持ち物に問題はなかった。役割を交代し、僕の服装と荷物を光太に確認してもらう。当然、違反になることはなかった。


「それじゃ、僕は裏門で監査しますね」


 裏門へ向かうため、光太はスクールバッグを肩にかけた。真剣な顔つきで、光太は言葉を続ける。


「気をつけてください。兄は絶対に仕掛けてきますよ」



「景気良さそうっすね、先輩」


 二年生の陽太ようたが、ニタリと小馬鹿にした笑みを浮かべる。彼は光太の一つ上の兄だ。顔立ちや背格好は弟とそっくりだというのに、見た目も纏う空気も異なっていた。見るからに温厚な弟と比べ、兄はかきあげた前髪に鋭い双眸と垢抜けた見た目をしている。


「一体、今日はどんな罠を仕込んできたんだ」

「罠だなんて人聞きが悪い。俺は規則を守ってる模範生徒っすよ」

「模範生はあんな紛らわしい真似はしない」

「あれには驚きました。たけのこを没収する、過激なきのこ派かと」


 陽太との因縁は、僕の失敗から始まっている。

 半年前の4月の風紀監査の際、僕は陽太のバッグから箱に入ったチョコ菓子を見つけ、違反者として名簿に記載した。ところがそのチョコ菓子をよく調べると、箱の中にお菓子は入っておらず、筆記用具が詰められていた。チョコ菓子の外箱をペンケースとして使用したのである。お菓子でないのなら、違反には当たらない。僕の風紀委員人生で初めてで唯一の冤罪だった。

 それ以来、陽太は風紀監査に引っかからないギリギリのものを持ち込み、僕をからかっている。幸いにも最初以外でミスしたことはなかったが、常に勝負はギリギリだった。


「与太話はここまでだ。それでは風紀監査を始める」

「お手柔らかにお願いしまーす」


 おどけたように敬礼をする陽太とは目を合わせず、彼の服装を検める。ボタンは全て開けているものの、着ている服装は学校指定の詰襟にスラックスだ。腕には弟と同じように腕時計をしていた。詰襟の首元には校章が付いている。似たデザインの別物を疑い、顔を近づけたが、間違いなく我が校の校章だった。


「なんか急いでますか。まだホームルームまで時間があるんだしゆっくりやりましょうよ」

「服装に問題はないな。次、バッグを見せてみろ」

「もー、無視っすか。先輩つれないなー」


 ホームルーム開始まではもうあまり時間はない。陽太の言葉に惑わされている暇はなかった。


 差し出された陽太のバッグを開くと、中身は比較的少なかった。小銭入れと文庫本と整髪料、それからパンパンに膨らんだポーチが入っている。整髪料については、学校で使用が認められいるので違反には当たらない。


「お前、教科書や筆記用具はどうした」

「全部学校のロッカーっすよ。別に認められていることでしょう。持って帰るのめんどくさいっす」


 諦めるように短く息を吐き、僕は文庫本を手に取った。何度も読み返したよう痕のある本には、近所の書店でもらえるハロウィンのカバーが付いている。表紙を捲ると、タイトルが見えた。


「こころ、か」

「あれ? 先輩って漫画の台詞を口に出したくなるタイプっすか?」

「何の話だ。この本は夏目漱石の『こころ』だな。没収対象には当たらない」


 本を閉じると、パタンと大きな音が鳴った。


「漫画はダメで小説ならオッケーってのも、よく分からないっすけどね」

「異議は生徒会にでも伝えてくれ。僕は規範に沿って監査しているだけだ。それに、小説だからといって全て許可できるわけじゃない」

「へえ、なら先輩は何をもって『こころ』が問題ないと判断したんすか」


 試すような目つきで、陽太は僕をギロリと見る。舐められたものだなと肩をすくめて、僕は再び本を開いた。今度は表紙ではなく、裏表紙の方を。


「奥付けにうちの学校のスタンプが押してある。書店のカバーで誤魔化しているが、これは図書室で借りたものだな。学校の備品であれば、違反になるわけがない」

「おー、奥付けまで見てないのによく分かりましたね。正解です」


 小さく拍手して賞賛を贈っているが、陽太からは余裕を感じた。まだ小手調べといった様子だ。そもそも教科書に乗るレベルの文学作品であれば、図書室の本だろうと書店で買った本だろうと違反には当たらない。だがもし僕が解答を誤れば、陽太は非難してきたことだろう。こいつはそういうやつだ。


