余談、在原業平について

 今回の話の主人公は在原業平になるはずでした……。

 しかし、蓋を開けてみれば、またもや吉備真備に話を持っていかれてしまう始末。最初のプロットだと業平が大活躍する話を作っていたつもりだったのですが、なぜか真備が。

 業平ファンな方々には申し訳ないので、在原業平についての話を少し書きたいと思います。


 今回のタイトルは『在五』というものでしたが、こちらは在原業平のことなのです。彼は、在原家の五男だから在五と呼ばれていたらしいのです。なので今回のタイトルは、まさに『在原業平』だったのです。


 物語の中でも触れましたが在原業平といえば、阿保親王の息子であり臣籍降下して在原姓となった人です。兄である在原行平も有名ですよね。五男ということで、他にも在原家の人々はいたのですが、歴史上あまり名前が残されていないのでその辺は割愛させていただきます。


 在原業平といえば百人一首の『ちはやぶる』でお馴染みの人です。近年では漫画のタイトルが『ちはやふる』だったのでご存じの方も多いのではないでしょうか。


 そして、業平について外せないのが、平安時代きってのプレイボーイということです。元天皇の孫でプレイボーイ。まるで源氏物語に出てきそうですよね。

 でも、この方は源氏物語の登場人物のモデルにはなっていないのです。話の最初の方にちょろっと名前だけ登場したみなもとのとおるは光源氏のモデルのひとりとされているのですが、こちらは美男子だったのかどうかなど容姿については記録は残されておりません。


 当時のことを書いた史書である『日本三代実録』には、業平のことを『体貌閑麗、放縦不拘、略無才学、善作倭歌』と書かれているそうです(日本三代実録は漢文で書かれている)。今風に訳せば「イケメンで自由奔放、だけど学才はない、でも和歌は上手い」みたいな感じでしょうか。この学才というのはきっとまつりごとに感する才能ってことでしょうね。まさに業平は、絵に描いたようなお坊ちゃんだったのかもしれません。

 ちなみに業平さん、武官としては中将になり蔵人も務めていたことから優秀な人だったはずです。鷹狩りの名手としても知られていたようですし。


 でも、後世の文学の世界ではいいように扱われてしまっていますね。

 伊勢物語では主役の「昔男」のモデルとされていますよね。このせいで、業平本人のエピソードと伊勢物語の創作エピソードが入り混じって後世に伝わってしまい、プレイボーイ業平が誕生したのだと思われます。

 また今昔物語でも、世の中の女をすべて手に入れてやるといった野望を持った男として描かれ、面白おかしく扱われてしまっています。


 このように様々な物語でいじられている在原業平という人物は、みんなに愛された人なのでしょうね。

 業平はエピソード満載な人なので、また物語の中に登場する可能性大です。


 吉備真備のキャラを超える男になってくれることを期待しつつ、次の話へ移りたいと思います。


 引き続き、SANGIをお楽しみください。

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