全を見、我を捨てる。
「ファルラー!!」
(呼んでも返事がないという事は、誰かに捕まったか...?)
「ファルラ姫...どこに行ったのでしょう...。」
心配そうな声でテイが呟く。だが、テイだけでなく
「もし、外なら探しづらいぞ...。」
「...そうですね...。」
事実、外は探す所が多すぎて難しすぎる。そんなこんなで悩んでいると
「マギ、アレしよう...」
と、言いフリートはマギルヴスを見つめる。
「...分かった」
マギルヴスが何かを起こそうと言うのは理解した。だが、何かとてつもないことをするのでは無いかと何となく察する
「ちょっと待て...。何をするんだマギルヴス。」
そう聞くと、マギルヴスはいつにも増して真剣な表情で
「俺の魔法を使って、範囲内の元素を俺の目として扱い、姫が何処に行ったのかを探る」
「...は?」
そんな化け物じみた事を聞くが、あまりにも理解出来なくて、固まってしまう
「えっと...どういう事?」
「あ...あの、もう1回言ってもらってもいいですか...?」
マギルヴスはテイのその言葉を聞き、もう一度同じ事を話す。
「俺の魔法を使い、特定の範囲内の元素を俺の目として扱う。それで姫を探すんだ」
しかしもう一度聞いたところでやはり理解ができない3人。
「...とりあえず、やってくれ。多分、そうしないとファルラがどこに行ったのか分からないのだろ...?」
突然吹いた風に目を細める。すると、それに慣れてきたのか目を開ける。
「何この魔法陣の数...」
思わず口に出てしまう
「綺麗です...」
魔法陣の重なりを見て、目を輝かせながら言ってしまうテイ。そうして、マギルヴスの魔法陣が完成する。
「これが...
あまりにも異次元すぎる魔法の緻密性と、美しさ、スケールのデカさ、そしてそれを発動させる魔力量に、まだ上がいるのだと思い知らされ、興奮を隠せない
すると突然風が止み、一同、辺りを見渡す。そして全てが止まったかのように思った瞬間。
〝共感覚元素〟
マギルヴスが頭の中でそう唱えると、とてつもない風が吹き、一瞬で空気が変わる。すると、
「そ...
「...
(視線の量としては大会よりも更に上だからな...。俺でさえ怖く感じるんだ。
苦笑いながらにそんなことを思う
テイはそんな
「なるほど...やはり何かしらが秀でていると、人の目は気になってしまうものなんですね...」
更にテイは2人の天才が故の悩みも理解したのだ。
(やっぱ、この子も天才の部類に入るだろ...。年は思いっきり10歳前後なのに、理解力が高すぎる...。)
と感心し、少し難しい説明をしたにも関わらず頑張って読み取ってくれたテイの頭を撫でる。
「えへへ...
「っ...そうか」
(なんだ今のセリフ...。うちの子可愛すぎる...あまりにも可愛すぎる...。しかし、表情ゆるゆるになるな...。今はそんな雰囲気では無い...)
辺りを見渡してる最中、そんな2人の様子をふと見て羨ましかったのか
「ねぇ、にぃ!!私にも撫でて!!」
と自身の頭を
「...ふふっ、分かったから」
そんな
「へへ...」
(2人とも本当に可愛いなぁ...)
