お宝を奪還せよ

「ここが資料に書いてあった場所だね」

「しかし入り口が見当たらないな。どこにあるのだろうか?」

 たまさんとだーいしが『ガメツィー』の拠点入り口を一生懸命探している。

 しかし、その場所に来ているはずなのに見つからない。


「この資料、本当にあってるのか?」

「しらなーい」

 かずやんの疑問に何も分かっていないひっちが適当に答えた。

 絵に書いたような適当っぷりだ。

「ひっちとかずやんも探すの手伝ってよ」

「へえへえ、すんませんな。俺も探すよ」

 たまさんに言われてようやく拠点入り口を探し始めるかずやん。

 それでも中々入り口は見つからない。


「どこか秘密のスイッチとかあったりするのかな?」

「あーあ、つまんねーの」

 たまさんがひっちをよそに懸命に入り口を探している。

 対するひっちがやる気なさそうにその辺の小石を蹴り飛ばしたその時だった。

 突如として道から拠点入り口が音を立てて現れ始めた。

小石と思われた物体が、実は拠点入り口を開くためのスイッチだったとは誰も思わなかっただろう。


「う、噓でしょ?」

「ん? 何かあったか?」

「まぐれだとしてもよくやったな、ひっちは」

 たまさんとかずやんが驚きを隠せないでいるが、当のひっちは何も分かっていない。

「何だか知らないけど、ここが入り口みたいだな。ひっち過激団突撃!」

「流石に無策が過ぎる」

 勢いで何とかしようとするひっちをだーいしが制止した。

 先がどうなっているのか分からない、罠に対して何らかの対策が欲しいところである。


「つってもなー、どうする?」

「んーとね、どれがいいかな?」

「たまさん、この袋一体どうしたんだよ?」

「キサラヅさんからもらって来たよ」

 困り果てたひっちのそばで、たまさんがどの道具を使おうかと漁っている。

 これにはかずやんがすかさず問いただすも、たまさんは普通に答えていた。


 マダム・キサラヅから渡された道具袋には何が入っているのか。

「お店のライターとか色々あるね」

「おっ、発煙筒があるじゃん。こいつで燻り出してみるか」

「不良みたいなやり口だね」

「良い子はマネしないで下さいってやつだな」

 たまさんとかずやんが道具袋の中身を物色しながら作戦を練っていた。


「秘密の入り口だし、他の場所とは繋がっている可能性が低そうだもんね。やって来た奴らは捕まえるの?」

「それでいこうぜ! 数が多くて捕まえきれなかったらボコボコにしてやるのさ!」

 かずやんとたまさんが作戦の詳細を詰めていた。

 発煙筒を焚いて、煙に反応して入り口に向かって来た奴らを捕らえ、『クリスタルのスケルトン』の在り処を吐かせるというシンプルなものだ。


「それならおれは、捕まえた奴にかつ丼を差し出せばいいのか。おめえかつ丼食うか?」

「ひっちは刑事ドラマの見過ぎだな」

 作戦を聞いたものの、いまいち内容がつかめていないひっちが訳の分からないことを言い出した。

 それを聞いただーいしが呆れ顔でツッコミを入れている。


 そんな中ではあるが、作戦は決行されいている。

 かずやんによって点火された発煙筒が入り口に投げ込まれる。

 果たして相手をこちらの思惑通り誘い出せるかどうか。

 ひっち過激団は物陰に隠れ、ガメツィーの戦闘員が現れるのを待ち構えている。

 すると、見覚えのある黒ずくめの覆面にタイツ姿をした奇妙な奴らが、三人ほど入り口から姿を現し始めた。


「やっぱいつ見てもきめーな」

「だね」

 かずやんとたまさんが物陰でひそひそ話をしていた。

 ガメツィーの戦闘員たちは辺りを見回すも、ひっち過激団の存在にまだ気づいていない。

 これ以上の増援がないと判断したところで、ひっち過激団は一斉に襲撃を始めた。

 一人の戦闘員が転んでしまったので、すかさずかずやんがロープで縛りあげてしまった。


「やーやー、このセイントキャノンが目に入らぬか!」

「大人しくして下さいよ」

 ひっちとたまさんが戦闘員に銃口を向け、抵抗させないようにしている。

「キー、キー」

 戦闘員は何かを言おうとしているのだろうが、何を言っているのかひっち過激団には分からない。

「もしかして、喋れないってやつなのかな?」

「作戦失敗なのでは?」

「マジかよ!」

 たまさんとだーいしが不思議そうに戦闘員を見ながら話をしていた。

 これにはかずやんがたまげてしまった。


「こうなればやはり突撃だな! ひっち過激団突撃!」

「案外それが正解なのかもしれないってところがまたなあ……」

 相変わらず突撃を主張するひっちに、何も言い返せなくなってしまうかずやん。

