古代機械の歯車を入手せよ
「さーて、次回のミッションは『オカルトな世界』でございまーす!」
クリスが何故かノリノリで次のミッションを紹介していた。
「ってことはババ……、じゃなくてマダムか?」
「はい、そうですよ」
「胃が重たい」
ひっちがマダム・キサラヅのことを思い出し、苦しそうな表情を浮かべる。
「詳細はどうなっていますか?」
「緊急度3、重要度3、難易度3となっています。おそらく前回と似たような内容ですね」
たまさんが念入りにミッションの確認をしている。
「たまさん一人で行ってくれよ~、マダムに気に入られているみたいだし」
「そういうわけにはいかないよ」
かずやんが投げやりな反応を見せるが、たまさんもたまさんで淡々と切り返す。
「ああいった雰囲気はあまり得意でないな」
だーいしも珍しく乗り気でない表情を見せている。
この展開はクリスにとってよろしくない。
「バーが拠点ということは、カワイ子ちゃんがいるかもしれませんね」
「この前行ったときはそんなことなかったぜ」
クリスの意見にかずやんが反論を返してきた。
(余計な一言を……)
クリスは何としてもひっち過激団を『オカルトな世界』に向かわせたい。
「ああいった夜の街は人の出入りが激しいですから、カワイ子ちゃんがやって来る可能性は十分にあると思うのですが……」
クリスが何とかしてひっちの琴線に触れるよう誘導している。
「何! カワイ子ちゃんがいるだと!」
「ひっちさん、目の前にある袋とじを開けなくていいんですか?」
「開ける! 絶対開ける!」
クリスが適当な例えをひっちにぶつけ、強行突破を図った。
それに引っかかるひっちもひっちなのだが。
「そうと決まれば、ひっち過激団出撃だ!」
「これも
カワイ子ちゃんに会いに行くと息巻くひっちを見て、だーいしがため息をつく。
こうしてひっち過激団は『オカルトな世界』に向かって行った。
「今回ばかりは少々無理やり過ぎましたかね……」
クリスは一人反省会を開いていた。
「もっとさり気なく、もっと確実に誘導したいものです」
クリスの顔には不適な笑みがこぼれていた。
己の技に磨きをかけるべく余念がない。
「どこだー、カワイ子ちゃんはー」
「相変わらず現金だな、ひっちは」
カワイ子ちゃん探しに躍起になっているひっちを見て、だーいしが呟く。
「あらー、みんな揃ったわね」
声がする方をひっち過激団が向くと、そこにはマダム・キサラヅの姿があった。
「あいよー」
「お世話になります」
かずやんとたまさんがマダム・キサラヅに返事をする。
「立ち話もあれだから、中にいらっしゃいよ」
マダム・キサラヅがひっち過激団を『パピヨン』に迎え入れた。
ひっち過激団は『パピヨン』の中に入った途端嫌そうな顔をした。
やはりお店の酒臭さとマダム・キサラヅの香水臭さには耐えられないようだ。
「今回はこのオーパーツ、『古代機械の歯車』を探して保護して欲しいの」
マダム・キサラヅが写真をひっち過激団に見せる。
「これなのか?」
「どうしたんだよ、ひっち?」
「こんなん手に入れて女の子にちらつかせてもモテなさそう」
「そういう問題じゃねえだろ!」
モテるかどうかしか考えていないひっちにかずやんがツッコミをかます。
「こっちが先に押さえられればいいけど、『ガメツィー』が先手を打ってきているかもね」
「このオーパーツにも不思議な力があるのですか?」
「噂では古代兵器のパーツなのではと言われているわね」
たまさんが真面目に話を進め、マダム・キサラヅもそれに答える。
「んでさー、カワイ子ちゃんは?」
「どうしたのさ?」
「バーに新しく入ったカワイ子ちゃんは?」
「うちの従業員に変わりはないよ」
「え?」
マダム・キサラヅの返答にひっちが凍りついてしまう。
「嘘だ、クリスたそが嘘をつくなんて……。そんな理由」
「依頼をこなして欲しいからだろうなー」
うろたえているひっちにかずやんが後ろから声をかける。
「それはそうと、調査してきてよ。『古代機械の歯車』の在り処をさ」
