真相

「一体どこいったんだ...アイツ...。」

数分後。色々落ち着いたじん達は、行方をくらませたアジ・ダハーカについて話し合いながら街の真ん中へと向かう。

「ところで、なんで街の方へ向かってるの?」

そらが質問する。

「テイの所へ行くんだ。テイには街で怪我した人に回復させるよう伝えて、転移させたからな。」

じんは街の真ん中へ行く理由を答える。

「なるほど!!テイを迎えるためにね!」

と、そらじんの理由を聞き、納得する。

「...そういえば気になったが、テイと言うやつはなんの魔法を覚えさせてるんだ?」

マギルヴスはそう質問する。じんは隠すことでもないと思い、正直に話す。

「テイには回復魔法を覚えさせてるんだ。怪我した時に治せるようにと、そしてもし前線だったらテイに怪我をさせてしまう。俺達はテイには、怪我させたくないしな。」

その話を聞き、フリートは

「いい関係性だねぇ...」

と、感動する。そんな事を話していると、いつの間にか街の中央に着いていた。

「テイどこだ〜?」

そらは辺りを見渡すも、そんなのでは見つからないわけで。

「やっぱここだけじゃ見つからないか〜...」

そう嘆き、そらはガックリとする。

「あの、フリート。」

じんはフリートに話しかける。

「ん?どうしたの?」

フリートは微笑みながらじんの方を向く。

「ここら辺に、避難場所とかないか?」

じんはテイが1番行きそうな場所を虱潰しらみつぶしに探す為、フリートにそう質問する。すると、フリートは指をさして

「あっちの方向に避難場所があるよ。僕たちも一緒に行こうか」

と指さした方へと歩き始める。


フリート達と駄弁りながら歩くじん達。

「───そうなんだ...!そうやってこっちの世界に来たんだね!」

じんはフリートとマギルヴスに元の世界からどうやってここに来たのかを話す。

「そこで、誰が俺達をこの世界に転生させたのか探しているんだ」

「へぇ〜!」

じんの話に興味津々で目を輝かせるフリート。

「まぁでも、おそらく...。いやほぼほぼ魔帝が関与しているだろうな」

マギルヴスは呆れたようにそう答える。

「まぁだろうな」

「私もなんとなーく分かってた。魔帝が関わってそーって」

2人共、同じ考えに至っていたようだ。その話をし、2人はまだ会ったことがないが、魔帝に対し更に殺意を向ける。すると、遠くの方から声が聞こえる。

じん様ぁ〜!そら様ぁ〜!」

その声に気づき、全速力で走るそら

「テイ〜!!」

「はっや...」

「やっぱあの子運動神経おかしいね...」

「人じゃねぇ...。」

そらの異常な走りの速さを見てドン引きするマギルヴスとフリート。

「街の方はどうだった?」

「はい!テイ、街の方で怪我した人をちゃんと治療しました!」

満面の笑みで嬉しそうにそらに報告するテイ。そんなテイに

「偉いねぇ〜!!」

と、そらも満面の笑みになり、頭をわしゃわしゃと撫で、頬ずりをする。

「んにゅ〜♪」

そらに頬ずりされたテイは小動物のような鳴き声を出す。

(テイは身長も相まって、小動物みたいで本当に可愛いなぁ...。更にそらも嬉しそうにスリスリして...。この2人の空間尊いな...。)

