第7話 生まれた街に再び住んで
ところで、今回、自分の生まれた街でしばらく仕事をすることになったのだけど、「帰省先」の家、つまり両親の家には住んでいない。
両親と私では生活時間が違う。
私の両親は、夜九時になれば寝てしまうような人たちだけど、私は日付が変わるまで起きている。両親が寝てしまった時間には、廊下を歩くときの足音にも気をつかうし、テレビを見ることもできない。まあ、テレビを見たければスマホでイヤホンをして見ればいいのだけど、そこまですることもないか、とも思うし、イヤホンをしていたら親が声をかけてきたときに気づかないということもある。
両親も「後期高齢者」になって、その生活リズムにはさらに気をつかわなければいけなくなった。
それだと制約も多いし、とくに夜に仕事があるときには不便なので、マンションに部屋を借りて、ときどき両親の顔を見に行くという程度にしている。
そのマンションのある場所はアライ池の住宅地よりさらに後に開発された住宅地だ。
私の小学校低学年のころにはただの広大な空き地だった。現在ならば、そうやって開発中の土地は柵やフェンスで覆うのだろうけど、当時はそんなものはなかったから、その場所は私のような地域の小学生たちの遊び場になっていた。
そこで遊んでいる小学校のころの私に「そこには十階建てのマンションができて、四十年後の君は、そこのマンションに部屋を借りて住むんだよ」などと言っても信じなかったに違いない。たぶん、その反応は
「なんでこんないなかに十階建てのマンションなんかできるんだよ? 十階建てのビルなんて駅前にだってないぞ!」
というものだっただろう。
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