慈悲なき雨

「ま、魔帝...」

名前を聞いただけで、面倒臭いだろうなぁとわかりやすい顔をするそら

「...そら、そんな顔しない」

「だってさぁ...明らかにラスボスみたいな名前じゃん!!」

そらはかざり目になりながら文句を言う。

(まぁたしかに、魔帝って名前だけで見るとラスボスっぽいけどなぁ...)

「ラスボス...?」

フリートはじん達の話し合いを聞き、聞きなれない単語に疑問を抱く。

「いや、こっちの世界の話だ。すまない。それで魔法が使える者は、全員魔帝に存在を認知されている。とはどういう意味なんだ?」

元の世界の説明よりも、魔帝が気になるじんは、すぐさま話を変える。

「魔帝は魔力感知の範囲が異常なまでに広く、そして精度もとてつもなく良い。その卓越した魔力感知の精度で、この世界の住民の魔法を扱える者全てを感知。そしてその魔力量を測ることが出来る」

その質問にマギルヴスは正確に答える。そらは魔帝の話を少し聞いただけで分かった。

(おそらく、この世界で1番強い...)と

「何故、そんなにも魔帝のことを知っているんだ?」

じんは目を鋭くし、マギルヴスに質問をする。マギルヴスとフリートは目を合わせ、数秒黙る。しかし覚悟を決め、マギルヴスは喋り始める。

「俺は身分を隠しているが、本当はこの世界の大罪人。四星魔導師フィアスターの1人。〝天星てんせい〟と言う位を魔帝に与えられた。そして、〝Ⅲ戒さんかい〟と言うレッテルを貼られた...。」

新しい情報。そしてじんの予想通り、四星魔導師フィアスターだったマギルヴス。しかし、噂に聞いていた様な暴虐性は無い様に見える為、じんは少し疑問に思いながらもマギルヴスに質問する。

「その、Ⅲ戒さんかい天星てんせいってのはなんなんだ?」

その質問にフリートは複雑な顔で

「当たり前の質問だね...」

と納得する。マギルヴスも少し悲しい顔をしながらも答える。

「さっきも言ったが、天星てんせいとは魔帝に授けられた階位なんだ。」

「魔帝に授けられたらどうなるの?」

そらは素直に質問する。普通にそれは俺も気になる。するとマギルヴスは魔法をほんのり出しながら答える。

「魔帝に位を貰うと、人ならざる魔力量が付与され、世界最強レベルの魔導師となる」

「せ、世界最強?くらいを貰うだけで...?」

そらはマギルヴスの発言にドン引きする。

(それだけで、世界最強相当の強さになるとは...。更にその存在をこの世界に4人生み出しているとは...。魔帝とは一体...。)

「俺の位は天星てんせい。天と星を穿つ程の強さを持つと言う意味を込められた。」

マギルヴスは、手のひらで作った小さな銀河を見ながら言う。

「天と星を穿つ...」

テイはその様子を想像しながら呟く。


「他にはどんなのがいるんだ...?」

じんは、マギルヴスに魔帝から授かった他の人物を聞く。マギルヴスは他の四星魔導師フィアスターについて話し始める。

「...四星魔導師フィアスターについて説明するか、光を主軸とした魔法を扱い、自身の体までも光へ変化させる、Ⅳ戒よんかい。〝光星こうせい〟。」

「光だって...!テイ!」

「光属性の魔法...凄いです!!」

光の魔法と言うロマンの塊に興奮するお2人さん。

「元素を主軸とした魔法を扱い、この世に存在しない物体や、本来作れるはずのない物体を創造出来る。Ⅲ戒さんかい天星てんせい。」

「いつ聞いても元素を操る魔法とか...おかしいだろ」

改めて聞いてもマギルヴスの規模感がおかしいとドン引きするじん

「時を主軸とした魔法を扱い、人の命を止めたり、世界の時間を止める事が出来る。Ⅱ戒じかい。〝時星じせい〟。」

「と、時を止めるって強すぎない?」

(そういうのたまに見るが、そういう奴ってどう対抗すればいいんだ...)

