アジト強襲

「結局こうなっちまうんだな」

「だねー」

 かずやんとたまさんがため息をつきながら話をしていた。

「ハア、ハア、『古代機械の歯車』を手に入れさえすれば、すべて終わる」

 だーいしが息を切らしながら意気込みを語っていた。

 女装に力を入れ過ぎたのだろう。

「フー、フー、そうだな。おれたちがお宝を手に入れれば夜の街のカワイ子ちゃんがわんさか寄って来てだな……」

 ひっちもだいぶ疲れがたまっているのか、肩で息をしながら返事をしている。

 女装に疲れてしまっているのだろう、無理もない。


 ひっち過激団がやって来た場所には、博物館として使われていたであろうやや古ぼけた建物がそびえたっていた。

「こういうところだからな。出て来るのはごろつきか幽霊かってところだな」

「どっちも嫌なんだけど。後考えられるのはガメツィーかな?」

 かずやんとたまさんがだーいしとひっちをよそに話をしていた。

 不気味な場所に来た割には平常心のひっち過激団。

 これも今までミッションをこなしてきたからなのだろう。


「こういう所に女の子と来たら楽しいのかもしれんな」

「みんな、何かが近づいて来る!」

 ひっちのたわごとをよそに、突然だーいしが注意を促した。

 向かって来る足音が大きくなってきたので、慌ててひっち過激団は身を隠し始めた。

 すると、ガメツィーの戦闘員が姿を現した。

 なぜか右手にムチを携えている。

 建物周辺の見回りに当たっているのだろう。


「相変わらずきめ―なあ、見れば見るほど」

「面妖なことよ」

 かずやんとだーいしが話をしながら、ガメツィーの戦闘員を目で追いかけていた。

「とっ捕まえるか?」

「尾行しようよ。前みたいに喋ってくれなさそうだし」

「たまさん、そんな趣味があったなんて」

「んなわけないでしょ!」

 かずやんと真面目な話をしていたのに、ひっちが茶々を入れてくるのでたまさんが小声でツッコミをかました。


 ガメツィーの戦闘員を尾行したひっち過激団の視線の先には、建物の入り口が見えた。

 ここがアジトとして使われているのだろうが、今のところは普通の廃墟にしか見えない。

 これからどのようにして潜入しようかとひっち過激団が思っていたその時だった。

 突如としてアジトの中からガメツィーの戦闘員たちが現れ、何やら外を捜索し始めた。

 何故かみんなしてムチを装備している。


「俺たちが追ってたの、バレてたのか!」

「もしかして誘い込まれた?」

 かずやんとたまさんがそれぞれ驚きを隠せない表情を見せていた。

「誘われるなら巨乳のカワイ子ちゃんがいいよな」

「ある意味冷静だな」

 能天気なことを言っているひっちにだーいしがあきれ声でコメントをしていた。

 だがしかし、事態はそうもいかない。

 見つかって包囲されるのも時間の問題だろう。


「どうする?」

「囲まれる前に打って出た方が良さそうだな」

 かずやんとだーいしがそれぞれのセイントウエポンを持ち、身構えていた。

「おれが指示を出そうと思ってたのに、もー」

「決まっちゃったね」

 ひっちとたまさんも仕方なさそうにかずやんとだーいしに続く。

「おらあああっ!」

「はああああっ!」

 かずやんとだーいしがガメツィーの戦闘員たちの前に躍り出た。


 何の作戦もない強襲だったが、ガメツィーの戦闘員たちは突如として現れたかずやんとだーいしに不意を突かれる形となった。

 かずやんはセイントサイズ、だーいしはセイントサーベルでガメツィーの戦闘員たちに切り込んでいく。

 最初は勢いでガメツィーの戦闘員を切り伏せていたのだが、相手のムチによる集団戦法に押され徐々に勢いが失速していった。

「くっそ、鬱陶しいなあ。いったあ、やりやがったな!」

