慈悲なき雨
「ま、魔帝...」
名前を聞いただけで、面倒臭いだろうなぁとわかりやすい顔をする
「...
「だってさぁ...明らかにラスボスみたいな名前じゃん!!」
(まぁたしかに、魔帝って名前だけで見るとラスボスっぽいけどなぁ...)
「ラスボス...?」
フリートは
「いや、こっちの世界の話だ。すまない。それで魔法が使える者は、全員魔帝に存在を認知されている。とはどういう意味なんだ?」
元の世界の説明よりも、魔帝が気になる
「魔帝は魔力感知の範囲が異常なまでに広く、そして精度もとてつもなく良い。その卓越した魔力感知の精度で、この世界の住民の魔法を扱える者全てを感知。そしてその魔力量を測ることが出来る」
その質問にマギルヴスは正確に答える。
(おそらく、この世界で1番強い...)と
「何故、そんなにも魔帝のことを知っているんだ?」
「俺は身分を隠しているが、本当はこの世界の大罪人。
新しい情報。そして
「その、
その質問にフリートは複雑な顔で
「当たり前の質問だね...」
と納得する。マギルヴスも少し悲しい顔をしながらも答える。
「さっきも言ったが、
「魔帝に授けられたらどうなるの?」
「魔帝に位を貰うと、人ならざる魔力量が付与され、世界最強レベルの魔導師となる」
「せ、世界最強?
(それだけで、世界最強相当の強さになるとは...。更にその存在をこの世界に4人生み出しているとは...。魔帝とは一体...。)
「俺の位は
マギルヴスは、手のひらで作った小さな銀河を見ながら言う。
「天と星を穿つ...」
テイはその様子を想像しながら呟く。
「他にはどんなのがいるんだ...?」
「...
「光だって...!テイ!」
「光属性の魔法...凄いです!!」
光の魔法と言うロマンの塊に興奮するお2人さん。
「元素を主軸とした魔法を扱い、この世に存在しない物体や、本来作れるはずのない物体を創造出来る。
「いつ聞いても元素を操る魔法とか...おかしいだろ」
改めて聞いてもマギルヴスの規模感がおかしいとドン引きする
「時を主軸とした魔法を扱い、人の命を止めたり、世界の時間を止める事が出来る。
「と、時を止めるって強すぎない?」
(そういうのたまに見るが、そういう奴ってどう対抗すればいいんだ...)
「最後の
マギルヴスは最後の1人を説明しようとする。しかし、マギルヴスは少し冷や汗を流す。
「な、何、その表情...。」
「どうしたのでしょう...?」
マギルヴスを心配するテイと
「最後の1人は...別格でな...。」
そうマギルヴスは言う。
(3人の
「最後...。無を主軸とした魔法を扱い、物体を消去、全てを闇へと葬る。
「はぁ...!?」
「な、なんですかそれ...」
(そんなの誰も対抗できないだろ...。なんだそいつ...。全てを無に帰すだと...?)
3人は最後の
「
「元素を扱う魔導師に光を扱う魔導師、時に無。っはは...。考えただけでも戦いたくねぇ」
「だけど、
テイは満面の笑みで
「確かにそうだ...。現にマギルヴスは敵意がない。まぁフリートがいたおかげの可能性もあるが、だとするならもしかしてマギルヴスらにあるレッテルの
「このレッテルは、世界に背いた結果、一生償っても消えない呪いなんだ。」
「消えない呪い...」
マギルヴスは続けて説明する。
「俺たち4人は力を貰った魔帝に従い、様々場所で残虐的な行為をした。その結果、人々は魔帝を封じ込める為、策を生じ、魔法使い達を集め、
「そんな過去が...」
「マギルヴスさんもそういうことがあったのですね」
(なるほど...魔帝は今は封印されていて、
マギルヴスは犯した罪を反省しながら外を眺めている。
「だから言っただろう。俺は大罪人だと」
「マギ...。」
フリートはそんな様子のマギルヴスを見つめる。
「だとしたら大元はやはり魔帝か...。」
そんなことを呟く
「え?」
「
「にぃ...それはどういう...。」
すると、
「おそらく俺たちをここに召喚したのもその魔帝ってやつだろう。なら、俺たちはその魔帝に会い、なぜ俺たちを召喚したのか聞いてみるしかないな。」
と皆に告げる。皆、驚愕する。
「ま、魔帝に会いにいく...?!」
フリートは前代未聞の発言を聞き、思わずオウム返しをするが、
「そうだな」
頷きながら肯定する。
「にぃ、ほんとに言ってる?」
「俺は冗談言ったことないだろ...」
「いや、そういう訳じゃなくて...」
と頭を抱えながら呟く。
「じ、
フリートは心配しながらそう聞く。
