悪役令嬢、ラスボス無人機を召喚する-短編ラストバトル版-

聖龍教会

悪役令嬢、ラスボス無人機を召喚する。

ヴァイオリンの綺麗な音色が荒城で鳴り響いていた。


王座のあった場所には紅く輝いている巨人が跪いており、胸の上にはボロボロのドレスを着た金色の髪を持つ少女がそのヴァイオリンを弾いている。


「来ると思いましたわ、さぁ始めましょう。紅月の下で殺し合いを」


少女は冷静な声色でそう語った。


《モーガン・フェ・ルージュ戦闘モード起動》


この出来事が起こった原因は数時間前に遡る。


第一王子の兄弟殺しだ。

その上その弟君、第二王子の召喚したゴーレムモドキを盗み王国監査局を襲撃したのだ。


第二王子殿と第一王子殿の間で何があったかはわからないがこの少女は最愛の者を失った。


奪った者の命を奪い仇を取ろうとしていた。



第一王子は暴君を討ち取った。

攻撃的で危険な弟を排除したのだ。

彼が王位につけば国は戦乱に巻き込まれるなど誰が見ても明らかであったからだ。


王位継承は弟の婚約のおかげで自分の優位は無く仕方がなかったのだ。


他に方法はなかったのだ。


第一王子は寝室へ押し入ると第二王子の胸に剣の刃を入れるが致命傷を与えられず第二王子は起き上がり戦闘になった。


最初で最後の兄弟喧嘩の結果、私は左腕を切り落とされて弟は死んだ。


その次に弟を支持し、戦争を起こす直前まで焚き付けていた王国監査局局長を殺害した。


不幸なことに少女の父だった。


彼女が私を殺す理由と私が殺される理由は正当にある。


だが少し私は亡き弟のために抗ってみたいと思う。


《ブラックリリー戦闘モー…リミッター解除、直ちにリミッターを再設定してください、機体のメルトダウンまで残り9分です。》


ゴーレムモドキに繋がっているケーブルが赤熱化し、コックピットもジリジリ熱くなってきている。


戦闘の火蓋は向こうが切った。


モーガンは背部のバインダーを射出しこちらへと向かってきたかと思えば周囲の空中に止まると粒子を大量に照射してきた。


「オールレンジ攻撃というわけか…」


あらゆる距離にも対応できる武器、とても厄介なものである。弟はこれを戦争に利用しようとしていた。


私はレバーを前に倒して粒子の柱を避けながら紅き巨人に接近すると腕部の格納式ナイフを展開させてコックピット付近に突き刺そうとするがモーガンのサブアームによって腕を掴まれる。


「あっけないものでしたわ…」


「そうだな…だがな!」


近くに放置されていた大砲を手に掴む。


《強制接続…ワイヤーによる操作可能》


「アハトアハト、そんなアンティークまで使いますのね…」


黒い百合は散った。


紅き魔女によって。

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悪役令嬢、ラスボス無人機を召喚する-短編ラストバトル版- 聖龍教会 @hiryuu1212

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