第二話 手作りクッキー

 翌日(3月14日)の昼休み、俺は2日かけて作った〝手作りクッキー〟を三人にプレゼントした。まあ、先月の〝手作りチョコ〟のお返しである。


 小分けにして綺麗にラッピングした小袋を渡すと、姫野ひめのが嬉しそうな顔で言った。

「あ、ありがとう……わ、わたしがあげたの……ぎ、義理…だった…のに……わ、悪い…わね…」

 しかし、速攻、舘野たての川俣かわまたからツッコミが入った。

「あれ、ギリだったのかにょ?」

「ギリにしては、手間暇掛けたよな~~(笑)」

「い、良いの……ぎ、きっちりしたかった…から…」

 何故か姫野は視線を泳がせてそんな言い訳をしていたのであるが。


 そして、俺は昨日付けで我が『只野班』に加入した櫟木ちちとパイにも同じものを渡した。

「わたしたちまで、申し訳ないです……バレンタインデーには閣下にチョコを差しあげておりませんのに」

 櫟木とパイが恐縮しながら受けとった。

「まあ、ウチの班に来てくれたお礼というか、お祝い、かな? ……それに、昨日は色イロと貰ったし(笑)」

 俺が苦笑しながらそう言うと、そこに何故か櫟木が反応してブラウスの第三ボタンを外した。(いや、第一ボタンと第二ボタンは彼女の場合、初めから外してあった(笑)のだが)

「それでは、本日も班長閣下のお口にプレゼント致しますぅ♡ 」

 何と彼女は、がばっ、とくつろげた胸元から右のを取りだし、俺に向かった差しだしたのだった。

「い、いや、いや、いや、いや ―――――― っ!? 」

 俺は大慌てで叫んでいた。

「……し、し、仕舞いなさい……は、早くぅうううううっ!」

(だ、だいたい……ぶ、ブラはどうしたっ!? )

 しかも、それで終わりではなかった。

「ご、ご主人さま……わ、わたしは…ほ、他の…ぷ、プレゼントでも、よろしイでしょ、か?」

「いや、気にしなくて良いからね」

 俺がそう言ったがパイは話を続けた。

「先月のバレンタインデーに、ハクとかいう男子が当時のわたしたちの班の女の子に言ってマシた『今日は目一杯エッチするから、そのつもりで』……と」

「えっ? ……まさか、ついていったの?」

「いえ、わたしは誘われませんでした」

「そ、それは……良かった……」

 俺は心底、ほっ、としたが、ふと、気になって櫟木を見た。

「あたしは誘われてついていったけどぉ」

「えっ? ……そ、そ、そうなんだ!」

 あっけらかんと告白する櫟木に俺は視線を泳がせたのだが、彼女は続けてトンデモないコトを言ったのだった。

「行くには行ったけどぉ……うぷぷっ、あまりにから呆れて帰ってきたわよぉ(笑)」

「………………そ、そう、なんだ……」

「『小さかった』って、何が……レしゅ、か?」

(いや、パイちゃん、あまり掘り下げないようにしようね?)