2人を撫でながら癒されていると、マギルヴスの魔法に変化が訪れる。ポーン。何処かからそんな音がなった瞬間、魔法陣が閉じ始め、マギルヴスが地面へ降りる。その後、ゆっくりと目を開ける。
「マギ、どうだった?」
フリートがそう聞くと、マギルヴスは苦虫を噛み潰したような表情をする。そんな表情を見て、なんとなく察する一同。
「...もしかして、見つからなかったんじゃないの...?」
「それが、ファルラは城にいる...」
「...え?」
「城に...ですか...?」
マギルヴスのその発言に困惑する一同。すると
「え?で、でも...さっきは声しなかったじゃん...」
そう言った瞬間、
「まぁ、一旦何を見たのか聞こう。おそらく何かあったんだろ...」
と
「今、ファルラは城の地下牢にいる」
と告げる。
「...そうか」
「...そう」
「ち、地下牢...?なんで...」
テイはそう疑問を抱く。
「おそらく、元王族の奴隷化と言うやつだろうな」
「元王族の奴隷化...って」
テイがそう質問すると、今度はフリートが答える。
「この国の王は直系だから王になれる訳ではなくて、純粋な力で王になるんだ、魔法だろうが、剣でだろうが、拳でだろうが...だから今、貴族で1番力が強かったレヴィンが王になった」
ウシャグスでの王の仕組みをまずは教えるフリート。しかし、その後表情が曇る。
「けれど、この制度には問題しかなくてね...。力さえあれば、誰でも王になれること。そこに性格等は左右されないんだ...」
苦笑いをしながら言うフリート。
「欠陥だらけだな...」
「だが、この制度は400年前に制定された制度なのだ。その間、王が今のようなことを起こしたことがないのだ。」
マギルヴスがそう言う。が、
「この制度で400年間今みたいな事例が起きなかったの奇跡だろ...」
と若干呆れながらツッコミっぽく言う。
「それに関しては僕も思うよ...」
フリートも少し困惑しながらもそう言う。
「とりあえず、ファルラ姫助けに行かないと!!」
「そうですよ!!」
「待て待て、これで返り討ちにされたらどうする...」
と言い、2人を止める。
「私はやられないから!!だから早く行こうよ!!」
「
そんな
「
フリートがそう言うと、2人は落ち着き、暴れなくなる。
「...じゃあどうするの」
「ですけど、
テイはそんな事を言うが、フリートは
「だとしてもだよ、相手はマギの予言を知ってるから、慢心せずに、世界でも有数の強さを誇る人を傍に置いてる可能性だってある」
と、否定し、皆を止める。
「あいつは、賢い上に徹底的に対策するからな...。」
レヴィンの厄介さをかなり不機嫌ながらに愚痴るマギルヴス。
「...ハハハ!超愚痴るね、マギ」
「そりゃ、愚痴るさ。あんな厄介な人間は今まで見たことがない。」
(こんなに文句を言うということは、マギルヴスは本当にレヴィンのこと嫌いなんだろうな...)
心の中でそんなことを思う
「...でも、攻め入るとしてもどうするの?」
「...明日、俺たちは城へと攻め入ることにする。そしてその作戦を今から話す。」
「...分かりました」
「作戦ね。」
「やるか...」
そんな
「さぁさぁ!早く作戦教えてー!にぃ!!」
そんな3人に引き替えテンションの高い
「...テンション高いな。
「そりゃあもちろんでしょ!あの上から目線のウザいレヴィンというクソ野郎をボコせるんだから...!!」
無邪気に笑いながらそんなことを言う
「そ、そうか...」
(1回話しただけで相当嫌いになったんだな...)
と、
「とりあえず話してくれない?どういう作戦かを」
フリートはそう質問する。その質問に頷き、
「ファルラ奪還作戦だが───」
「───という風な作戦なんだが...」
「そ、そんな作戦で良いのですか...?」
「その作戦、通用するのかなぁ...」
「全くもって理解できない作戦だな...」
そんな皆に対し
「オッケー!その作戦で行けばいいんだね!」
と、笑顔で答える。
「...
