最終話 妄想が現実になるまで…

「私は勝と付き合いたいな。付き合わない選択肢の方が割合として低いけど」

昨日の景子の言葉が脳内に響いている。

だが景子が転校していって残された僕と愛海は切っても切れない絆を育んできた。

どちらも大切な幼馴染でどちらも裏切りたくない。

どちらを失望させることも避けたいのだ。

「昨日の言葉は忘れないでほしいけど…私はまた向こうに帰らないといけないみたい…」

目を覚ました僕のスマホに景子から連絡が届く。

「どういうことだ?」

「うん。やっぱり私の存在が向こうで必要なんだって。今、迎えが来たところなんだ。きっとこれが最後になると思う。だからその連絡。じゃあまたいつかね」

「おい…!待てよ!」

返事をしても既読は付かなかった。

しつこいかもしれないが電話を掛けてみる。

通話は繋がっているが電話に出る気配はまるでなかった。

僕は隣の愛海の家に向かうと声を掛ける。

「愛海!景子がまた異世界に帰るって…!」

隣の家の愛海の部屋へと向かうと彼女は何があったのか涙を流していた。

「なんだよ…どうしたっていうんだ?」

「うん。勝。落ち着いて聞いてね…」

愛海は涙を拭うと僕と膝を突き合わせた。

「景子はね…ずっと闘病生活をしていたんだよ」

「は…?」

「それをずっと勝には隠していたの…」

「え…?意味がわからないんだが…」

「余命宣告を受けたんだって…」

「何を言っている…」

「だからね。本当に無理ってなる前に…最後に私達に会いに来たの…お医者様に無理を言って…私達と食事に行った…」

「うそ…だよな…?」

「嘘じゃないよ…現実を受け入れないとね…」

「………」

僕は愛海からの事実の告白を耳にして精神が崩壊する思いを抱く。

「じゃあ景子は…」

「今、集中治療室に入ったって…」

「すぐに向かわないと…」

「もう無理よ。家族以外面会謝絶なんだって…」

「そんな…じゃあもう…」

「うん…亡くなってからしか会えないわよ…葬儀のときにしか…」

「そんな…」

僕は涙を流してその場で崩れ落ちる。

愛海は僕を優しく抱きしめて包みこんでくれる。

その日、僕は愛海の胸に抱かれて落ち着くまで泣き崩れるのであった。



涙も枯れて疲れて眠りについた時…。

僕は夢を見ていた。

「勝。最後まで話を聞いてくれてありがとうね。きっと私は来世で異世界に転生する。貴族令嬢に産まれて世界中の人間からチヤホヤされる存在になるんだわ。だって…この世界で私はずっと苦しんだもの。それでも勝と愛海の存在があったから…私は折れずに最期まで頑張れたの…。本当にありがとう。いつの日か…何処かでまた会いましょう。私の言葉を忘れないで欲しいけど…愛海と幸せになってね?私とは来世で。異世界で会いましょう。じゃあ先に行っています」

夢の中で景子は僕に別れを告げるのであった。


目を覚ますと景子の訃報は届く。

僕と愛海は葬儀に参列してお別れをしっかりと果たす。

本当に残された僕と愛海は自然な流れでくっつくことになった。

最後までお互いを裏切ることもなく愛し合ったはずだ。

僕らは同時に眠りにつくようにして亡くなり…。


そうして次の瞬間目を覚ます。

双子の兄妹として異世界で転生した僕と愛海。

数十年後。

僕らはずっと待っていた人物と再開を果たす。

そして僕はその相手と結婚をすることになる。

僕らは最終的に家族となった。

「待っていたよ。勝。愛海」

明らかに記憶を引き継いでいた景子はこちらの世界では元気な貴族令嬢だった。

こうして景子の妄想の様な話は来世で叶うと永遠に時を共にするのであった。


              完

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小学生の頃転校していった幼馴染が再会してすぐに「今まで異世界で貴族令嬢として生きてきた」とか言うんだが…これって妄想の話? ALC @AliceCarp

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