そんなテイとそらの様子を見て超嬉しそうにするじん

「ここの3人、なんか面白い関係だね。」

「そうだな...。まるで家族だ」

そんな3人の様子を見て、ほのぼのするマギルヴスとフリート。すると、奥の道路から、誰かがこちらに向かって走ってくる。

「...ん?誰か走ってきてるぞ」

その様子にじんは一瞬で気づく。その言葉を聞きそらは即座にその方を見る。

「あれ、ファルラだよ...?」

そらがそう告げる。その発言に、一同驚愕する。

「えっ?ファルラさん?」

「確かに、あの方向は城からだけど...」

テイとフリートは困惑する。が、そらと言葉を聞き、その方向を凝視するマギルヴス。

「あれ本当にファルラだぞ」

マギルヴスはその目で確認し驚愕する。

「えっ!?」

「ど、どうして...?」

「分からんが...。一応助けた方がいいな」

ファルラが何故、城から全速力で離れようとしているのか理解出来ないが、じんはファルラの方へ向かう。

「じゃあテイも行きます!!」

「私もー!!」

「...マギ。とりあえず僕たちも行こう!」

「あぁ...ファルラに何があったか聞かないとな」

じんに続き、皆、一斉にファルラの方へ走り出す。

「はぁっ...はぁっ...あれ?あれは...」

ファルラは目の前から人が近づいてくるのが見える。一瞬逃げようとも思ったが、よく見るとその姿はじん。助けてくれた恩人であり、友人でもあるので、ファルラはじんを信じ、全速力でじんの元へ行く。

「じ、じん様の所へ...。早く...っ」

じんは人並み程度に体力はあるが、走る速度は人より少し速いため、割とすぐにファルラの傍に着いた。そしてじん

「大丈夫かファルラ。一体何があった?」

と、じんが傍に来たことにより、座り込むファルラを落ち着かせるために、背中を撫でるじん

「あ、あのそれが...」

ファルラは息を粗げながらも喋ろうとすると、ファルラの後ろから追ってきていた謎の兵士達が到着する。

「おい、お前。そいつは反逆者だ。生かしてはおけん。とっととそいつをこっちに引き渡すんだな」

「...っ」

衛兵の発言にファルラは俯き、今にも泣きそうな顔になる。すると、そら達もじんの所に到着する。

「...何こいつら」

そらは一瞬で状況を把握し、衛兵たちに対し殺意を向ける。

「落ち着け、そら。こいつらはこの国の兵士だ。ここで戦ったら国家反逆として死罪の刑で俺たち死ぬんだぞ」

そんな殺意マシマシのそらをマギルヴスは落ち着かせる。

「なんと...。大予言者様もいらっしゃるのですか!なら話は早いです。この者は反逆者です。なので、今から捕まえる所でして...」

衛兵の言葉に驚愕するじん達。

「えっ」

「ファルラさんが反逆者...?」

「はぁ?」

「てめぇ。嘘つくんじゃねぇよ」

その発言にブチギレ、衛兵の鎧を片手で持ち上げるそら

「な、なんだ!?お前も反逆者になるのか!?」

持ち上げられた衛兵は必死に脅しをする。すると、流石にマズイと思ったのかじんが頭を優しく叩き

「落ち着けそら。まずは状況整理だ」

「っ...そうだった。ごめん...。」

と、そらをすぐに落ち着かせる。

「...何故、貴様らがウィスダル王の娘であるファルラを捕らえることになったんだ?事の経緯を教えろ」

マギルヴスは真剣な顔で衛兵達に質問する。その質問に対し衛兵は

「えっと...俺達も分からないんです。ただ、国王がファルラは反逆者だと。その為捕らえて地下牢獄に入れろと命令されただけでして...。」

(国王...?ファルラじゃないのだとしたら今の国王は一体...?)

衛兵の発言に疑問を抱くじん。しかし疑問を抱いたのはじんだけでなく、マギルヴス、そしてフリートもそうだった。

「ファルラ姫が王になった訳では無いんだね?」

フリートも真剣な顔で質問する。

「えぇ...。ですが、俺達にもまだ知らされていないんです。あの方がどういう経緯で王になったのか」

(本来ならファルラが王になるんだろうが...。何故...?)

じんは次の王が何故ファルラじゃないのか考える。そんな様子を見て、マギルヴスは率直に質問する。

「今の王の名前を教えろ。俺はその王の名前を聞く義務があるだろう」

少しドスの効いた低い声で圧をかけながらそう質問をする。

その殺意にも近いマギルヴスの圧に、とてつもなく動揺する衛兵。息を整えようと必死なのか不安定だ。

「え、えと...。そ、その通りですね...。そうですね...。うーんと...。」

衛兵は必死に頭を回しどう言おうかと言葉を考える。

「今から何を話すつもりなのだ貴様は。俺は単に今の王の名前を話せと言っているだけだが...。そんなに言い淀む理由があるのか?」

(ものすごい圧だな...。今にも殺しそうな程の...)