 陽太の持ってきた文庫本は、本自体がボロボロのくせに、カバーの方はハロウィン仕様と季節感に合ったものだった。使い込まれた本を新品のカバーを被せたことがわかる。中古の本を使った可能性もあるが、陽太があんな質問をしてきたということは、明確に違反でない理由のある図書室の本であると判断した。


 問題なしと下した文庫本を陽太のバッグへ戻す。小銭入れと整髪料についても、中身を確認したが不審な点はなかった。残るはポーチだけだ。

 正直なところ、パッと見たときに一番怪しいと感じたのがこのポーチだった。陽太としても本命はこちらだろう。手のひら三つ分くらいの大きさの平たいポーチは、中のもので膨れ上がっている。おそるおそるファスナーを開けると、そこには大量の鉛筆が入っていた。


「お前、美術部だったか?」

「帰宅部っす。いろんなとこに助っ人してるんで運動部とはよく間違えられますけど、美術部と勘違いされたのは初めてっすね」


 ポーチに入っている鉛筆をテーブルの上に広げる。黒い外装の六角柱の鉛筆は、その全てが削られていない新品同然のものだった。その数は30、40いやそれ以上あるかもしれない。

 並べた鉛筆のうち一本を取り、じっくりと眺める。六面のうち一面に『2B』という硬度と『ヤマダ鉛筆』という社名が彫られていた。どこからどう見ても普通の鉛筆だ。

 偶然ではあるが、先ほど陽太は筆記用具は持ってきていないと言った。既に鉛筆が筆記用具であることは否定されているのだ。真の目的次第では、違反に当たる可能性がある。

 眺めていた鉛筆を置き、別の一本を手に取る。今度は『4H』という硬度に『タナカ鉛筆』という社名が彫られている。外見は似たデザインの鉛筆だが、違う会社のものだった。


「なるほど、トランプか」


 小さく独りごちた僕の言葉に、陽太がピクリと体を揺らす。2本目で気付けたのはラッキーだ。光太のトランプを思い出したことが幸いした。


 改めてテーブルの鉛筆を、社名と硬度の書かれた面を上にして並べる。硬度は『H』から『9H』、『HB』『B』『2B』『3B』の13種類があった。これはトランプの数字に相当する。『H』がエース、『2H』が2、『B』が10で『HB』が11で『2B』が12といった具合だろう。スートは社名で表現している。『ヤマダ鉛筆』『タナカ鉛筆』『サトウ鉛筆』『ワタナベ鉛筆』。並んだ鉛筆の中に、社名は4種類存在していた。鉛筆の総数を数えると、合計52本があった。ジョーカーを除いたトランプの数と一致する。つまりこの鉛筆は、硬度と社名の組み合わせでトランプの数とスートを忠実に表現したものなのだ。

 帰宅部である陽太には、トランプを持ち込む権利はない。学校に玩具を持ち込むことは、立派な規則違反だ。違反者名簿を手に取り、僕はボールペンの頂点をノックする。


 その瞬間、陽太が口角を上げた。風紀委員長としての勘が告げる。これは罠だ。

 あまりに簡単すぎる。鉛筆を一本見ただけでは分からなかったが、全ての鉛筆を見てしまえば13種類の硬度と4種類の社名があることはすぐに分かる。そうなれば、トランプを連想するのは容易いだろう。

 規則違反を犯すのであれば、もっと分かりにくい方法を取るはずだ。陽太の意図が掴めない。

 この鉛筆トランプが規則違反にならない可能性はあるだろうか。思案を巡らせ、可能性を模索する。


 そして、一つの結論に辿り着いた。


「規則違反はない。通っていいぞ、


 目の前の男が目を見開く。おどけた口調を続けて、男は言った。


「ちょっと、先輩。俺の名前は陽太っすよ。名前を間違えるなんてひどいじゃないですかー」

「いや。少なくともお前は、僕と一緒に正門で風紀監査の準備をしていた男と同一人物だ」

「何を根拠にそんなことを」

「腕時計だよ」


 ハッとした様子で、男は自分のつけている腕時計を眺めた。


「おかしいと思ったんだ。一人で机を運ぶのが困難だったというのに、僕が登校した時点で裏門側の設営は終わっていた。光太は5分前行動を心掛ける男だ。だが5分程度では、裏門に机を運び出すことは難しい。実際にはもっと早くから設営を始めていたのだろう。