じんは、Ⅱ戒じかいの対策について考える。

「最後の四星魔導師フィアスターだな...。」

マギルヴスは最後の1人を説明しようとする。しかし、マギルヴスは少し冷や汗を流す。

「な、何、その表情...。」

「どうしたのでしょう...?」

マギルヴスを心配するテイとそら

「最後の1人は...別格でな...。」

そうマギルヴスは言う。じん

(3人の四星魔導師フィアスターも説明聞いただけで異次元だったのに、最後の1人は一体...)

「最後...。無を主軸とした魔法を扱い、物体を消去、全てを闇へと葬る。Ⅰ戒いかい。〝虚星きょせい〟」

「はぁ...!?」

「な、なんですかそれ...」

(そんなの誰も対抗できないだろ...。なんだそいつ...。全てを無に帰すだと...?)

3人は最後の四星魔導師フィアスターの能力に驚愕する。

四星魔導師フィアスターだけで宇宙作れるぞ...。」

じんは半分呆れながら言う。


「元素を扱う魔導師に光を扱う魔導師、時に無。っはは...。考えただけでも戦いたくねぇ」

「だけど、四星魔導師フィアスターが悪い人だらけでは無いって事は知れました!」

テイは満面の笑みでじんに向かって言うと、じんは納得する。

「確かにそうだ...。現にマギルヴスは敵意がない。まぁフリートがいたおかげの可能性もあるが、だとするならもしかしてマギルヴスらにあるレッテルのⅢ戒さんかいなどは人間に対する危険度なのか?」

じんは、そうマギルヴスに質問する。マギルヴスはまたも悲しい顔をする。

「このレッテルは、世界に背いた結果、一生償っても消えない呪いなんだ。」

「消えない呪い...」

マギルヴスは続けて説明する。

「俺たち4人は力を貰った魔帝に従い、様々場所で残虐的な行為をした。その結果、人々は魔帝を封じ込める為、策を生じ、魔法使い達を集め、異界者イレギュラーを召喚し、無事魔帝を封じ込めた。それに伴い、俺たち四星魔導師フィアスター異界者イレギュラーにやられ、呪いを付けられた。どんな魔法でも消えない呪いで、魔力半減。効果半減。そして悪行をする度、効果が増幅していくという戒めレッテルがな。」

「そんな過去が...」

「マギルヴスさんもそういうことがあったのですね」

(なるほど...魔帝は今は封印されていて、四星魔導師フィアスターは魔法の効果が半減していると...)

マギルヴスは犯した罪を反省しながら外を眺めている。

「だから言っただろう。俺は大罪人だと」

「マギ...。」

フリートはそんな様子のマギルヴスを見つめる。


「だとしたら大元はやはり魔帝か...。」

そんなことを呟くじん。その言葉に驚く一同。

「え?」

じん様...?」

「にぃ...それはどういう...。」

すると、じんは覚悟を決め。

「おそらく俺たちをここに召喚したのもその魔帝ってやつだろう。なら、俺たちはその魔帝に会い、なぜ俺たちを召喚したのか聞いてみるしかないな。」

と皆に告げる。皆、驚愕する。

「ま、魔帝に会いにいく...?!」

フリートは前代未聞の発言を聞き、思わずオウム返しをするが、じん

「そうだな」

頷きながら肯定する。

「にぃ、ほんとに言ってる?」

そらは呆れながら質問する。

「俺は冗談言ったことないだろ...」

じんは何年一緒にいるんだと思いながらそういう。しかしそら

「いや、そういう訳じゃなくて...」

と頭を抱えながら呟く。

「じ、じん様...魔帝ってとてつもなく強いのでは無いのですか?会いに行くのですか?」

フリートは心配しながらそう聞く。じんはその場で座って、少し表情が優しくなり

「何、今から会いに行くわけじゃない。おそらくマギルヴスは魔帝の封印場所を知らない。知っているのは歴史学者や異界者イレギュラーについて調べている人だろう。なら4つの大陸を巡るしかない。」

とテイの頭を撫でながら言う。

「そ、そうですか...わかりました...。じん様が決めたことなら...」

じんの姿を見て、テイも覚悟を決める。

「ほ、本気で言ってるのか?」

じんの発言でマギルヴスの表情が驚きへと変わっているのが目に見えてわかる。

「あぁ、俺たちは魔帝に会いに行く」

しかしマギルヴスは、その男が嘘をついていないと分かる。なぜならマギルヴスの目に映ったのは覚悟を決めた、あの時の異界者イレギュラーと同じ姿に見えたのだから。マギルヴスはじんの姿を見て、俺も動かなければ。と覚悟を決める。