じんはマギルヴスの放つ圧に少し脅える。

「まぁまぁ...マギ。衛兵はただ命令に従ってるだけだから...。そんなに圧をかけないであげて?」

とフリートはマギルヴスの背中を撫でて落ち着かせる。

「...すまない。フリ。」

マギルヴスは素直に謝罪する。

(ずっと思ってたけど...。マギルヴスってフリートに弱いんだ...。)

そんなマギルヴスとフリートの様子を見て、そんなことを思うそら

「ごめんね?衛兵さん。今の王について話してくれないかな?」

フリートは優しく微笑みながら衛兵に聞く。すると衛兵は少しだけ顔を赤くし、答え始める。

「今の王はウィスダル王の甥、レヴィン様です。」

衛兵が今の王の名前を言うと、途端にフリートとマギルヴスは表情を変える。

「...嘘でしょ...?」

「何故そいつが王になっている...。本来王にならないはずだぞ?」

(2人の反応から見て、おそらくレヴィンという奴は何かしらをして王になった...?もしかしてウィスダル王が死んだのもそのレヴィンと言う奴の仕業なのか...?)

じんは2人の反応を見、極わずかな情報で、有り得そうな可能性について考える。

「何故、そいつが王になったのだ。答えろ」

マギルヴスは形相を変え、衛兵の首をつかみ先程よりも圧を出しながら質問する。質問と言うより恐喝とかの方が近いが...。

「そ、そんなの...俺たちは知りませんっ...」

涙目になりながらも衛兵は答える。予想通りの回答。だが、出来るなら答えが今欲しかったマギルヴスは歯を食いしばり

「チッ...そうか...」

と言い、衛兵の首を掴んでいた手を離し、歩き始める。

「え!?ど、どこ行くの!?マギルヴス!」

そらがあからさまに怒っているマギルヴスにそう聞くと、代わりにフリートが答えてくれる。

「多分。レヴィンのところだと思う...。おそらく直談判しに行くんだと思うよ」

「え、良いのですか?行かせても...?」

テイはマギルヴスの事を心配する。フリートは焦りながら

「大丈夫じゃない...。このままじゃおそらくマズイ...。」

と言い、フリートはマギルヴスの後を急いで追う。

「にぃ、私達もマギルヴスの後追おう?」

じん様。早く!行きましょう!」

テイとそらじんの手を握り引っ張る。

「あぁ、分かった...。」

じんは覚悟に決め、テイとそらに引っ張られながらマギルヴスの方へ向かう。


「マギ!!マギ!!」

見るだけでわかる程に激怒しているマギルヴスを必死に呼ぶフリート。

「...なんだ。フリ。」

フリートの方を見ず、歩きながら答えるマギルヴス。

「多分レヴィンの所行くんだろうけど、今マギが行ったら更にややこしくなると思うよ?」

フリートは心配しながらマギルヴスにそう言うと、マギルヴスは

「ややこしくなるならそれでいい、俺はただあの野郎に話を聞きに行くだけだ」

と言い、歩みを止めずそのまま城へと向かう。

「な、なんでマギルヴスを誰も止めないの...?」

そらは当たり前の疑問を口にする。

「止めないと言うより...上の立場だから止める事が出来ないんだろ...」

じんは憶測ながらしかしほぼ当たりであろう答えを言う。そんなじんの答えにフリートは

「...うん。合ってる...。」

と、少し苦笑いしながら答える。

じんの言う通り、この国ではマギを止める事が出来ないんだ。理由は...。マギがこの国で3番目に偉いからだね...。この国で1番偉いのは王なのは当たり前で、その次が実娘...まぁ姫だね。でも、3番目はその血筋の人ではなく、マギなんだ。」