 では、目の前で風紀監査を受けているお前はどうだ? 服装検査が終わった際、お前はホームルームまでまだ時間はあると言っていたな。だが実際には、お前は遅刻ギリギリに登校している。ホームルームまでそう時間はない」


 設営した男も、目の前の男も、時間に対する認識がズレている。


「つまり、両者とも腕時計の時刻が早く進んでいるんだ」


 外見の似た両者が、両方とも時計が進んでいるなんて、偶然とは考えににくい。同一人物という方が説明がつくだろう。


「ではこの同一人物である両者は光太なのか陽太なのか。これは言うまでもない。先生が風紀監査をやると声をかけたのだから、その対象は風紀委員である光太だ。風紀監査は抜き打ちで行われるから、事前に陽太が光太のフリをすることはできない」


 一連の流れとしては、こんなところだろう。

 光太はまず登校すると、先生に風紀監査をやると告げられ、裏門の設営を完了させる。正門の準備をしているころに僕が登校し、一緒に設営を完成させる。そして風紀監査がはじまると、裏門へ登校した陽太は光太とスクールバッグを入れ替え、外見を整える。見た目や背格好は似ているので、整髪料で髪を整えれば、二人が入れ替わることは容易い。あとは陽太のフリをした光太が、陽太の持ってきたスクールバッグで僕の風紀監査を受けるという手順だ。


「手品部の光太であれば、トランプは規律違反にはならない。まさか僕を慕ってくれていた光太が、こんな罠を仕掛けてくるとはショックだがな。さあ光太、どうしてこんなことをしたのか正直に話してくれ。もしかして、陽太に脅されているのか?」


 僕の問いかけに、男はニタリと笑った。光太だと指摘したというのに、彼の身に纏う空気はまだ陽太のものだった。それどころか、なおも余裕の表情を浮かべている。


「本当にそれが結論でいいんすか。なんならもう一回チャンスをあげてもいいですよ」


 チャンスをあげるとはどういうことだ。もし僕の言い分が間違っているのなら、そのまま結果を受け入れれば良い。僕は規律違反はないと宣言した。万が一規律違反があるのなら、見抜けなかった僕の負けだ。わざわざ、二度目のチャンスを与える必要はない。これではまるで、僕が何を答えても僕の負けが決まっているかのようだ。


 まさか。


 脳内に新たな可能性が生まれた。それが真実ならば、僕はとんでもない失態を犯している。

 僕は職務を放棄し、一目散に走り出した。目指す先は裏門だ。そんなはずはないと願いながら、走る。走る。走る。


 辿り着いた裏門には、何もなかった。

 光太はいない。陽太もいない。それどころか、設営したと言っていたはずなのに、テーブルも没収箱も用意されていなかった。


 今日の風紀監査は、先生が光太に開始を告げたことから始まる。これが嘘だったらどうだ。

 早く登校した陽太は、光太のフリをしてテーブルを運ぶ。それを僕が手伝ったことで、今日が風紀監査の日だと勘違いしてしまった。風紀監査なんて初めから予定されていなかったのだ。


「先輩ダメじゃないですか。大事なもの忘れてますよ」


 背後から悪魔の声が聞こえる。振り返ると、陽太が没収箱を抱えて立っていた。


「景気良いっすね、先輩。お菓子にー漫画にー、うわ、ゲーム機まである。これみーんな、風紀監査の日でもないのに先輩の独断で没収したんですよね。まるでカツアゲじゃないですか」


 没収箱を地面に置くとドスンと重たい音が鳴った。それは僕の罪の重さだった。今日の陽太に余裕があったのは当然だ。先生が指示したわけでもない日に勝手に風紀監査を始めた時点で、規則の外側を疑わなかった時点で、僕は敗北していた。


「いやー、弟が風邪で寝込んで、水やり当番変わってくれって言われたときは面倒だなと思ったんっすよ。でもせっかく早く登校するなら、もっと面白いことしようかなって思って。結構楽しかったっすよ。時計が進んでたのは俺も気がつかなかったんで、ちょっとビックリしました」


 満足したように陽太は笑った。今日一番の、満面の笑顔だった。


「また遊びましょうね、先輩」


 耳元で囁かれ、僕は膝から崩れ落ちる。

 ヒラヒラと手を振り、陽太は去っていった。

 ホームルームが始まるチャイムが鳴ったが、しばらくの間、立ち上がることはできなかった。

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