ひっち過激団ついにリア充に!?

「今日は何して遊ぶよー?」

 ひっちが三人に元気よく問いかけていた。

 ゲーセンでたむろしているひっち過激団。

 せっかくの休日に何して遊ぼうか、ひっちは心をときめかせながら考えていた。

 そんな時だった。

 見たことのある美少女四人組の姿がそこにあった、SAMEの四人だ。


「おい、マジかよ!」

「何という予想外!」

「こういうことってあるんだ」

 かずやん、だーいし、たまさんが思い思いのリアクションを見せる。


「んー、清華たそ。ナイスおっぱい」

 そんな中でひっちだけがマイペースな反応を示していた。

「あー、私たちが一番乗りだと思ったのにー」

「よりによって、あの人たち」

 明乃と真里亜がひそひそと話をしている。

 何となくだが、このままずっと対面しているだけでは気まずい。

 ひっち過激団の誰もがそんなことを思っていた。

 この男を除いて。


「やあやあ清華たそ、せっかくだから一緒にゲームをしようではないか!」

 ひっちの一方的でかつ堂々たる宣言に、他の三人はハラハラしていた。

「なーにー、お誘いってこと? もうちょっと上手に出来ないのかな?」

 清華がひっちに対してやや挑発的な言葉で仕掛けてくる。

「清華たそ、おれと『ぽにょぽにょ』で勝負してもらうぜ。負けた方は……」

「負けた方は、スイーツをおごるってのでいきましょ!」

 ひっちは条件を付けて清華と遊ぼうとしてた。

 だが、先に清華がノリでルールを決めてしまった。


「むむっ、清華たそ。先手を取ってきたか! おれが勝ったらそのぽにょぽにょおっぱいを堪能しようと思っていたのに」

 ひっちはやはりやらしい考えを前面に押し出すプランだったようだ。

「おい、お前らも何とか……ってあれ?」

 ひっちが他の三人に声をかけようとするも、すでに三人の姿はなかった。

「ここはみんながいかに楽しむかなんだよ、ひっち」

 たまさんがひっちにささやいて、そそくさとその場を去ってしまった。

 かずやんは明乃、だーいしは真里亜、たまさんは絵理奈と一緒になっていた。

 これは事実上のカップル成立状態である。


「じゃあ何回勝負にする?」

 清華がひっちに勝負話を持ち掛けてきている。

 ひっちもひっちで黙ってばかりはいられない。

「先に三勝した方が勝ちってことでどうだ!」

「いいよ、それで決まり!」

 ひっちと清華は落ちゲー『ぽにょぽにょ』で勝負を行うことが決まった。

 

 隣ではかずやんが格ゲー『スレイブルー』で明乃と遊んでいた。

「あー、このキャラ可愛い。このキャラ使ってみてよ!」

「いいよ、明乃ちゃんは格ゲーってやったりする?」

「するのはよく分かんないけど、プレイ動画を見ることはあるよ。だから、こういうの見るの好きかな」

 明乃がもたらした情報はかずやんにとって朗報と言える。

(やったぜ!)

 かずやんが心の中でこっそりガッツポーズをした。


「このキャラはコンボ火力があるし、動きも見てて可愛いから、明乃ちゃんは好きになるかもしれないな」

「ほんとー?」

「見ごたえがあることは間違いないね、そんじゃやってみるよ」

「わーい」

 早速かずやんがゲームを始めだした。

 初っ端からCPU相手にかずやんがコンボを決め込んでいく。

「おお、可愛いし強い!」

 明乃がテンションアゲアゲで画面を見ていた。

(うっしゃああああああ!)

 かずやんがその様子を見て再び心の中でガッツポーズをした。


 だーいしは真里亜と一緒にモグラたたきの前まで来ていた。

「これは一体どのようなゲームなのですか?」

 真里亜が不思議そうな表情でだーいしに質問をしている。

「これはズバリ、穴から出て来るモグラを叩くゲームだ」

「それはまさか、殺生?」

「いやいや、そんなことはない。そんなことはないよ」

 だーいしが懸命に真里亜に説明している。


 お嬢様育ちの彼女にゲームを説明するのが少々難しい。

「ちょっとお仕置きするだけだ」

「まあ、このモグラたちはどのような罪を」

 説明すればするほどこじれていくのをだーいしはひしひしと感じていた。

「真里亜ちゃんご心配なく。このようにして我々を楽しませることで罪を償っているのだ」

 だーいしが余りにも強引な語りで今までの話をなかったことにしてしまった。

 そしてだーいしがさりげなくハンマーを真里亜に手渡す。


「大丈夫なのですか?」

「大丈夫、これは殺生ではない! ならば」

 そう言ってだーいしがハンマーを構えた。

 そして、目にも止まらぬ速さでだーいしがモグラを叩いている。


 たまさんはたまさんで絵理奈とシューティングゲーム『ゾンビリビー』に興じていた。

「何だか難しいね」

 絵理奈は慣れていないのか、残機を減らすのが速い。

(そこがまた可愛かったりするんだよね)

 たまさんはどことなく庇護欲をそそられる絵理奈が可愛くてならなかった。


「確かに、普段やってなかったらそうだよね」

「こういうゲームってよくやるの?」

「たまにだけど、やってるよ」

 たまさんと絵理奈が協力プレイを楽しんでいる。

 ひっち過激団の中では一番デートらしい感じである。


「ごめーん、やられちゃったぁ」

 そうこうしていると絵理奈がゲームオーバーになってしまっていた。

(いや、だがこんな事で!)

 そう、たまさんに迷いなどなかった。

 すかさず百円玉を入れ、目にも止まらぬ動作で高速コンティニューを行った。

 当然絵理奈には全く気付かれていない。


「絵理奈ちゃん、まだ遊べるみたいだよ」

「ほんとー、じゃあやる!」

 絵理奈が嬉しそうな表情で筐体の方に戻ってきた。

(そう、僕はこの笑顔を見るために……)


「という夢を見たんだ!」

「夢オチかよ!」

「どことなく生々しいな」

「夢から覚めないで、なんてこともあるんだね」

 ひっちの夢物語を耳にして、三人はそれぞれに思ってしまったのだった。 

 これが現実ならと。

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