とある男子高校生は平穏が欲しい。

@toarukokosei

プロローグ

――ジリリリリリリリ


 小鳥のさえずりが聞こえる清々しい朝。

 俺、夢咲綾人ゆめさきあやとはスマホのアラーム音で目が覚めた。


「朝から騒がしいな……」


 我ながら意味不明な文句を言いつつもアラームを止め、起床すべくベッドから起き上がり登校の準備を始める。

 着替えや荷物の準備は昨日の夜に済ませておいたので、まずは朝食を食べに今いる二階から一階へと降りる。


「おはよう」


 朝の挨拶と共にリビングの扉を開いた。

 いつもなら母が朝食を作ってくれているのだが、今日はまだ寝ているのだろうか、リビングに母の姿がない。


「もしかして寝過ごしたのか?」


 そう思いつつもテーブルに目を向けると、ラップのかかった朝食と手紙が置かれているのを見つけた。

 手紙にはこう書かれている。


「おはよう綾人。昨日言った通り、今日お母さんは朝早くから仕事に行かなきゃだから朝ご飯を作って置いておくね。今日は入学式なんだから、遅刻しないようにしなさいね。」 


 そういえば、昨日そんなこと言っていたなと、昨日のことを思い出しながら朝食を頂くことにする。

 俺の両親は共働きをしており、父は俳優、母は書店の店員として働いている。

 父は基本的に仕事で忙しいため、家にはあまり帰宅することができず、母が家事を一人でこなしている。


「というか、本屋の仕事で朝早くって……一体どんな仕事なんだ?」


 そんな疑問が浮かぶがそんなことは母が帰宅してから聞けばいいことだ。

 朝食を食べ終えた俺は、食器を洗い、片付けをした後に自分の部屋へ着替えに戻る。

 二階へ行く前にトイレを済ませるか少し悩んだが、考えているうちに自分の部屋についてしまった。


「まぁ、家を出る前に済ませればいいか。それより今は何時だ?」


 スマホの電源をつけ、時間を確認する。


「午前八時十五分か……」


 入学式が始まるのは午前八時三十分。

 家から学校までは電車と徒歩で約三十分。


「…………これはちょっとマズいかもな」


 この時間では絶対に間に合わないことが確定してしまった。

 だが不思議だ。遅刻が確定したというのに何故こんなにも冷静でいられるのか。

 そのことは取りあえず家を出てからにしよう。

 俺は支度を済ませると、ダッシュで家を出た。

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