その事実に驚愕する2人。

「マギルヴスが3番目に偉いの...!?」

「と、というか何故、じん様はいつそのことに気づいたのですか?!」

テイはじんが何故、マギルヴスが国の偉い立場にいるのか分かったのか質問する。

「それについては僕も知りたいな...。いつ気づいたの?」

その質問に対し、じんはいつものように表情を変えず答える。

「いつ気づいたって...まぁ最初にそう思ったのはこの国に来た時にだ。マギルヴスと会ってこう面と向かって話したら、確信に変わったけどな」

「えっ!?」

「この国に来た時にもうそう思ったのかい...?」

じんの答えに超絶驚く2人。

「あんな莫大な土地を、国が認可している。更にその学園の所有者ってのを考えたら妥当だし、その上国の予言者と呼ばれてる。これだけでも何となく把握出来る。そして最後。これが決定打で、マギルヴスの力、知識、そして立場だ。」

「マギルヴスの力はわかるけど...知識と立場...?」

じんの言葉を不思議がるそら。しかしじんは続けて話す。

「マギルヴスの魔法は、やはり魔帝に選ばれただけある...。まぁ元々の知識に対する欲、そして不老種族というのもあるだろうが...と言うよりそれがほとんどだろうな。マギルヴスのソレはフリートを優に超えている。」

「...そうだね」

じんの発言に頷くフリート。

「そして立場だ。マギルヴスも言っていたが、レッテルと言う理からの戒めを背負っている。何も知らない奴からしたら、そんな奴が何をしでかすか分からないだろう?」

「確かにそうですね...。」

テイはじんの言葉に納得する。

「だが、マギルヴスには敵意がないと知る。人間も知ってるはずだ、レッテルがもつ魔力量と知識を。だから国王はその魔力量、知識量等を鑑みて、国の中でも上の立場したのだろうなと思った。これが理由だ」

じんは事細かく詳細を話す。その話を聞き、更に驚く2人。

「す、凄いです...」

「本当に賢いね...君。」

そんな2人の反応に、ドヤ顔で頷くそら

「この世界を色々見て回ったが、この世界はどうやら実力主義だからな。マギルヴスが上の立場にいるのは危険だと考えただろうが、それでもその他色々を見たら、まぁ妥当だろうな。」

「本当にすごいね...。君にはずっと驚かされてるよ...。魔法の仕組みを独自で解剖したり、独学で魔法を覚えたわけだから、独自の今まで存在しなかった魔法を作ったり...。挙句の果てにはマギルヴスの位が高いことも即座に理解したり...。」

フリートは、じんの天才さを心の底から感じ、というか逆に凄すぎて半笑いになりながらじんのことを尊敬する。

「本当に、にぃはいつ魔法を理解したの?」

そらじんにそう質問すると、じん

「時間は然程使ってない。正直に言うと、魔法よりも俺らが元いた世界の未解決だった数式や、それこそフェルマーの最終定理の方が圧倒的に難しかった...」

半分苦笑いながらもそう答える。

「じ、時間そんなに使ってないんだ...」

そんなじんの発言にドン引きするフリート。

「というか、俺は魔法を完全には理解出来ては無い。いや...。理解しようとしなかったんだ。」

「え...?」

「理解しようとしなかった?」

じんの表情が急に変わった為、3人は動揺する。

「どういうこと?」

テイは質問する。その質問にじんは少し言い淀みながらも答える。

「おそらく、魔法の原理を完全に理解すると、宇宙の理を理解し、万物を完全に理解出来ることになる。」

「...え?」

そんな衝撃的な発言に一同は絶句する。

「な、何でそうなるの...?」

当たり前の質問するそら。その質問にじんは表情を変えずこう答える。

「正直、魔法の構造自体は至極簡単なんだ。ただ、構造が分かっていく度、段々とこの世の理も分かっていく...。そして深く探る度に物体がなぜ生まれるのか...と言った、この世の理が段々と理解してしまうんだ。そして、俺はその時思ったんだ。これ以上は絶対にダメだと」

