ひっちのこれがやりたかったシリーズ2

 休日のある日、ひっち過激団はいつものように集まってたむろしていた。

「おれが大嫌いなあいつが廊下でガム噛んでて先生たちに怒られてた。ざまああああああっ! ざまああああああっ! やんちゃぶってさも一軍みたいな振る舞いしてるけど、お前のことをいいと思ってる奴なんていないんだよ! ざまああああああっ! 心からのざまああああああっ! 今日はどうしても伝えたいことがあります」

「切り替え速っ!」

 ひっちのしょうもない話を聞きながら、たまさんがツッコミを入れる。


「そうだね、報告ならひっち過激団の収支報告でもする? ひっちがまた借金増やしたけど」

「シャーラップ! 都合の悪いことは言わないんだたまさん!」

「無駄遣いするからでしょ?」

「お金は使うためにあるんだぞ、たまさん」

「それらしいこと言ったつもりになってるよ」

 たまさんに痛いところを突かれたので、何とかしてひっちが誤魔化そうとしている。

 今更だろう。

 かずやんとだーいしも、もはや何とも思っていない。

「ひっちは物欲に負けているのを言い訳しているだけだな」

「それは言ってやるなぁ」

 だーいしが直球を投げていったので、思わずかずやんが漏らしてしまった。


「それで本題、今日はおっぱいについてお話します」

「普段通りじゃないか」

 ひっちの言葉にだーいしが思わず本音を漏らしてしまう。

「おぼろげながら浮かんできたんです、おっぱいという文字が」

「ひっちはしょっちゅうなんだよなー」

「何も驚くことはない」

 更にひっちが畳みかけようとするも、かずやんとだーいしは何とも思っていない。

 隣で聞いているたまさんだってそうだ。


「おっぱいの良さが全然分からない男、ガチで危機感持った方がいいと思う」

「それこそが、お前がどうあがいてもモテない理由だと思う」

「モテないって! これまでに一度もおっぱいの感触を想像してなかったら、揉みたいと思わなかったら、巨乳のガン見すらしたことなかったら厳しいって! 明らかな事実だと思う」

「元ネタ的にひっちが言われる側なんだよなあ」

 ひっちの熱のこもった自己主張をかずやんが鼻で笑う。

「そんなおっぱいのことを讃える歌を歌いたい」

「展開が謎過ぎるよひっち」

 もはやひっちの主張は歯止めが効かないらしい。

 たまさんの呆れ顔などもはや眼中にないようだ。


「AカップBカップCカップDカップEカップFカップGカップHカップ 八組のバストから選ぶとしたら 君ならどれが好き~?」

「F!」

「Fカップ好きは自分に素直 思ったことを隠せない」

「でも正直な気持ちはとても大事! 自信を持ってくださ~い」

「次、E!」

「Eカップ好きは正解に近い 最も限りなく正解に近い」

「でもEに満たない女性も多いので 油断は禁物で~す」

「じゃあたまさん、D!」

「Dカップ好きはだいぶお利口 Cカップ好きよりいくらかCOOL!」

「そこまで現実分かっているならもうひと頑張りで~す」

「じゃあかずやん、C!」

「Cカップ好きは謙虚過ぎます 好みとしては控えめサイズ」

「掌に収まるサイズがいいとかそんなの微妙過ぎ~」

「おっぱいチョイスのセンスでその後の人生は大きく左右されます」

「まるで左右のおっぱいのように」

「じゃあ、G!」

「Gカップ好きは大胆不敵 おっぱいチラ見じゃ我慢が出来ない」

「おっぱいにかける情熱は本物で~す! 大事にしてくださ~い!」

「じゃあ、H!」

「Hカップ好きはイケイケドンドン 周囲の意見はもう聞こえない」

「やっぱりおっぱいはパワーだぜ! 突き進んでくださ~い!」

「最後だーいし!」

「Aカップ好きとかBカップ好きとかおっぱいに興味がないって人は」

「きちんとおっぱいを見て下さい! 女性の敵ですよー」

「いろんなおっぱい見てきたけれど 最後に私が言いたいことは」

「やっぱりおっぱいはサイコー! いっぱい愛でてくださ~い」

「らーらら らーらら らーららららら、らーらら らーらら らーららららら」

「らーらら らーらら らーららららら、らららららららららー」


 歌っているひっちは完全に一人の世界に入り込んでしまっている。

 ある意味トランス状態と言っても差し支えないだろう。

「これ以上はどうにもならないぜ。撤収、撤収~!」

「「了解!」」

 かずやんが珍しく中佐らしい態度を取り、二人を撤収させる。

 こうして彼らの何気ない一日が過ぎ去っていった。

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