「...そうか。じん、貴様には───」

マギルヴスが話そうとすると、地響きが鳴る。

「...きゃっ!?」

テイは体勢が崩れ、床に座り込む。

「な、何!?」

「何だ...?」

そらじんは同時にそう言い、すぐさま外を見る。

「あ、あれは...」

見えたのは黒く巨大な三つ首の龍が、国のド真ん中でとてつもない咆哮をしている姿。

「デカすぎるでしょ、あの龍...。」

そらは黒龍のいかつい姿を見て、唖然とする。

「ア、アジ・ダハーカ!?どうしてここに!?」

フリートは驚愕する。その言葉を聞き、マギルヴスも驚く。

「アジ・ダハーカだと...?あのドラゴンは魔帝に仕える龍の中の1匹で、本来この地域には侵入してこないはず...。どうして...」

何故、この国にアジ・ダハーカが来たか全く理解できない様子のマギルヴス。

(アジ・ダハーカ...元の世界ではたしかゾロアスター教に登場する龍だったか...。英語圏だったり、別の圏だったり...変な世界だな...。)


「とりあえず、アジ・ダハーカを何とかしないと、国民が危ない...!!」

そらがそう言うと、皆ハッとし、一斉に行動し始める。

「フリ、俺たちは空から行くぞ」

「...うん、分かった!」

マギルヴスとフリートは窓から外へと飛び立ち。空を移動する。

(アジ・ダハーカなんて、名前を知ってるだけで、突破口なんて分かんねぇぞ...。初見でどれだけ対応できるか...)