真剣な表情でじんは3人に向けて言う。テイとそらは理解していないが、フリートは理解した。

「魔法を全て理解するしようとすると、廃人となり、堕ちてしまうから?」

目を開き、自然とそう口に出てしまうフリート。その後、フリートはじんを見るとじんは目を閉じ頷く。フリートの言ったことはじんが考えている事と同じなのだろう。

「という事は、魔帝って...」

「おそらく、マギルヴス達に力を与えた後、魔法を理解しようとした結果、理解はできたが廃人となり堕ちたのだろう」

少し悲しい顔でじんはそう言う。フリートはそんなじんの発言に終始驚愕する。

「だから、もしかしたらそのうち、マギルヴスもヤバいかもしれないから、魔法の研究は今のうちに止めておいた方がいいぞ」

じんはフリートにそう忠告する。

「...あぁ、そうだね...。」

フリートは冷や汗を垂らしながら答える。

(深淵をのぞく時、またこちらも深淵をのぞいているのだ...。か、本当に相変わらずすげぇな天才は)

じんは天才の凄さを改めて肌で感じる。


そんなこんなで色々と話していたら、城についた。

「やっぱ城ってデカいなぁ...」

そらは城の大きさに圧倒されすぎて、口の形が三角になってしまう。隣にいるテイは

「す、凄いです...!!初めて見ました!!」

と目を輝かせながら大喜びする。

「ほら、行くぞ」

じんは2人にそう言い、2人もそれに気付き、フリートの後を着いていく。

「マギ。レヴィンに会って何を話すの?」

フリートはマギルヴスの隣に行き、質問する。

「...何故、貴様なんかが王になったのか問うだけだ」

先程と変わらず、怒ったままでそう答えるマギルヴス。しかし、そんなマギルヴスにフリートは

「そんなにストレートに言ったらダメだよ絶対...。」

と、心配しながら説得しようとするが、マギルヴスは

「ウィスダルがレヴィンなんかを王にするわけがない...。何かしらの力が動いてるはずだ...」

そう言いながら、城の門を開ける。

「え、え!?マ、マギルヴス様!?どうしたのですか!?」

衛兵達は、焦りながらマギルヴスに質問するが、マギルヴスは衛兵達の言葉を一切聞かず、そのまま王の部屋へ一直線に向かう。

「す、凄いね...」

「本当に怒ってますね...」

テイとそらの2人はマギルヴスの激怒している様子にかなり動揺する。

「ごめんね...。今のマギには話しかけない方がいいよ...」

フリートは衛兵達に謝りながらも触れない方がいいと注意喚起をする。

(マギルヴスがここまで怒っているという事は、レヴィンは本来、王の器では無い奴という事だ。それなのに王になったという事は...。そう考えるとマギルヴスの考えることがほぼほぼ合ってそうだな)

じんはそう考えながら後に着いていく。マギルヴスは歩きを止めず、城の奥へと進んでいく。

「マ、マギルヴス様...!?何故...!?」

遂に、王の部屋の近くまで着く。部屋の前にいる護衛は、城にマギルヴスが居ることに驚愕する。護衛の2人は、咄嗟に持っている武器をクロスさせ部屋に入れさせないようにする。が。

「退け。俺は今からレヴィンと話さなければならん」

と言い放つマギルヴス。護衛はマギルヴスを見、恐怖する。それは何故か。その理由は至って簡単。マギルヴスの目には光が宿っておらず、ずっと刺し殺すような視線を護衛に向けている為だ。本当に目線だけで殺せそうな程の。