 ちょうど発煙筒の煙が出なくなっていた時で、突撃するにはいいかもしれない。

「そんじゃ改めて、ひっち過激団突撃!」

 ひっちの号令と共に、ひっち過激団が入り口に駆け込んでいく。

「何もありませんように何もありませんように何もありませんように!」

 たまさんが呪文のようにつぶやいて突撃をしていた。

 罠を恐れての発言だろう。

 幸いにして、特に目立った罠は見られなかった。


 突如として、通路を覆うようにガメツィーの戦闘員たちが襲い掛かってきた。

「応戦するぞ!」

「御意!」

「分かった!」

「言われなくたって、そのつもりさ!」

 ひっちが三人に指示を出し、三人もそれに応じる。

 ひっちとたまさんが射撃で相手の前線に穴をあけ、穴が開いたところにかずやんとだーいしが切り込んでいく。

 ガメツィーの戦闘員たちが一人、また一人と倒されていく。

 その先には博物館の展示品のようにクリアケースに収められている物体があった。

 何と、そこにあるのは『クリスタルのスケルトン』だった。


「あ、あれが『クリスタルのスケルトン』!」

「お宝キター!」

 奪還するお宝が目の前にあるのを見てたまさんが驚きを隠せずにいた。

 それにしてもひっちの反応はお気楽過ぎる。

「目標は捉えたな、後は奪うのみ!」

「そういうこった!」

 だーいしとかずやんが戦闘員たちを薙ぎ払っている。

 狭い場所での戦いだからか、近接戦闘が効果を発揮している。

 何とかして『クリスタルのスケルトン』を奪取することに成功した。


「おおっ、キタキタキター!」

「おいひっち、まさかここでひっち砲を撃つつもりじゃ……」

「そのまさかではないのか?」

 妙にテンションが上がっているひっちを見てかずやんがやばそうな顔をする。

 そのそばではだーいしが冷静に答えていた。

 この勢いはもはや止まりそうもない。

「ひっち砲発射! バキューーーーン!」

 セイントキャノンから特大の光線が放たれる。

 全てを飲み込む光が去った後は無に帰してしまう。

 いつ見ても凄まじい破壊力だ。

 そして、その破壊力の代償が現実となってひっち過激団に襲い掛かる。

 建物の柱を根こそぎ破壊してしまったので、上から倒壊しそうだ。


「やべえ、建物が崩れちまうんじゃねえか?」

「逃げた方が良さそうだね、ひっちも速く逃げようよ」

 かずやんとたまさんが建物が崩れてきているのを感じ取った。

 ひっちが中々動こうとしないので、たまさんが退避を促す。

「ん? こりゃやばい、逃げるぞー!」

 建物が崩れそうな不穏な音がしてきたので、我に返ったひっちが慌てて逃げ出し始めた。

 三人もひっちと一緒に逃げようとしていた。


「クリスたそー、お宝取り返したから転送してよー」

 ひっちがクリスに転送を要求した。

 転送による状況打破、ひっちにしては珍しく知恵を働かせていると言える。

「ダメです、ミッションを終了しないと」

 ひっち過激団が必死で逃げている中、クリスが淡々と説明をしていた。

「ということは、マダムに会ってお宝を渡さねばならんということか」

「逃げ切りたいー! 生き延びたいー!」

 冷静なだーいしに対してテンパっているたまさん。

 とにかく必死こいて逃げるひっち過激団。

 追手が来るとかどうとか考える余裕なんて持ち合わせていない。

 一目散に『パピヨン』へと駆け込んでいく。


「ハア、ハア。帰ってきたぞ」

「あらー、お帰りなさい」

 マダム・キサラヅがひっち過激団を迎え入れる。

「ちゃんと持って帰ってきた?」

「ああ、この通り」

 かずやんがフラフラの足でマダム・キサラヅに『クリスタルのスケルトン』を手渡した。


「ありがと」

「やっぱあれか、お宝はお金にしちまうのか?」

「失礼ね、あたしはガメツィーにぶんどられたオーパーツを保護しているのよ」

「マジかよ!」

 マダム・キサラヅから衝撃の事実を告げられ、かずやんは大いに驚愕している。

「どっからどう見てもごうつくババ……」

「何か言ったかしら~!」

「ひえーん、許して下さいお姉様ー」

 マダム・キサラヅの怒りを買ったために、超能力でひっちのほっぺが滅茶苦茶につねられていた。


「皆様お疲れ様でした。これにてミッション完了ですね」

「ああ、俺たちよくやったよ」

 クリスがようやく転送してくれるようなので、かずやんはホッとしていた。

 結局ひっちは転送が終わるまでずっと、マダム・キサラヅのお仕置きを受け続ける羽目になってしまった。

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