ひっちのこれがやりたかったシリーズ1

「おっ、だーいしとたまさんじゃん。どうしたんだ?」

 かずやんがだーいしとたまさんを見つけて、手を振っていた。

「ひっちから呼び出されてね」

「俺も。今日はミッションじゃないはずなんだけどな」

「何なんだろうね?」

 たまさんとかずやんがお互い不思議そうな顔をしていた。


「ひっちは緊急事態でもしょうもないことでも、呼びたくなったらとにかく呼ぶ。だからどのようなことかは聞いてみなければ分からん」

「それがひっちという奴なんだよな」

 だーいしの説明にかずやんが心底納得している。

 そして三人はひっちの家に着いた。


「おお、みんなよく来てくれた!」

 ひっちがいつも通り嬉しそうに三人を迎え入れた。

「大佐、今日は一体何をするの? 『BPEX』でもする?」

「違うんだ、たまさん。今日は別のことがあってな」

 ひっちが一人楽しそうな顔をして答えていた。

 一体何が始まるのか、三人には何も分かっていない。


「もったいぶらないで話してくれよ、ひっち」

「そうだな。おれたちの掛け声って『オー』だよな」

「それがどうしたのだ?」

 かずやんもだーいしも不思議そうな表情を浮かべてひっちに話しかけている。

「掛け声を変えようぜ! 『オー』だけじゃ物足りないんだよ」

「クソどうでもいいんだけど」

 ひっちの提案に冷め切った表情でたまさんが答える。


「ひっちかげきだ~んファイオーファイオーがやりたいの! やりたいの!」

「ひっち、何に影響されたのさ?」

「『アワ娘』だよ『アワ娘』。おれはバンテーンちゃんとビザルサスーンちゃんが好きだ!」

「見事に巨乳キャラばっかりだね」

 どうやらひっちは某人気ソシャゲに強く影響されているようだ。

 たまさんをはじめ、やっぱりかという表情を見せる三人。


「ファイオーファイオーしたいの! し~た~い~の~!」

 ひっちが三人の目の前で駄々をこね続けていた。

「なんであんなことに固執してるんだよ、ひっちは」

「こだわりが異常である」

 かずやんとだーいしはひっちの強いこだわりに対して全く理解できずにいた。

「そうなんだけど、ひっちってそういうところあるじゃん」

「それで納得させられちまうのがひっちなんだよなぁ」

「余計なこだわりがひっちの真骨頂なのかもしれない」

 たまさんの一言で妙に納得させられてしまうかずやんとだーいし。

 そうだった、目の前にいる奴はそういう奴だったなと。

 三人は仕方なくひっちに付き合うことにした。


「ひっちかげきだ~んファイ!」

「「「オー」」」

「ファイ!」

「「「オー」」」

「むむっ、声が小さいではないか!」

 ひっちが三人に指摘している。

 三人にはまだ照れがあるのだろう。


「よし、もう一回だ! ひっちかげきだ~んファイ!」

「「「オー!」」」

「ファイ!」

「「「オー!」」」

「これだよこれ! おれはこれがやりたかったんだ!」

 自分のやりたいことをやってひっちはひとまず満足していた。

 ただ一人で満足しているので、他の三人は置いてけぼりだ。


「あー終わった終わった。何の意味も無かったな」

「『オー』で問題ないね」

「全くである」

 かずやん、たまさん、だーいしは用が済んだのでとっとと帰ってしまった。

「そいじゃもう一回やろうぜ、ってあれ?」 

 ひっちが振り返っても、そこには誰もいなかった。

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