テイは
「にぃはいつも正しいこと言うからさ。小さい頃からそうなんだ」
そう言いながら
「双子特有の絶大な信頼か...」
「そう、私とにぃは双子で、どんな時でもずっと一緒に居たから...」
少し物悲しそうな表情で
「ほら!皆、この作戦で行こ?にぃの発案なら絶対に成功出来るから!!」
先程の表情から一瞬で無邪気な笑顔に変わり、皆を納得させようとする
「...まぁ実際、
フリートは納得してない為、そんな事を言おうとした途端。
「いや、にぃの頭の良さを舐めちゃいけないよフリート。にぃの本領発揮はここからだから」
そう
(さて...。皆に話した作戦の内容は最も成功率の高い作戦だが、例外が来る時の作戦も考えなければ...。)
顎に手を当て、難しい顔をしながら考える
「始まったね、にぃの未来算が」
「未来算...?」
フリートは
「未来算と言うのは、にぃの特技...というか癖なんだけど、超集中モードに入って、その後に起きる事や、起きたことに対する対処を考えてるの。その人の感情や、かなり確率が低い事が起きた場合の事も含めてね。」
「す、凄い...。そこまで考えてるの...?」
「対処の仕方が本当に未来予知で、事前に対処してるから凄いんだよ〜。」
「だから未来算なのですか...!?」
テイは名前の理由に気づき、嬉しそうに目をキラキラさせながら聞く。しかし
「うん!まぁ名前付けたのは私の独断でだけど」
「そうなんですか...?!」
そんな事実を聞き、驚愕するテイであった。
「よし...。明日に備えるぞ
「りょーかーい!」
「え...もしかして、その未来算と言う物がもう終わったのですか...?」
「...その単語、
「ナンノコトカナー」
と棒読みでとぼける。そんな様子を見た
「そ、そうなのですか...」
(やっぱり、
テイは再度、
段々と慣れて来ている様子でもあった。
「じゃあまた明日ね。3人とも」
フリートがそう言いながら、手を振る。
「また明日な」
マギルヴスもそういい、2人は学園へと向かう。
「それじゃあ私達も早く宿に戻ろっか」
「あー...悪い。
「どこかに行くのですか?」
テイは、そう疑問する。
「あぁ、少しだけ離れる」
しかし、
「大丈夫だよ!テイ」
と言い、頭を撫でる。
「...っでも」
そういうも、
「私のにぃは私と同じで天才だよ!?どんな不利な状況だって覆せる!!だからさ、テイ。にぃを信じよ?」
満面の笑みで
「じゃあ宿に戻ろ!テイ!」
そう言い
「...はい!!」
テイは
「...さて...。おい、隠れてるのわかってるぞ」
路地裏に行って、そう何かに言うと、突然影から人が現れる。
「...気づいていたか」
全身黒の服装のそいつはニヤケながら言う。
「...お前一体何モンだ、レヴィンの差し金って感じでもねぇが...。」
「私の正体などどうでも良い。」
何かは首を振る。
(こいつの話し声、何故かは知らないが人とは思えねぇ...)
「...そうか、なら深くは聞かねぇ。じゃあ何故お前は俺たちを追ってた。それくらいは聞いてもいいだろ」
「良いだろう。ここではアイツに聞かれるからな...。移動しようか」
そう言い、ソレは
「...何者かわからないやつに触れることを許すのか」
「お前からは殺意を感じない。今この場では俺の事を殺さない。そう思っただけだ」
「ほう...」
「動揺しないか、素晴らしいな────」
「────ここはどこだ」
2人とも仁王立ちのまま、謎の暗闇の世界を落下していく。
「ここは狭間の領域。現世でも、深淵でもない...。その間の世界」
「狭間の領域...?」
そう
「俺...?」
衝撃を抑えられず、口から声に出てしまう。あまりにも自分に似ているから...。しかし、ソレは
「いや、私はお前ではない。私はお前の父親だからな...」
と、否定する。その発言を聞き、
「...は?俺の父親...?」
あまりの衝撃に理解できない
「お前...お前!!どの面下げて俺に...っ!!俺たちに逢いに来たんだよ!!なぁ!!」
「...すまない」
「俺たちが、
しかし
「...すまない」
「昔、一度だけ
「だが、そんな時でもお前は助けず、こっちの世界で影に潜んで人を眺めるばかりしてたのか!?あぁ!!?」
「黙るってことは図星かよ...お前、終わってんな...」
そんな父親の姿を見て、
「早くこの世界から出せ。お前の顔はもう二度と見たくない...」
そう言い、
「...ジン」
「早くこっから出せよ!!」
父親が、何かを話そうとするも、怒り心頭の
「...分かった」
(まさかこの世界に父親がいるとは思いもしなかった。だが、あんなのが俺たちの父親だってことは知りたくなかったな...。最悪だよ...)
