ネコ耳はいいものだ

「皆さん、ミッションのお時間ですよ」

「クリスたそー、今回は誰からなん?」

「ヘススさんからですね」

「ヘスにゃんキター!」

 ひっちがヘススからの依頼が来たので喜んでいる。

 確かに、『マフィアの世界』に足を運ぶとなると久しぶりだ。


「だがなひっち、いくらヘススでも内容によるだろ」

「ちなみにミッションは緊急度1、重要度1、難易度1となっています」

「おおお、バチクソ簡単じゃん!」

 かずやんがミッションの簡単さに驚きを隠せない。

 その隣でだーいしが正気かと言わんばかりの顔をしている。

「それで、僕たちは何をすることになるんですか?」

「詳しくはみんなが来てから話がしたいとのことです」

 たまさんがミッションの内容を聞こうとするも、具体的な話は出てこなかった。

 例え難易度が低いとしても、それはそれで不安感が出てしまう。


「いいじゃん! ヘスにゃんからの頼みなんだからさー」

「そういうことにしとくか」

 ひっちがすごく行きたそうにしているのを見て、かずやんが自分を納得させるかのように呟く。

 そしてひっち過激団は『マフィアの世界』へと向かうこととなった。

 


 ひっち過激団が『マフィアの世界』に着くと、事務所の中でうつむいているヘススの姿があった。

 ヘススは何とも思いつめた表情をしている。

 普段の様子からは全く想像がつかないくらいには深刻な顔つきだ。

「ヘスにゃんどうしたの? 元気なさそうだけど」

「おお、みんな来てくれたか……、聞いてくれるかな?」

 ヘススがゆっくりと口を開き、話を始めた。


「どうしたんですか?」

 ヘススの様子を見て、たまさんも我慢しきれなかったようだ。

「ジョーンがネコ耳をつけてくれないんだ」

「しょーもなー! そんなんで俺たちを呼んだのかよ!」

「ああ、何としてもジョーンにネコ耳をつけて欲しいんだよ!」

 ヘススの話を聞いてかずやんがすっかり呆れ返ってしまっている。

 ごもっともな話だ。


「ジョーンたそならネコ耳もウサ耳もウマ耳も似合うよ!」

「そうだろ、流石ひっち!」

 ヘススの話を聞いて喜んでくれるのは、やはりひっち。

 この二人は色々と気が合うようだ。

「それにしても、ネコ耳つけてくれない相手にどうやってつけてもらうんだよ? 相手にコスプレ趣味があるとかならともかく」

「ジョーンさんにコスプレ趣味はなさそうな気がする」

 かずやんとたまさんが悩ましげな表情を見せる。

 ジョーンがネコ耳をつけてくれる絵が想像できない。


「やはりそのようなお願いをするなら、相手にもそれなりの利益が必要なのではないか?」

「例えば?」

「給与を払っているのだから、そこに特別手当というのはどうだろうか?」

「それジョーンに言ったら即断られたわ」

「もう言ったのか!」

「これはマジ、信じてよだーいし」

 だーいしが驚愕の表情を見せる。

 本人としてはそこそこゲスい発想をしたつもりだったのだろう。

 しかしヘススはその先を行った。


「そこでだ、皆にこちらを手渡しておくから使ってくれ」

 ヘススがひっち過激団にスマホとネコ耳を支給した。

「隙があればジョーンのネコ耳姿を映して欲しい。ベストはネコ耳姿のジョーンを俺の目の前に連れてきてくれることだがな」

 ヘススがこうして道具まで支給してくれるということは、本気度が高い証拠だろう。

 そんな時だった。


「ただいま、買い出し終わったよ……。んっ!」

 普段と違い、ラフな私服姿のジョーンがオフィスに帰って来た。

 ジョーンは見た景色で何かを察したのか、急いでオフィスから出ていった。

「いかん! ジョーンに逃げられてしまう! 追跡するぞ」

「「「「おー!」」」」

「何かジョーンさんに悪いんだけど、いいのかな?」

「これもミッションのためだぞ、たまさん」

「ひっちノリノリじゃん」

 ちょっと気が乗らないたまさんに対してひっちは俄然やる気だ。

 これからジョーンの追跡が始まる。

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