そんなことを考えながら、部屋を出るじん。そんなじんについて行くそらとテイ。

「ね、ねぇ、アジハカーダって何!?」

そらは、じんに聞く。そんなそらの発言に

「アジ・ダハーカね...」

とツッコむじん

「アジ・ダハーカは、元いた世界だと、たしかゾロアスター教の邪龍だったはずだ。だが、名前を知ってるだけで、アジ・ダハーカの対策は知らない...」

じんは険しい顔をしながらそらの質問を答える。

「た、対策は知らないのですか...」

テイは深く絶望する。しかし、じんは振り向いてテイの目線に合わせる様に屈み

「大丈夫、俺たちはマギルヴスとフリートの手助けをするだけだ。テイはヒーラーだから怪我人を治療して貰えると助かるな」

と頭を撫でながら柔らかい表情で言う。

「そんなことしてる暇ないよ!!早く行かないと!!」

そらは早く早く!と足を動かす。

「ならそら、ここはもう学園内から出てるから、試しにアジ・ダハーカにひとっ飛びして、全力で殴ってみたらどうだ?」

じんは奇想天外な発想をする。そんな発想に、そらは目が点になるも

「分かった...!!」

と言い、足に力を入れる。

「今から...」

また更に力を入れる。すると地面がひび割れ、足がめり込む。

「う、嘘ですよね...」

テイはその光景を見て驚愕する。

「能力値上昇...。対象。そら。今の能力値の倍とする。」

じんそらに対し、能力値上昇の魔法をかける。すると、そらのめり込んだ足がまた更に深くめり込み、ひびがもっと広がる。

「い、いつそんな魔法覚えたんですか!?」

じんが魔法を使ってるのを見て驚愕するテイ。

「テイ達が寝てる間にだよ。でも一応言っておくと俺は攻撃魔法は一切覚えてない。俺は攻撃するタイプじゃないし、そらは全力で戦いたいだろうし」

そう言うと、そらは満面の笑みになり

「行って───!!」

一瞬でその場から消える。あまりにも早すぎて最後の来るが聞こえなかったが...。


「お、おい、フリ、後ろからとてつもない速さでアジ・ダハーカに向かってる奴がいるぞ...」

空を飛んでいるマギルヴスは、フリートにそういう。

「う、嘘...」

フリートは恐る恐る後ろを見ると、本当にとてつもない速さで飛ぶ人の姿が。

「な、何あれ!?」

その様子が見え、当たり前にフリートは驚愕する。

「どいたどいたぁ!!!今からこのそら様がアジ・ダハーカに一発ぶち込んでやるさぁぁ!!!」

そらは今度、拳に全力で力を入れる。

「カキフライヤーに物理が通じるか分からないけど...マギルヴスやフリートにだけいい思いはさせない!!」

アジ・ダハーカだけを見つめ、無邪気な笑顔を見せるそら

「カッコイイけど、カキフライヤーじゃなくて、アジ・ダハーカだよ...。そら...。」

そんなそらにツッコミを入れるフリート。

「ありがとう!!アジフライヤーね!!」

そう言い、そらはマギルヴスとフリートの間を通り過ぎる。

「いや混じってる!!」

「アジフライヤー!!私の拳を耐えれるか!!勝負だ!!」

「また間違えてる...」

フリートは何度も間違えるそらに呆れる。

「もし本当にそらの物理攻撃が効くのだとしたら...」

マギルヴスはもしかしたら...とそらの攻撃に賭ける。

「私の名前を込めたこの技で...っ!!」

アジ・ダハーカへとだんだんと近づく。

天穿拳あまうがつこぶし!!」

そらの放った拳はアジ・ダハーカの横腹に直撃する。タイミングピッタリ。あまりの威力の高さに、辺り数十キロ渡って衝撃波が出る。マギルヴスの賭け通り、アジ・ダハーカに物理が通じているように見える。見えるどころか向かいの山まで吹き飛ぶアジ・ダハーカ。

「う、嘘でしょ...何あれ」

「常人が持つ力じゃねぇ...」

マギルヴスとフリートはそらの異常な強さに驚愕する。


数十秒前。

「テイ。俺はそらの所へ転移する。テイも転移させるが、街の避難場所に転移させる。すまないが回復魔法で国民の回復をしてくれないか?」

じんはテイにそう告げる。最適解はこうだと。テイはじんの言葉を信じ

「わかりました!!」

と頷く。

「転移。付与対象。テイ。転移場所。ここから北北西6748m先。じゃあ後でな。テイ。」

じんは優しく微笑む。

「はい!」

テイも満面の笑みで答える。そしてテイは避難場所に転移される。

「さて...」

と言い、じんは集中し、計算を始める。だが、その計算の速さはじんからすれば当たり前、しかし凡人からすれば、文字通り瞬間的な計算の時間であった。

(音の響き方、そらの移動の速さ。そら自身の力の大きさ。そして衝撃波の時間から計算するに...ざっと...。こんなもんか...。よし)

この間、0.000000195秒。瞬きも許さない刹那。その時間をも超えるほんの僅かな時間でじんは計算を終わらせた。

「...転移。付与対象。自分。転移場所。正面6763m先。上空5145m。」

そうしてじんは計算し終わった後に、自身に転移魔法を付与し、そらの元へ行く。

「どうだった?そら。」

そらに状況を確認するじん

「効いた!でもアジフライヤーまだ耐えてる!!メッッチャ硬い!!私は全然大丈夫だけど...。」

と、国民の心配をするそら

「国民も大事だが今は、龍をどうするかだ。」

じんそらにそう言う。

「そうだね...」

「とりあえず...飛行魔法。付与対象。自分、そら。飛行時間、規定なし。」

じんは自身とそらに浮遊時間を付与する。そんなじん

「うわ、すご!飛行魔法も覚えてるの!?」

と驚愕するそら

「攻撃以外なら全て覚えた。と言うか攻撃魔法は覚える必要ないしな。」

「やっぱいつ見ても習得早過ぎるよ...。もういつも通りのことだけど...」

じんの異常な習得の早さに引くそら。そんなことを話していると、アジ・ダハーカは起き上がろうとする。すると、後ろから、2人がアジ・ダハーカへ向かう。

「追い打ちだ...!!」

「フリ。同時に撃つぞ」

マギルヴスはフリートの方を向き、そう言う。

「...あぁ、もちろん!!」

マギルヴスの言った言葉に少し驚くも、すぐに笑顔になるフリート。

「俺も手伝うぞ。2人とも」

じんが後ろから着いてくる。

「...じん!」

「手伝うって...どうやって」

フリートがそう言うと、じんは魔法の詠唱を始める。

「魔法威力増強。付与対象。フリート、マギルヴス。」

そうして、じんが魔法の使用を終えると、フリートとマギルヴスは驚き。

「魔法の威力を増す魔法だと...?」

「どこでその魔法を...」

じんに質問する。

「どこでって言われても...独自で作り出したとしか...」

じんは少しキョトンとした顔でそう答える。事実、じんは、独自で魔法が発動する仕組みや原理を解き、次々と魔法を編み出した。

「ど、独学!?」

「嘘だろ...」

2人はじんの発言に驚愕する。しかし目線は過去に体験した少し引き気味の目線。

(...この世界でも天才は疎まれるのか)

そう思った瞬間。2人は表情を変え

「天才すぎるでしょ!!」

「まさか、魔法の原理を分かったってのか?」

そんな話をしていると、アジ・ダハーカが動き出し、じん達の方に移動する。そして...