「「「「はーい」」」」
マダム・キサラヅに言い渡されたひっち過激団は、『パピヨン』を出て大通りを目指す。
道行く人に聞き込みを行っても、知らぬ存ぜぬのオンパレードだ。
情報をつかめそうな予感が全くしない。
「一向に先が見えぬな」
「エロビデオ、おっぱい、淫乱娘……。えーと」
「ひっち、どうしたのだ?」
「エッチなしりとりしてた」
「意味が分からん」
退屈過ぎて変なことし始めたひっちをだーいしが一閃した。
「なあ、なんか嫌な予感がするんだけど」
「気のせいですよ~」
かずやんとたまさんも何だか不穏そうな雰囲気を見せていた。
かずやんの嫌な予感というものが当たらなければいいのだが、果たして。
「はーい、ひち子でーす」
「かずよでーす」
「てへっ、だーちゃんです」
「た、たまみです」
「「「「四人そろって、ひち子過激団どぇーす!」」」」
ひっち過激団は再び『パピヨン』でひち子過激団として勤務していた。
何故断らないのか、それとも断れないのか、誰も知らない。
「結局こうなるのかよ」
かずよがぽつりと呟く。
やはり嫌な予感というものは当たるのだろうか。
「さあさあ、ひち子ちゃんのパンチラショータイムよ~」
そんなかずよの心配をよそにひち子がドレスのスカートを捲し上げ、客にパンツを見せつけていた。
暴走っぷりが凄まじい。
「ほれほれー、ほれほれー」
「やだ、なんてはしたない」
「たまちゃん、お手手の間に隙間が出来てるわよ? どういうことかしら?」
たまみが両手で顔を隠すものの、手と手の間に隙間があった。
だーちゃんが目ざとく指摘していた。
「だーちゃんのいじわる、そんなつもりじゃないもん」
「相変わらずムッツリねえ、たまちゃん」
「ふえーん、お家かえりますー」
「また始まっちまったよ」
かずよが一人冷静にその場を眺めていた。
ひち子がパンチラに勤しみ、だーちゃんとたまみが三文芝居のようなやり取りをする。
そんな摩訶不思議な光景がかずよの視界に広がっている。
「汗水たらしてパンチラしてるひち子の気持ちが分からないの!」
「まるで分からないですー」
「チラじゃねえんだよモロなんだよ!」
かずよが渾身のツッコミをかます、しかし誰も聞いていない。
それにパンチラをしているひち子の気持ちなど分かるはずもない。
怒っているだーちゃんだってきっと分かっていない。
ひち子過激団が『パピヨン』でドタバタを繰り返している、そんな時だった。
一人の来客が『パピヨン』のドアを開く。
「やあ、マダム。焼酎水割りを一つ」
「あらー、中野さん。じゃなかったミスターN」
ミスターNがやって来た。
ひち子以外のメンバーがこっそりとミスターNの一挙一動を覗いていた。
「そうだ、マダム。例のお宝の在り処が分かったよ」
「さっすがね~」
マダム・キサラヅがミスターNにさり気なく焼酎水割りをサービスしていた。
そしてミスターNもさり気なく資料をマダム・キサラヅに手渡す。
「確かに受け取ったわ。それはそうと、あの子どう思う?」
「デュフフフ、可愛いじゃないか」
ひち子のパンチラに興奮するあたり、ミスターNは相変わらずやべー奴であることが伺える。
「今日はこれからどうするの?」
「今日は熟女のストリップショーに行くのさ」
マダム・キサラヅの質問にミスターNがさらりと言ってのける。
そばで聞いている三人にはミスターNの性癖が全く理解できない。
「ちょっとくたびれたボディラインがそそられるんだよね。それと何て言うのかな、加齢臭ってやつなのかな? あのかぐわしい香りがたまらないのさ。君たちにも分かる日がやって来るよ」
「分かりたくねえよ!」
かずよが間髪入れずにツッコミをかます。
ごたごたがあったとはいえ、『古代機械の歯車』についての情報を入手することが出来た。
ひち子過激団はまたひっち過激団として現地へ向かうこととなる。
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