「かずやん大丈夫?」

「大丈夫だけど、ありゃあ結構厄介だな」

 ムチで打たれたかずやんが後退出来るようたまさんが援護する。

 隣では同じように後退するだーいしをひっちが射撃で援護している。


「みんな、どうする?」

「攻勢に出たいんだけど、相手が建物を背にしてるからなあ。変にひっち砲とか撃ってお宝ごと破壊するわけにもいかないし……」

「おれがそんなに悪いのか!」

「そういうわけじゃ」

 ひっちとたまさんが作戦について話をするが、たまさんがひっちを怒らせてしまう。

「突っ切ってこっちが建物を背にするか?」

「荒業だが、やってみる価値はありそうだ」

「そうすりゃひっち砲もスパイラルショットも撃ち放題だな」

 かずやんとだーいしがまたも二人で作戦を話していた。


「それは良さそうだな、そうと決まればひっち過激団突撃!」

 ひっちが号令を出し、ひっち過激団が敵陣をかき分けながら突っ切って行く。

 幸いにも特に被害がなく建物側へと移ることが出来た。

「これで思いっきり攻撃できるな。ハッハッハ、流石はおれ」

「ひっちが思いついたわけではないのだがな……」

「まあまあ。これで思いっきり反撃できるね、スパイラルショット!」

 一人偉そうにしているひっちにだーいしが嫌味を言い、たまさんがそれをなだめていた。

 そしてすかさずたまさんがスパイラルショットをガメツィーの戦闘員に向けて放つ。

 放たれた螺旋の光弾が密集している相手をまとめて撃破していく。


「俺も続くぜ! デス・スラッシュ!」

「ひっち砲発射! ボキューーーーン!」

 かずやんとひっちも立て続けに攻撃を加えていく。

 デス・スラッシュの斬波とひっち砲の光芒がガメツィーの戦闘員を粉砕していった。

 健闘の甲斐あって、ガメツィーの戦闘員を撃破することに成功したひっち過激団。


「やったな。よし、そいじゃ帰ろう!」

「いやいや大佐、お宝を見つけないと」

 ひっちとたまさんがプチ漫才のようなやり取りをしている中、かずやんとだーいしが『古代機械の歯車』を探していた。

「ひっちとたまさんも探してくれよ!」

「手掛かりなしだと時間がかかるかもしれんな」

 かずやんとだーいしがお宝探しをしていたので、ひっちとたまさんも慌てて探し始めた。

 建物の中は薄暗く、不用意に歩くと頭をぶつけたり転んだりしてしまいそうだ。


 暗がりの中、ひっち過激団は真っ黒な箱とカギを見つけた。

「おお、お宝発見!」

「ひっち、罠かもしれんぞ!」

「そんならおれが開けちゃうもんね」

 ひっちがだーいしの制止を聞かずに箱のカギを開けた。

 すると、中から古ぼけていながらも不思議な輝きを放つ歯車が入っていた。

 これが『古代機械の歯車』なのだろう。


「やった、お宝じゃん!」

「こんなにあっさり手に入るなんて……」

「これ見せびらかしても女の子にはモテなさそう……」

 かずやん、たまさん、ひっちがお宝を目にして思い思いの感想を口にした。

「皆さんお疲れ様です、お宝が手に入ったみたいですね」

「おお、クリスたそ! やったぞ!」

 クリスの声が唐突に聞こえてきたので、ひっちが喜ぶ姿をん見せる。


「早速ですが、これから皆さんを転送します」

「お宝をキサラヅさんに渡さなくていいんですか?」

「大丈夫です、私が何とかします」

「前回もそうしてくれれば良かったのに……」

 たまさんの心配をクリスがさらりと解決してしまったので、たまさんは前回のことをついつい愚痴ってしまった。

 それにしても、クリスが転送を急いでいるのが気になるところだ。

 ひっち過激団はクリスの真意を突き止めるべく、転送されていった。

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