「アジ・ダハーカ!?もう起きてきたのか...!!」

じんが気づき、2人は後ろを振り返る。アジ・ダハーカは何かを口から放とうとする。

「まずい...!フリ!!」

「このままじゃ...全員...っ」

(今の状況じゃ魔法詠唱すら間に合わない!!考えろ!!この状況での最適解を!)

とてつもない早さで頭を回転させるじん。瞬間、じんの脳裏によぎる。

(詠唱破棄の魔法の撃ち方を覚えれば...)

そう考えた瞬間、アジ・ダハーカは何かに殴られた様にまた奥へ吹き飛ぶ。

「な...何だ?」

「いきなり吹き飛んだ...?」

じんはすぐに理解した。この攻撃が誰の仕業か。

「ありがとう助かったよ。そら

「ボケっとしないで、にぃ。アイツとんでもなく硬い上に、絶対ヤバい技使ってくるから。」

そうじんを叱るそら

「ごめんな。」

そんなそらに素直に謝罪するじん

「僕たちも助かった...ありがとうそら。」

「あぁ、すまなかった。」

2人も助けてくれたそらに感謝する。

「ホントだよ...。」

すると、アジ・ダハーカがまたも起きてくる。そしてこちらの方を向き、吠える。

「うるさ...っ!!」

「ぐっ...」

「耳が聞こえなくなりそうだ...!」

「...っ!!」

4人はそのとてつもなくデカい咆哮に耳を塞ぐ。すると、その隙を見たアジ・ダハーカは近づく。そして先程と同じく、何かを口から放とうとする。

「嘘だろ...っ!?」

「この隙ついてくるのかよ...!?」

「この攻撃は黒炎!!ヤバい!!避けろ...!!みんな!!」

フリートはそう言うが、全員耳が聞こえない。それに気づき、フリートはしまった...!!と絶望の顔をする。

(本当にマズい...!!)

今度こそ本当に食らってしまう。じんはまたも対策を考える。するとフリートが動き出す。

「...フリート!?」

(こいつの対策は僕以外分かってない。闇と炎という2つの属性、更に異常なタフさをしているこの龍は、常人離れした力、そして四星魔導師フィアスターレベルの魔法使いなら攻撃が通る!)

フリートはニヤリと笑い、魔法陣を展開する。

「〝剣の舞〟」

フリートがそう言い放つと、フリートの周りに無数の剣が現れる。

「なんだあれ...」

「剣が...いっぱい...。」

(僕は今まで、この魔法だけを200年以上極めてきた...。更に、じんの魔法威力増強もまだある。この攻撃なら通るはずだ!!)

2人がその光景に唖然としていると、マギルヴスはフリートの魔法を2人に説明する。

「あれはフリートの魔法。フリートは剣の魔法だけを扱う。フリートは魔帝に力を貰ってる訳では無いのにも関わらず、四星魔導師フィアスター相当の強さを誇る。」

「〝慈悲なき斬撃の雨〟」

フリートがそう言い放つと、無数の剣はアジ・ダハーカの方を向き、一斉にアジ・ダハーカを切り刻む。アジ・ダハーカは痛そうな声を上げ、何かを放とうとするのを止め、空へ飛び立つ。

「行かせるか...!!」

じん達はアジ・ダハーカの後を追うが、アジ・ダハーカは転移魔法陣の中に入り、どこかへ転移する。そして、アジ・ダハーカは跡形も無く消え去ってしまう。

「なっ...クソッ」

思わずそんな言葉を吐き捨ててしまうじん

「逃がしちゃったね...」

フリートも悔しそうな顔をする。

「俺も魔法を出せなかった...。次こそはぶっ潰す...。」

と、マギルヴスはアジ・ダハーカに対する殺意を高める。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る