そして、
「ってか、俺の父親がこの世界にいるってことは、俺と
1人、歩きながらそんなことを呟く
「...まぁ、今はそんな事考えなくていいか。今はただ、ファルラを助けるだけを考えないとな」
そう言い、
「あ、おかえり〜!!にぃ〜!!!」
扉を開けて、
「うぉお...ははっ...ただいま
「...ねぇ、にぃ?」
「...はぁ、ダメだよ
何かに気づいた
「...ほんとに、昔からずっと言ってるだろ。抱きつく以上はダメだって」
「ちぇー...ケチィ」
そんな2人の様子を、廊下で見ていたテイ。
「...あ」
「あ、テイ〜!おかえり〜」
2人はテイに気づく。テイはそんな光景を目にし、買ってきていた物をその場に落としてしまう。そして
「...
と大声で叫んでしまう。
「誤解だ!テイッ!!」
「えへっ、テイに見られちゃったぁ〜」
「何照れてんだ、
この後、テイに説得し、
「とりあえず、ファルラを救出する作戦の予備案を2人に話そうと思う。」
夕食を食べ終わった後、
「予備案ですか...?」
「あぁ、けどこの予備案は...
「もちろん!!大丈夫だよ!!」
と、満面の笑みで快諾する。
「いつもありがとな...
そう言いながら、
「だいじょーぶ!!私、にぃの事大好きだから!頼られるだけで嬉しいよ!」
ムフーンと鼻息を大きく鳴らす
「...とりあえず、話を始めるぞ。」
優しい笑顔から一転。真剣な表情になり、作戦の予備案を話し始める。
「まず、仮にレヴィンが予想以上に強かったとする。そうなった時に
「確かに!フリートの実力はなんとなくわかったけど、マギルヴスの実力見てない!!」
「...夜中だぞ。
「あ、ごめん」
「もし、レヴィンが俺の思っている以上に強いのであれば...。手こずる可能性も考慮しなければな...」
「ありゃ、集中モードになっちゃった...」
頬を指で少し掻きながら困惑する
「こうなると元に戻らないんですか?」
そんなテイの質問に苦笑いしながら
「うん、戻らない...」
と答える。
「今話してる最中なのに...」
そんな答えに困惑しか湧かないテイ。
「...よし、大体の計算は出来た...。しかし、やはりどの計算結果も結局は
そう呟き、少し罪悪感のある表情をする
「大丈夫だって!!さっきも言ったけど、私はにぃに頼られるの好きだから!」
と満面の笑みで答える。
「...本当に、ありがとな、
そうして、
時計の針が頂点を丁度過ぎた頃。突然地鳴りがし、民たちは一斉に起きる。その間、各所で困惑や悲鳴などの声が聞こえる。その地鳴りに
「え、何ですか!?」
「な、なんだ...この変な地鳴り...」
テイは
「起きてください!!
「んみゃぁ...どしたのぉていぃ...」
「...な、なんだこれ」
「え、ど、どうしたのですか!?
テイはそう言い、
「大災害でも起きたのか...」
思わずそんな言葉が口に出てしまうほどに凄惨な光景だった。
「な、なんで...」
「たった一夜でどうして...」
2人もそれ以上言葉が出なかった。あまりにも突然すぎる出来事に、脳が追いついていない為だ。そんな3人に追い討ちをかけるように、鼓膜が潰れるほどの爆音が突然鳴る。
「なんだ...!?」
そう言い、状況を確認するために、3人は外を出ると、そこには見た事のある姿が。
「...え」
「嘘でしょ...」
黒に限りなく近い紫色の鱗、蛇のような瞳孔、黄色の瞳、魔法学園とほぼ同じ大きさの翼、そしてわかりやすい3つ首。その姿は3人からすると記憶に新しく...。
「アジ・ダハーカ...」
3人、いやマギルヴスとフリートを含めた5人からしても、予想外で、そして絶望的な乱入者だった。
天才双子の転生録 coll @Coll-Over
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