成人式
椿
第1話
一月七日。私の地域はその日に成人式が開かれる。
女の子は大変だ。その日は朝早く起きて振袖を着たりその振袖に合ったメイクをして髪もいつもと違う感じでアレンジしなければならない。それでも私はそんなこと苦ではなかった。中学校の同級生に会うこと本当に楽しみだったから。
自分史上一番綺麗な見た目に完成させることができ、その状態を崩さないまま成人式の会場に向かった。車で向かっている最中、緊張で周りの音が聞こえないくらい心臓の音が私の中で響いていた。
会場に着き、5年ぶりに会う友達や高校も一緒だった親友などを見つけることができた。会話をしていたが、私はその会話に集中することはできなかった。
「三浦裕也」。私はこの男の子に会うのを一番の楽しみにしていた。インスタグラムは繋がっていたが、中学校を卒業してから会ったことは一度もなかった。
中学校の時、彼に片想いをしており、告白することなく卒業してしまった。卒業してからは何度か彼氏はできていたが毎回彼のことを思うと、本当に好きかわからず長く続かないうちに別れを告げていた。5年間彼のために色んな努力をしたと言っていいかもしれないくらい自分磨きを頑張った。
「ねえ、胡桃だよね?」
友人と話していると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。聞き覚えがありすぎるくらい。
振り向くと裕也くんの顔が私の近くにあった。
「え!裕也くん!久しぶりだねほんとに」
喋れるだけでも嬉しいのに裕也くんの方から声を掛けてくれて本当に嬉しかった。
「中学振りだからな」
「ほんとそうだよね。今は学生?」
聞きたいことが山ほどあったが何から聞けばいいかわからなかった。
「学生学生。楽しいんだよねめっちゃ。こいつもいるしさ」
こいつ?裕也くんの言うこいつと言うのが誰のことかわからなかった。
「こいつって?」
そう聞くと私服を着ていた身長が高い綺麗な女性の腕を掴んでいた。
「今の彼女。一個上なんだけどさ。めっちゃ可愛くない?」
一瞬で理解することができた。自分の惨めさを。
「そっか、いいね。じゃあ私あっち行くね」
彼の言葉を聞かずにトイレに向かい走った。彼が私を呼び止める声が聞こえてきたが振り向くことはできなかった。彼女がいるなんて知らなかった。しかも私と比べ物にならないくらいの美人。
一人トイレの個室に入り化粧なんて気にしないで泣いた。
5年間、無駄な努力だったのかな。そう思いながら無音な場所で泣き続けた。
成人式 椿 @tubaki_lll
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