ハイテクな世界

 ひっち過激団はいつものようにひっちの家に集まって遊ぼうとしていた。

「今日は『BPEX』で遊び尽くしてしまおーぜ!」

「久々にやり倒すのもいいかもな」

 ひっちの提案にかずやんも乗り気のようだ。

「と言いたいところなのだが、そうもいかないらしい……」

「どしたのだーいし? ああ、そういうことね」

 だーいしとたまさんの視線の先には、美少女アンドロイドが直立して待ち構えていた。

 もはや既視感しかない。

「おい、ありゃどういうことなんだよ?」

 かずやんも嫌な予感が脳裏をよぎったのか、異様な反応を示していた。


 何と、笑顔でひっち過激団のもとを去ったはずのクリスが帰ってきているではないか。

 そんな中、あまりにもノー天気な男がここに一人。

「萌え~、ぶひ~、しこ~い、えちえちだ~! クリスたそ、おれに会いたかったんだね! 再会を祝して熱いキスを~!」

 ひっちがいつにない素早い動作でキスをしにクリスの方へ飛び込んでいった。

 クリスは余裕で見切って迫るひっちを躱した。

「ずどてん」

 クリスに避けられたひっちはすっころんでしまう。


「あのー、クリスさんですよね? どうしたんですか?」

 たまさんが恐る恐るクリスに質問をする。

「皆さんにディメンションワールドを救っていただきたいのです」

「それ前に聞いたやつじゃん。そもそもさ、俺たちはアダムスを倒したんだぜ」

 かずやんがめんどくさそうにクリスに答える。


「確かにアダムスを倒し、ディメンションワールドに平和が訪れました。しかし」

「しかし?」

「そんなことはなかったぜ!」

「何だと! それに、そのような理屈が通用するとでも思うのか!」

 クリスの言葉にだーいしが嚙みついていた。

 だーいしがこのような反応を見せるとは思っていなかったので、かずやんとたまさんがちょっと驚いている。


「だってだってだって、だってだってなんだもん」

「こらー、だーいし! クリスたそを泣かすんじゃねー!」

 クリスに強い言葉を放っただーいしに、ひっちが怒っている。

 クリスは以前と変わらず嘘泣きをかましているが、ひっちには分からないのだろう。

「クリスたそ、おれたちが悪かった。それで、おれたちはどうすればいい?」

「再びディメンションワールドを救っていただきたいのです。こちらをご覧下さい」

 クリスがひっち過激団にスクリーンを見せる。

 そこには新たなミッションが表示されていた。


「見たことない世界が表示されている……」

「前より多くなってねえか?」

 だーいしとかずやんがスクリーンに表示されているミッションを眺めながら話をしていた。

「分かっていることは、以前よりも状態が悪化していることだけです」

「前よりも大変なことになりそうですね」

 クリスの話を聞き、たまさんが深刻な表情を浮かべていた。


「ということで、皆さん」

 クリスがひっち過激団の全員にそれぞれのセイントウエポンを手渡す。

「よろしくお願いします」

「クリスたそに言われちゃあしょうがない!」

 クリスの万遍の笑みを見て、ひっちは思わず声を上げた。

「また始まっちまうのか、しゃあねえな」

「平穏の時はまだまだのようだな」

 かずやんとだーいしが今一つ納得しきれていない表情で本音を漏らした。


「手始めにこの『ハイテクな世界』のミッション攻略をお願いします。緊急度3、重要度2、難易度3となっています」

「それじゃあ行くぜ! ひっち過激団出撃!」

「「「おー!」」」

 こうしてひっち過激団の新たなるミッションが幕を開けた。



「おー、何か知らないけどハイテクな感じがするなー」

 建物も道もメタリックな色に包まれた景色を見て、ひっちがしみじみと呟く。

「こ、これは何だかすごい予感がする!」

「たまさんやけに嬉しそうじゃん」

「こういうところってやっぱ巨大ロボットとか出てくんのかな? そんな気がしない?」

 かずやんに突っ込まれても気づかないくらいたまさんが興奮している。

