第3話

「1年全員揃ったな!」

「「「はいっ!!!」」」

「私は今日の魔術の試験官をする東堂葵だ。一応A級魔術師だ。」


A級という言葉に生徒たちの動揺が見て取れる。それもそのはず、A級ともなると世界魔術師順位でみると1000位以内に確実に入っているランクだからだ。そもそもA級になるには上級以上の魔物の単独討伐が必須になってくる。


魔物のランクは下から、下級、中級、上級、超級、帝級、神級の6つのランクがあり、中級まではB級魔術師でも倒せるが上級以上は訳が違う。これまでA級に昇格しようと挑んだB級以下の魔術師たちが何人も死んでいる。それだけ魔物というものは恐ろしいのだ。


「なぁ湊。お前はどのくらいの力を出すんだ?」

「ん?あぁ、考えてなかった。」


葵のA級発言に対してもはやなんとも思っていない2人は呑気に試験のことをぼんやりと考えていたのだった。


「それでは、試験内容を確認する。この試験では学園一大きいこの第一練習場で、新入生全員同時にバトルロワイヤルをしてもらう。ルールは簡単、戦闘不能になるか、負けを認めた時点でその生徒は観客席に移動してもらう。動けなくなった生徒に対しては我々試験官が対応する。今年の新入生は120人のため、目安としてはAクラスからFクラスまでそれぞれ20名ずつとし、それぞれ最後まで残った生徒が上のクラスに入ることになる。説明は以上だ。何か質問のある者はいるか?」


すると、1人の生徒が手を挙げた。


「質問があります。」

「なんだ?」

「個人のMDA(対デーモン武器)は使用しても良いのでしょうか。」

「良い質問だ。もちろん許可する。君たちの全力を是非見せてくれたまえ。」


生徒たちが騒ぎ出した。無理もないだろう。本来MDAは魔物と戦う時にしか使用許可が下りない。もっとも、湊のように一流の魔術師は制限がないが。


「おい湊。お前MDA使うのか?」

「いや、あれは使わない。代わりの物を学園長が用意してくれた。まぁ、用意したのは学園長じゃない気がするけどな。」

「あぁ、国か、」

「あぁ、恐らく、な。」


「それでは散らばれー」

「カウントダウン、5、4、3、2、1、始めっ!」


ドーーン!!

乱闘、いや、試験が開始した。湊は樹と一緒に行動するよう事前に決めていた。ルールには共闘は禁止とはないからだ。湊の他にも何組か共闘している人の姿を見る。


「なぁ湊、」

「ん?」

「一発かましてもいいか?」

「……はぁ、言うと思ったよ。まぁ人数多いし減らしても大丈夫でしょ。」

「よっしゃ!んじゃ行くぜ、《ファイアストーム》」


ドドドーーーンン!?!?!

凄まじい炎により訓練場にクレーターができた。


「ほぉ?面白い。」

葵は眉をひそめて樹と湊を見ていた。


残りの生徒はピッタリ20名だった。

しかし試験官の終了の合図は無い。どうやら最後の一人になるまで続けるようだ。


「なぁ湊、俺と勝負してくれないか?」

「……。それはちょっとした遊びってこと?……それとも使徒に挑むと捉えていいのか?」

「……後者だ。」


湊は周りを見渡した。残りの生徒は20人を切っていて、脱落した生徒は周りで起こっているバトルを応援している。ただ1人、葵だけはしっかりとこちらを凝視していた。


湊の雰囲気が変わった。空気が揺れる。いや、震えている。


「……良いだろう。」


その空気に当てられた生徒はほとんどが気絶した。意識があったのは、樹と葵、それと訓練場に残っていた人の中の数人程度だった。みんな湊のことをじっと見ていた。その目には恐怖が浮かび上がっていた。それもそうだろう。湊はここにいる誰よりも、いやこの世に存在する何者よりも強い。伊達に序列一位では無いのだ。当初は正体を隠すと決めていたが、今、彼の中にあるのは最強としての立ち振る舞いだけだった。


「では始めようか。」

「……」ゴクリ


樹は圧倒されていた、自分も強いと思っていた。だが目の前にいる親友は優しい人ではなく最強の人物、いや、神そのもののように感じた。「これ程とはな。」心の中で呟いた。


「《詠唱破棄》《サンダードラゴン》」

「!?《魔力障壁》」


湊の言葉で晴れていた空が暗くなり1匹の龍が現れた。樹も咄嗟に防御しようとしたが、龍の放ったサンダーブレスによって意識を失った。


樹が見た湊の目には怒りが見えた。その時理解した。やっぱり奥さん居ないから拗ねてんじゃねえか、と。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


葵は驚いていた。樹はもしかすると自分よりも強いかもしれないと感じていたが、湊からは何も感じることが無かった。いや、感じることが出来なかった。


「まさか、これ程とはな。」


誰に言うのでもなく、気づいたら独り言を呟いていた。

それにあの魔法、あれは序列一位しか使うことの出来ないオリジナル魔法ではないかと予想していた。世界には使徒の情報を解析する研究所がいくつもある。その中でも序列一位と二位はいつも一緒に戦っていて情報も意外と多いことからダントツで研究材料となっていた。その中で、アメリカのとある研究所で序列一位の使うドラゴンを召喚するような全属性魔法が先日発表されたのだ。詳しい魔術式は分からないとの事だったが、映像で見たものと、先程湊がやった魔術はあまりにも酷似していた。

そこまで考えてふと思考が止まる。


「まて、私の予想が正しいとすれば、彼は、いや、あの御方は」


「「「第一使徒様」」」


葵の言葉と今にも倒れそうな少女2人の声が重なった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

序列1位の魔術師は学園生活を可愛い嫁と謳歌したい はる @harukun48

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