「はぁっ...はぁっ...。」

そのマギルヴスの威圧に今にも気絶しそうな程不安定な呼吸をする護衛。護衛は冷や汗を垂らしまくりながら、クロスした武器を解く。

「...フン」

マギルヴスは部屋に入る最後まで殺意に近い圧を放出する。

「ごめんね...お2人さん。休んでていいよ...」

フリートはマギルヴスの圧を直に感じ、耐えきった護衛に謝罪しいたわり、部屋へと入る。

「じゃね〜」

「し、失礼します」

テイとそらも入る。そしてその後、じんも無言で入る。


「なんだ貴様ら...。勝手に入ってきて」

部屋にいたのはレヴィン。レヴィンは偉そうに足をクロスさせて王の椅子に座っている。

「お前に聞きたいことがある。レヴィン」

マギルヴスはレヴィンに近づいていく。レヴィンは動揺せず、上から見下すようにマギルヴスを見つめる。

「急になんなのだマギルヴスよ。一旦、落ち着かないか。」

しかしマギルヴスはそんな言葉など聞かず、ズンズンと距離を縮める。

「貴様如きが俺の事を呼び捨てにする資格など無い...!!」

レヴィンと対面する前とした後では、怒り具合が段違いで変わっているのが分かる。

「ほ、本当に殺そうしてるレベルで怒ってるんだけど...大丈夫なの?」

そらはマギルヴスの怒り具合に少し心配する。が、フリートは

「あの状態だと止めることが出来ないから...」

と、半分諦め気味で告げる。

「そ、そうなのですか...。」

そんな様子に少し脅えるテイ。

「貴様に聞きたいことがある」

マギルヴスはそう言いながら、レヴィンの胸ぐらを掴む。

「今、なったばかりの王の胸ぐらを掴むのか...。ふん、やはり野蛮だな貴様は...。で、何用だ」

掴まれた手を見つめながらそう言った後、ゆっくりとマギルヴスの方に目線を向けるレヴィン。

「何故、この国の王が貴様なのだ...ッ!!次の王は姫のファルラのはずだっただろう!!」

マギルヴスは物凄い剣幕でレヴィンに問う。しかしレヴィンは

「誰が次の王がファルラだと決めたのだ...?そんなルールなど無いだろう。それに実力と王になる資格があった。だから私が王になった。それだけだ」

と、表情を変えず、ずっと見下したままでそう答える。

「今までの王は直系、性別関係なく実の子供が王として継いできた。」

「えっ...」

マギルヴスからの衝撃の事実に驚くテイとそらの2人。

(そうか...。直系で王を継いでいるのか...。ならばマギルヴスがキレる理由もわかる)

その事実でマギルヴスが激怒している理由を理解するじん

「それなのに突然、直系ではなく、ぽっと出の貴様が王になる訳ないと、王族に無関係の貴様如きが王になれる訳ないとそう言ってるのだ!!」

マギルヴスは怒り任せにレヴィンに対しそう叫ぶ。

「更に、貴様の悪評は俺とフリにもよく届くぞ。そんな奴が王など荒唐無稽にも程がある!!」

流石の剣幕に、じんですら固唾を呑み込まざるを得ない。

(先程までのマギルヴスを考えたら、ここまで怒りをあらわにしているという事は、このレヴィンと言う奴、相当ヤバい奴だと理解できるな...)

しかし、冷静に状況を把握し、レヴィンのヤバさを想像する。しかし、レヴィンは鼻で笑う。そして喋り出す。

「...そう力説されても、私は王になった。この事実は揺るがん。」

レヴィンは怒るマギルヴスを嗤笑しながら、そう告げる。

「...やはり貴様に聞いても真相が語られるわけが無いか...!!」

そう言い、マギルヴスはレヴィンの胸ぐらを掴んだ手を離し、部屋から出て行く。

「マ、マギ...!?えっ!?帰るの!?」

突然マギルヴスが帰ろうとした為、フリートは驚き、急いで後を追おうとする。すると、レヴィンは口を開け

「そうだ...マギルヴス。」

と、部屋から出ようと扉を開けるマギルヴスを呼び止める。マギルヴスは殺意マシマシでその場に止まる。その場の空気が完全にピリピリしていて、緊張が走る。

「ファルラ姫、ここにいないが一体どこに行った?ファルラ姫はお前らの後を着いてきた訳では無いのか?」

レヴィンの発言に一同、ファルラが居ないことに気づき、焦る。そうして、じん達は急いで部屋から出ていく。

「...ッフフ。精々頑張れ凡人ども。俺の手のひらの上でな...」








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