 雰囲気としては巨大ロボットが出現してもおかしくはない。


「それはいいのだが、依頼主は一体どこにいるのだ?」

 だーいしが辺りを見渡しながら依頼主を探している。

 人影は全く見当たらない。

 そんな中、ひっち過激団の目の前に謎過ぎる平屋が一軒建っていた。

 現代から見ても古臭い平屋だ。


「あそこで聞いてみるか?」

「怪しい感じがするんだけど、いいのかな?」

 ひっちの提案にたまさんがちょっと心配している。

 危険そうな雰囲気が感じられないのがかえって怪しいと言える。

「あそこでだめだったら他に聞けそうな場所あるか?」

「残念ながら見当たらないな……」

 かずやんとだーいしもひっちと同じ意見のようだ。


「んじゃ決まり。行ってみようぜ」

 ひっち過激団が平屋に近づくと、インターホンをはじめ何かと古い造りになっていた。

「見た目通り古い造りだね」

「アンティークが好きな人が住んでいるということか?」

 平屋の前でたまさんとだーいしがこそこそ話をしている。

「立ち話もあれだからインターホン押すか」

「じゃあ押すぞー!」

 対するかずやんとひっちは随分と乗り気だ。

 インターホンを鳴らし、家の主からの返事を待つひっち過激団。


「待っとったぞ。こっちじゃ」

 声の主は老人のようだ。

 そして、ひっち過激団を待っていたと言う。

「もしかして依頼主の方ですか?」

 すかさずたまさんが質問する。

「そういうことじゃ」

 相手が依頼主であることが分かったので、ひっち過激団は案内されるまま中へと進んでいった。

 床が自動的に地下へと移動し始めた。

 まるで導かれるような感覚にひっち過激団は興奮している。


「す、すげぇ」

「世界の名前に偽りなしだね」

 かずやんとたまさんは驚きを隠せないようだ。

 ひっちとだーいしも同じようにワクワクしている。

 移動した床が止まった場所は、地下の研究施設だった。

 奥から老人の科学者が姿を現す。


「よう来たな、クリスから話は聞いたぞ」

 老人の科学者がひっち過激団を出迎える。

 白髪はともかく、世界観に全くそぐわない下駄とやや黄ばんだ白衣が印象的だ。

「わしの名前は一条、依頼主じゃ。クリスは元気にしとるかの?」

「おお、クリスたそは元気いっぱいだぜ! ん?」

 クリスの話をされて嬉しくなったのか、ひっちがすぐ返事をする。

 そしてひっちは一条博士の後ろに隠れていた女の子の存在に気付いた。

 緑のロングをおさげにしており、ひっち好みの巨乳であることが分かる。

 もちろんウエストやヒップも文句の付け所がない。

 どことなくクリスと似たような雰囲気のある娘だった。


「いやっはー、カワイ子ちゃんはっけ~ん!」

 たまらず飛びつこうとするひっち。

 しかし、ひっちは何にも当たることなくその場に倒れてしまった。

「マミィは電子生命体だから実体がないぞ」

「お、おうふ。床に顔ぶつけちゃった」

 ひっちはメタリックな床面にモロに顔をぶつけてしまった。

 痛いのも当然だろう


「マ、マミィです。よろしくお願いします」

 マミィは深くお辞儀をすると、すぐに一条博士の背中に隠れてしまった。

 極度の恥ずかしがり屋なのだろう。

「この子はうちの助手のマミィだ。ここでアシスタントをしてくれている」

「ああ、スーパープリチーボインちゃんなのに体がないだなんて……」

 ひっちはマミィに実体がないことをただただ嘆いていた。

 行く世界が変わろうと、スケベ心は変わらないのだろう。


「それよりもだ」

「本題ですね」

 一条博士が話を変えてきたので、たまさんがミッションの話をするのではと食い気味だ。

「本題の前にわしの発明を見てくれ」

 そう言って一条博士はマミィと一緒に準備をし始めた。

 一体何が出てくるのだろうか。

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