決戦!アダムス(前)
「皆さん大変です! 緊急ミッションが発見されました!」
帰ってきたひっち過激団に、クリスがいきなり話を始めた。
どうやら切羽詰まっているのだろう、クリスにしては珍しく焦りが伺える。
「急すぎてびっくりしたぞ、クリスたそ」
ひっちが余りにものほほんとした態度でクリスに言葉を返す。
「緊急ミッション? どういった内容なんですか?」
事が重大なのだろうと思いながら、たまさんがクリスに確認する。
「レイドさんからの依頼です。重要度5、緊急度5、難易度5となっています。何でも管理者を名乗る『アダムス』なる者が現れ、労働組合を弾圧しているようです。彼らの救済が目的となります」
「とうとうレイドたちは目をつけられてしまったというわけか」
だーいしがレイドたちに思いを馳せながらしみじみと呟いた。
「それにしても、今までより度数が高くないか?」
「ボスみたいなのが出て来るってこと? だとしたら難所だね」
かずやんとたまさんがそのミッションの難しさに言及していた。
確かにひっち過激団は難易度5のミッションを今までしたことがない。
「だが、弾圧を受けている彼らを放っておくわけにもいかんな」
「せっかくここまで来たのに台無しになっちまうのは嫌だぜ」
だーいしとかずやんが思い思いの言葉を口にする。
その発言からは力強さを感じさせる。
「そうだね、行こうよひっち!」
「おおそうだ、みんな行こう! ひっち過激団突撃だ!」
たまさんとひっちも気合十分だ。
ひっち過激団は勇み足で『奴隷労働の世界』へと向かって行った。
「今までで一番危険なミッションかもしれませんが、無事に帰ってきて下さい」
クリスはただ彼らのことを祈るしかなかった。
『奴隷労働の世界』にやって来たひっち過激団を待ち受けていたのは、弾圧に怒りを覚えた労働組合の面々だった。
ひっち過激団は彼らの集会場所に飛ばされてきたが、その怒りと苦しみの声が渦巻く現場に居合わせてしまった。
ひっち過激団の誰もが皆、その緊迫感に飲まれそうなその時だった。
「ちみたち、来てくれたんだね。嬉しいよ」
「レイド! 一体どうなってんだ?」
「労働組合が会社の目の敵にされていてね、彼らは今にも武器を持って対抗しようというんだ。何とかなだめようとしているのだけれど、難しいだろうね」
レイドがびっくりしているひっちに説明をしていた。
「革命前夜といったところか」
「戦うって言っても、武器とか準備出来てんのか?」
だーいしとかずやんが労働組合を心配しているのが伺える。
「食糧は一応準備出来ているけど、武器がね……」
「戦うにしても心もとないですね」
「それでちみたちを呼んだんだ」
レイドが正直に現状を話してくれた。
そして、それを聞いたたまさんが頭を悩ませている。
「こうなれば大将首をとるしかあるまい。本陣に向けて決死の突撃、かつて真田信繫が大坂夏の陣で行ったように華々しく……。そして我らは悲劇の英雄としてその名を後世に残すことに」
「それだとミッション完了できないんだよだーいし」
だーいしの妄想が暴走している中、たまさんが淡々とツッコミを入れていく。
「アダムスって奴がどんなのかは知らないけど、話を聞いてくれないなら倒しに行くしかないんじゃね?」
「正直ここまで弾圧されている状態で話し合いってのは現実的じゃないな……」
ひっちとかずやんも戦う方を選択し、支持している。
「ちみたち……」
「レイド、しんどい方を選んだのは分かってる。でも、ここを乗り越えなくちゃ何にもならない気がするんだ」
ひっちが珍しくレイドを説得していた。
「おい、ひっちがあんなこと言ってるぞ」
「明日は大雨だな」
ひっちの言葉を聞いて、かずやんとだーいしがそわそわしていた。
確かにひっちらしくない話をしているが、もはや組合員たちの怒りは頂点に達している。
革命は時間の問題となっていた。
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