ひっち過激団闇夜を行く
「みんな、新しいミッションが来たぞ!」
ひっちが三人を呼んで説明を始めた。
「どんなミッションなの? 『マフィアの世界』、依頼主はヘススさんだね」
「どれどれ、緊急度3、重要度2、難易度2ねえ」
「内容は武器庫の襲撃とな」
たまさん、かずやん、だーいしとミッションの詳細を確認している。
「ヘスにゃんの頼みとあらば、行かないわけにはいかねーわな」
ひっちの気合は十分のようだ。
「皆様、準備の方はよろしいですか?」
「おうよクリスたそ。だけどその前に出発のハグを~」
クリスの方を振り返り、ひっちが飛びつこうとする。
クリスが咄嗟に反応し、ハリセンでひっちを倒してしまった。
「ぼぴゅん」
ハリセンでその場に倒れこむひっち。
「改めまして皆様、準備の方はよろしいでしょうか?」
「おう、いつでもいいぜ!」
「いけるぞ」
「大丈夫です」
ひっち以外のみんなは準備万端だ。
「それでは皆様を転送致します」
「ま、待って……」
倒れているひっちを差し置いて、クリスが転送を始めた。
次の瞬間、ひっち過激団はヘススのいるオフィスに移動していた。
「おっ、みんな来たか」
「ヘスにゃ~ん」
「ぺろぺろ~」
当たり前のようにひっちとヘススが妙なあいさつを交わす。
ちょっと気持ち悪い。
「ねえヘスにゃん、気になったんだけどさ」
「な~に~?」
「何でおれたちって着てる服はそのままでこっちの世界に来れるの?」
「裸でこっちに来られたら困るからじゃない?」
ひっちの素朴な疑問に何となくな答えをヘススが返す。
「ジョーンたそが裸なら五分と五分じゃん!」
「その手があったか!」
「その手があったか! じゃないわよ!」
オフィスに帰ってきたジョーンがひっちとヘススにハリセンで一撃をかます。
「あら、みんな来てたんだ」
「お邪魔してるぞ~」
「すみません、うちの大佐が……」
かずやんとたまさんがジョーンに声をかける。
「あんた達っていつもこんな感じなの?」
「左様である」
だーいしが言い切ってしまった。
「そうえいばさ、ヘスにゃんって何歳なん?」
ひっちが咄嗟に話題を変えてきた。
本題のミッションからどんどんかけ離れていく。
「ぴちぴちの23歳だお」
「嘘つくんじゃねー、どう見てもオッサンじゃねえか!」
ヘススの答えにかずやんが怒涛のツッコミをかます。
「かずやん、そうでもないぞ」
「だーいし」
「若くして業を重ねているのだから当然だろう」
「言い方よ」
だーいしの無自覚な毒舌にヘススが思わず呟く。
「ということはジョーンたそも23歳。ストラーーイク! ストラーーーイク!」
ひっちが話の流れをガン無視して奇声を上げる。
「たまさん、あれどういう意味なんだ?」
「ジョーンさんはひっちの好みのストライクゾーンに入ってるってことだと……」
「そういうことか、今理解したわ」
かずやんがたまさんの説明を受けて、何とかひっちの発言の意味を理解した。
「それよりひっち、ミッションのことを聞かなくていいのか?」
「おっと、そうだった」
だーいしに指摘され、ひっちはようやく本題を思い出した。
「そうだったな。いや、もちろん覚えていたさ」
「ホントかよ……」
ヘススのリアクションをジョーンが訝しんだ。
「今回の依頼は敵対する組織の武器庫を襲撃、そして制圧だ。武器庫の銃火器を根こそぎいただくってわけだな」
「わーい銃火器、ひっち銃火器だーい好き!」
「何言ってんだこいつ」
ひっちのリアクションに対するかずやんのツッコミが冷たい。
「ヘススさん、今回は作戦ってあるんですか?」
「前回のような力押しで毎回何とかなるということはあるまい」
たまさんとだーいしが今回の作戦内容を気にしている。
「二人ともよくぞ聞いてくれた! 今回は夜戦を仕掛ける!」
「そ、そんな! 僕らそんな経験なんて……」
「言わなくても分かって~るよ」
ヘススの作戦発表にたまさんが慌ててしまっている。
しかしヘススも単に夜戦を仕掛けるつもりはないようだ。
「はいこれ、暗視スコープー!」
ヘススが突然便利アイテムを取り出す。
「これがあれば、暗闇の中でもだーいじょーぶー」
「そういう問題なのだろうか……」
ヘススの案にだーいしが首をかしげた。
「へー、ちょっと試してみたいぜ」
「ヘスにゃん、使ってみてもいい?」
逆にかずやんとひっちは暗視スコープに興味津々のようだ。
「ああ、ここで試してみようか」
ひっち過激団が暗視スコープを装着する。
「じゃ、電気消すわよ」
ジョーンが部屋の電気を消し、部屋の中が暗くなった。
「おお、こいつは良く見えるぜ!」
「うむ、良いな」
かずやんとだーいしが好反応を示した。
「ねえヘスにゃん、これって服の下の裸って透けて見えないの?」
「見えないの」
「残念だね」
「「ねー」」
「ねーじゃねえんだよ! 見えねえんだよ!」
ジョーンが暗がりの中、ひっちとヘススにハリセンをかます。
その後ジョーンがさり気なくオフィスの電気をつけた。
「みんな効果が分かってくれたところで、改めて作戦の詳細を話そう」
「みんな、これが武器庫の図面よ」
ジョーンが机の上に武器庫の図面を差し出しているのをたまさんは見ていた。
すると、たまたまジョーンの胸の谷間が目に入ってしまう。
胸チラだ、偶然の産物だ。
たまさんはジョーンの胸チラに目が釘付けになってしまっていた。
「たまさんどうしたんだよ、ぼーっとして」
「ななななな何でもないよ!」
急にかずやんが声をかけてきたので、たまさんは動揺してしまった。
「見たところ何の変哲もない武器庫に見えるのだが……」
だーいしが図面をまじまじと見て感想を述べた。
「正面の入り口しか入れないみたいですね……」
たまさんがどうしたものかと首をかしげている。
「後は図面のここに注目して欲しいな」
ヘススが図面に書いている〇印を指さす。
「ヘスにゃん、これって?」
「見張りの立ち位置だ」
図面に書かれている〇に注目して見てみると、案外その数は多くない。
「相手は勢力拡大を図っているものの、人手不足が目立っている。だから武器庫の見張りにそこまで人員を割けていないんだ。あと、見たところだが見張りの練度もそこまで高くはないな」
ヘススが詳細を丁寧に教えてくれている。
それはまるで、ひっち過激団が勝てるという根拠を教えてくれるかのようだ。
「しかし、どうやって中に潜入するのだ?」
「奴らの制服を用意したから、それでそのまま入り込むのさ」
「何と大胆な!」
だーいしが驚愕の表情をヘススに見せる。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず。そうだろ、だーいし」
「確かにそうではあるが」
ヘススがだーいしを説得に入った。
「つまりこれはけつあな確……」
「言わせねーよ!」
ひっちの危険なつぶやきにかずやんがすぐさま制止に入った。
「説明はざっとこんなところだ、今回も乗ってくれるか?」
「モチのロン!」
ひっちとヘススが固い握手を交わした。
ついに作戦が決行される。
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