ドラマーIN US#10 それぞれの卒業

矢野アヤ

それぞれの卒業

 誰もが非日常を送った2020年からの数年間は、我が家にとってもいろいろな意味で忘れられない年となった。

 次男は20年に高校を、長男は21年、大学を卒業した。高校では突然、明日から自宅学習と言われ、授業、クラブ活動に卒業旅行と、全てが突然なくなった。そしてクラスメートとも先生とも一度も顔を合わせないまま卒業を迎えた。コロナでまだ全く先行きが見えないなか、先生たちの苦肉の策の詰まった、ドライブスルー卒業式が開催された。 

 式では教師たちのカジュアルさにまず驚いた。ビーチサンダルに短パンを履いた先生が、送り出す生徒に向けて餞の言葉を書いた手書きのボードを掲げ、車で通り過ぎる生徒たちに満面の笑顔を向けてくださっていた。二時間ほどかけてノロノロ進む車のラジオでは、卒業生の名前が読み上げられていた。

 生徒の乗る車の多くには、ド派手なデコレーションが施された。オープンカーやトラックの荷台、車の窓から乗り出す生徒たちの顔は皆輝いていて、湿っぽさは微塵も感じられない。お祭り騒ぎのような式を、皆が精一杯に演出して楽しんでいた。流石アメリカ。四半世紀暮らしていても、まだまだ驚かされることがいっぱいある。

 それとは対照的に、長男の大学の卒業式はオンラインとなったが、哲学科で学び、小難しいことばかりを言っている息子は、式って何?くらいの調子で、参加すらしなかった。親としては多少残念だが、もうとっくにその辺りのことは諦めがついてはいる。本来なら大学四年時にインターンを経て就職、となるのだが、それも叶わなかった。それでも悩むふうでもなく、それならとばかり、暫く日本で働くと言って、コロナで外国人の入国が制限されている日本へ、一人旅立った。

 大学生になった2人の息子が、自宅学習をした一年間。主人と私はと言えば、大きな声では言えないが、思いがけず学生になった息子たちと家族四人での生活が送れる幸せを噛みしめた、緊急事態下の日々だった。その次男も今年の6月には大学を卒業する。これで私達夫婦の子育てもいよいよ卒業を迎える。皆を見倣って、ドライに迎える!(涙・涙・涙)



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