 しかし、俺の願いは聞き届けられなかった。

「昨日、パイが両手で隠していた班長閣下の〝アレ〟よぉ♡ 」

 それを聞いたパイが真っ赤になったが櫟木は構わず〝良い笑顔〟で続けた。

「班長閣下の〝アレ〟は、と~~~~~っても、立派だったけどぉ♡♡♡ 」

 俺はをすれば良いか判らず視線を逸らすと、舘野が苦笑しているのが見えた。気になって『一人分』視線を戻すと、案の定、姫野は耳まで真っ赤になっていたのだった。

「……も、もう、他の話題に…」

 言い掛けた俺の言葉を遮って、パイが慌てて言った。

「そ、そうレした……だから、わたしはご主人さまにィ……ぷ、プレゼント…したイと、おもタです、にょ?」

「えっ? ……なに、を?」

 俺は話の流れが読めずに訊き返してしまった。

「で、で、でしゅから……わたしの……その、まだ『未使用』なノです、ので?…に、にょ?」

 真っ赤になってパイが吐露した言葉の意味は、多分、俺の解釈で間違い……ないだろう。

「そ、そそそ、そいうこち…ぃたっ、はぅ……も、もも、もっと……だ、だいじに、しちゃほうぎゃ……」

 返事を噛み捲くりの俺だった。

「そ、そ、そうよ……そ、そゆのは、よきゅない…と…お、おも、うわあっ!」

 援護してくれた姫野も噛み捲くっていた。

 正直、誰か話題を変えてくれ~~~っと思ったのだが……パイがまた爆弾発言を落とした。

「えっ? ……姫野しゃんも、ハクとかいう男の子と、シタんです、よね?」

「ち、ちち、ち、ちぎゅうかりゃ! ……そ、そ、それは、あのバカが言いふらしている、だからっ! ……だ、だいたい、わたしは、まだショ……」

 勢い込んで否定の言葉を並べた姫野が、突然、言葉に詰まった。

 しかも、真っ赤になってその場に立ちあがった。


 あっ! ……こ、これ、たぶんヤバいパターンだっ!( ← 俺が女子トイレに行かされる、的な(笑))


 俺が対応に苦慮していた時、が手を挙げて叫んだ。

「シズち、大丈夫にょ! ……あーしも処女にょ♡ 」

(絶対嘘だっ!)

 ―― と思ったが姫野が動きを止めた。

「あたしも、処女だぞっ!」

 続けて川俣も手を挙げて言った。

「お、俺も…ど、童貞…ですっ!」

 更に俺が宣言すると、顔を姫野が漸く坐った。

「えっとぅ……わたしも、未使用ですぅ……にょ?」

 パイも続き、櫟木も派手に手を挙げて宣言した。

「あたしも真っ新まっさらなヴァージンであります、班長閣下っ!」

(いや、それは100%ひゃくぱーないねっ!)

 俺だけでなく班員四人のだった。

「な、なんだか皆さんの視線が冷たい…よう…な?」

「大丈夫ですよ、櫟木しゃん……一緒にご主人さまの〝おなさけ〟を頂戴しましょ…ね♡ …にょ♡ 」

(どこでそんな言葉お情けを覚えたの……いや、しないけどぅ!)


 その時、川俣が話題を変えるように言った。

「あっ、これ美味しいっ♡ 」

 俺がプレゼントした袋を開けてクッキーを口にしていた。

「どれ、どれ~~?」

 その袋に手を伸ばした舘野が一つ取りだして口に咥えた。

(いや、を食べろよ!)

「ホントに美味しいにょ♡ ……タダちの手作りにょ?」

「えっ? ……ご主人さまの手作り…にゃん…レス、にょ?」

 皆んなが袋を開いて食べながら誉めてくれる。

「只野くん、他にもお菓子作れるの?」

 姫野も美味しそうに頬張りながら訊いてきた。

「……う~ん……あと、自信があるのはマカロンかなあ?」

「「「凄いっ!」」」

「それなら、次回の『班活動』は只野が講師になって『お菓子作り教室』とか、良さそうだな!」

「「「賛成~~っ♡ 」」」

 姫野も、櫟木も、パイも、大きく首肯して声を揃えて言ったのだった。


 しかも、その場に居た女子たちが次々手を挙げて声を張りあげていた。

「「「「「「わたしたちも(我々班も)参加したいでぇ~~~すっ♡ 」」」」」」

「こ、これは……調理実習室を貸し切らんといかんかなあ」

 川俣が呆れ顔で言ったのだった。

 更に、その後、学食から戻ってきた女子たちも参加表明をして、結局来週の『お菓子作り教室』は、我がクラスの女子全員参加の『合同班活動』と相成ったのであった。



 こうして、『班活動』の6週目が決定したのだった。


            【おしまい】

         【続篇、あります(笑)】

「モブまじ(モブの俺に無自覚で構ってくる学年一の美少女、マジ迷惑なんだが?)」ですが、番外編を「(限定近況ノート)」に掲載しました。連載予定(笑)です。宜しければお読みください。


「閑話 妄想異世界漫遊記(1)」https://kakuyomu.jp/users/natume_x2/news/16818023213540086183

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又・モブの俺に無自覚で構ってくる学年一の美少女、マジ迷惑なんだが? なつめx2 @natume_x2

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