「何、今から会いに行くわけじゃない。おそらくマギルヴスは魔帝の封印場所を知らない。知っているのは歴史学者や
とテイの頭を撫でながら言う。
「そ、そうですか...わかりました...。
「ほ、本気で言ってるのか?」
「あぁ、俺たちは魔帝に会いに行く」
しかしマギルヴスは、その男が嘘をついていないと分かる。なぜならマギルヴスの目に映ったのは覚悟を決めた、あの時の
「...そうか。
マギルヴスが話そうとすると、地響きが鳴る。
「...きゃっ!?」
テイは体勢が崩れ、床に座り込む。
「な、何!?」
「何だ...?」
「あ、あれは...」
見えたのは黒く巨大な三つ首の龍が、国のド真ん中でとてつもない咆哮をしている姿。
「デカすぎるでしょ、あの龍...。」
「ア、アジ・ダハーカ!?どうしてここに!?」
フリートは驚愕する。その言葉を聞き、マギルヴスも驚く。
「アジ・ダハーカだと...?あのドラゴンは魔帝に仕える龍の中の1匹で、本来この地域には侵入してこないはず...。どうして...」
何故、この国にアジ・ダハーカが来たか全く理解できない様子のマギルヴス。
(アジ・ダハーカ...元の世界ではたしかゾロアスター教に登場する龍だったか...。英語圏だったり、別の圏だったり...変な世界だな...。)
「とりあえず、アジ・ダハーカを何とかしないと、国民が危ない...!!」
「フリ、俺たちは空から行くぞ」
「...うん、分かった!」
マギルヴスとフリートは窓から外へと飛び立ち。空を移動する。
(アジ・ダハーカなんて、名前を知ってるだけで、突破口なんて分かんねぇぞ...。初見でどれだけ対応できるか...)
そんなことを考えながら、部屋を出る
「ね、ねぇ、アジハカーダって何!?」
「アジ・ダハーカね...」
とツッコむ
「アジ・ダハーカは、元いた世界だと、たしかゾロアスター教の邪龍だったはずだ。だが、名前を知ってるだけで、アジ・ダハーカの対策は知らない...」
「た、対策は知らないのですか...」
テイは深く絶望する。しかし、
「大丈夫、俺たちはマギルヴスとフリートの手助けをするだけだ。テイはヒーラーだから怪我人を治療して貰えると助かるな」
と頭を撫でながら柔らかい表情で言う。
「そんなことしてる暇ないよ!!早く行かないと!!」
「なら
「分かった...!!」
と言い、足に力を入れる。
「今から...」
また更に力を入れる。すると地面がひび割れ、足がめり込む。
「う、嘘ですよね...」
テイはその光景を見て驚愕する。
「能力値上昇...。対象。
「い、いつそんな魔法覚えたんですか!?」
「テイ達が寝てる間にだよ。でも一応言っておくと俺は攻撃魔法は一切覚えてない。俺は攻撃するタイプじゃないし、
そう言うと、
「行って───!!」
一瞬でその場から消える。あまりにも早すぎて最後の来るが聞こえなかったが...。
「お、おい、フリ、後ろからとてつもない速さでアジ・ダハーカに向かってる奴がいるぞ...」
空を飛んでいるマギルヴスは、フリートにそういう。
「う、嘘...」
フリートは恐る恐る後ろを見ると、本当にとてつもない速さで飛ぶ人の姿が。
「な、何あれ!?」
その様子が見え、当たり前にフリートは驚愕する。
「どいたどいたぁ!!!今からこの
「カキフライヤーに物理が通じるか分からないけど...マギルヴスやフリートにだけいい思いはさせない!!」
アジ・ダハーカだけを見つめ、無邪気な笑顔を見せる
「カッコイイけど、カキフライヤーじゃなくて、アジ・ダハーカだよ...。
そんな
「ありがとう!!アジフライヤーね!!」
そう言い、
「いや混じってる!!」
「アジフライヤー!!私の拳を耐えれるか!!勝負だ!!」
「また間違えてる...」
フリートは何度も間違える
「もし本当に
マギルヴスはもしかしたら...と
「私の名前を込めたこの技で...っ!!」
アジ・ダハーカへとだんだんと近づく。
「
「う、嘘でしょ...何あれ」
「常人が持つ力じゃねぇ...」
マギルヴスとフリートは
数十秒前。
「テイ。俺は
「わかりました!!」
と頷く。
「転移。付与対象。テイ。転移場所。ここから北北西6748m先。じゃあ後でな。テイ。」
「はい!」
テイも満面の笑みで答える。そしてテイは避難場所に転移される。
「さて...」
と言い、
(音の響き方、
この間、0.000000195秒。瞬きも許さない刹那。その時間をも超えるほんの僅かな時間で
「...転移。付与対象。自分。転移場所。正面6763m先。上空5145m。」
そうして
「どうだった?
「効いた!でもアジフライヤーまだ耐えてる!!メッッチャ硬い!!私は全然大丈夫だけど...。」
と、国民の心配をする
「国民も大事だが今は、龍をどうするかだ。」
「そうだね...」
「とりあえず...飛行魔法。付与対象。自分、
「うわ、すご!飛行魔法も覚えてるの!?」
と驚愕する
「攻撃以外なら全て覚えた。と言うか攻撃魔法は覚える必要ないしな。」
「やっぱいつ見ても習得早過ぎるよ...。もういつも通りのことだけど...」
「追い打ちだ...!!」
「フリ。同時に撃つぞ」
マギルヴスはフリートの方を向き、そう言う。
「...あぁ、もちろん!!」
マギルヴスの言った言葉に少し驚くも、すぐに笑顔になるフリート。
「俺も手伝うぞ。2人とも」
「...
「手伝うって...どうやって」
フリートがそう言うと、
「魔法威力増強。付与対象。フリート、マギルヴス。」
そうして、
「魔法の威力を増す魔法だと...?」
「どこでその魔法を...」
と
「どこでって言われても...独自で作り出したとしか...」
「ど、独学!?」
「嘘だろ...」
2人は
(...この世界でも天才は疎まれるのか)
そう思った瞬間。2人は表情を変え
「天才すぎるでしょ!!」
「まさか、魔法の原理を分かったってのか?」
そんな話をしていると、アジ・ダハーカが動き出し、
「アジ・ダハーカ!?もう起きてきたのか...!!」
「まずい...!フリ!!」
「このままじゃ...全員...っ」
(今の状況じゃ魔法詠唱すら間に合わない!!考えろ!!この状況での最適解を!)
とてつもない早さで頭を回転させる
(詠唱破棄の魔法の撃ち方を覚えれば...)
そう考えた瞬間、アジ・ダハーカは何かに殴られた様にまた奥へ吹き飛ぶ。
「な...何だ?」
「いきなり吹き飛んだ...?」
「ありがとう助かったよ。
「ボケっとしないで、にぃ。アイツとんでもなく硬い上に、絶対ヤバい技使ってくるから。」
そう
「ごめんな。」
そんな
「僕たちも助かった...ありがとう
「あぁ、すまなかった。」
2人も助けてくれた
「ホントだよ...。」
すると、アジ・ダハーカがまたも起きてくる。そしてこちらの方を向き、吠える。
「うるさ...っ!!」
「ぐっ...」
「耳が聞こえなくなりそうだ...!」
「...っ!!」
4人はそのとてつもなくデカい咆哮に耳を塞ぐ。すると、その隙を見たアジ・ダハーカは近づく。そして先程と同じく、何かを口から放とうとする。
「嘘だろ...っ!?」
「この隙ついてくるのかよ...!?」
「この攻撃は黒炎!!ヤバい!!避けろ...!!みんな!!」
フリートはそう言うが、全員耳が聞こえない。それに気づき、フリートはしまった...!!と絶望の顔をする。
(本当にマズい...!!)
今度こそ本当に食らってしまう。
「...フリート!?」
(こいつの対策は僕以外分かってない。闇と炎という2つの属性、更に異常なタフさをしているこの龍は、常人離れした力、そして
フリートはニヤリと笑い、魔法陣を展開する。
「〝剣の舞〟」
フリートがそう言い放つと、フリートの周りに無数の剣が現れる。
「なんだあれ...」
「剣が...いっぱい...。」
(僕は今まで、この魔法だけを200年以上極めてきた...。更に、
2人がその光景に唖然としていると、マギルヴスはフリートの魔法を2人に説明する。
「あれはフリートの魔法。フリートは剣の魔法だけを扱う。フリートは魔帝に力を貰ってる訳では無いのにも関わらず、
「〝慈悲なき斬撃の雨〟」
フリートがそう言い放つと、無数の剣はアジ・ダハーカの方を向き、一斉にアジ・ダハーカを切り刻む。アジ・ダハーカは痛そうな声を上げ、何かを放とうとするのを止め、空へ飛び立つ。
「行かせるか...!!」
「なっ...クソッ」
思わずそんな言葉を吐き捨ててしまう
「逃がしちゃったね...」
フリートも悔しそうな顔をする。
「俺も魔法を出せなかった...。次こそはぶっ潰す...。」
と、マギルヴスはアジ・ダハーカに対する殺意を高める。
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