第1回カワイ子ちゃんドラフト会議

「よし、みんな集まったな!」

「どうしたのさ、ひっち?」

「会合、か……」

「何かたくらんでるのか?」

 ひっちの招集を受け、たまさん、だーいし、かずやんがひっちの家に集う。


「うむ、緊急企画を開始する!」

「何をするんだ?」

「第一回、カワイ子ちゃんドラフト会議~!」

 だーいしの質問にハイテンションでひっちが答える。


「なんだ、そんなことか」

「可愛い女の子の話で盛り上がるのは男のたしなみだろ!」

 ひっちがかずやんのコメントに全力で返す。

 その熱意を他のことにぶつければいいのにと皆思わずにはいられなかった。


「高校の女の子で誰が一番可愛いか、皆が思う一番の子を語ろうではないか!」

 ひっちが目を輝かせながら説明している。

 もはや今のひっちを止める術などない。


「おれはやっぱり清華たそだな!」

 ひっちが声高に宣言した。

 どうにもこうにも話をしているときの手つきが嫌らしい。

 すでに三人はひっちの手つきで察しがついてしまっている。


「一応聞くけど、清華さんの好きなところってどこ?」

「おっぱい! おっきいし形もいいしな! あのおっぱいが揺れてみろ! 弾んでみろ! おれたちは生きていることを実感することが出来るんだぞ!」

「はいはい……」

 聞くんじゃなかったと言わんばかりの顔をするたまさん。

 おっぱいフェチここに極まれり。


「清華たそのことを考えると胸がキュンキュンする! あいわずげいかな?」

「恋煩いだわ! どっからそんな単語出てきたんだよ!」

 ひっちの危うすぎる発言にたまさんが堪えきれずにツッコミをかます。


「じゃあ次俺な。俺は明乃ちゃんだな」

「そうだったのか、かずやん!」

 かずやんのカミングアウトにだーいしが驚いていた。

「ルックスもさることながら、あの裏表のなさそうな明るい感じがいいよな。それに……」

「かずやん、何か他にきっかけってあるの?」


「たまさんよくぞ聞いてくれた。そう、あれはある日のことだった」

「いつなの?」

「あれは、一万円札が聖徳太子だった頃……」

「僕たち余裕で生まれてないよ」

 かずやんの珍しいボケにもたまさんが颯爽さっそうとツッコミを返す。


「冗談だよ。あれはとある晴れた日のことだった」

 かずやんがしみじみとした顔で回想にふけった。

「おれは休憩時間中、何気なく教室の外を歩いていたんだ。そのとき目の前を明乃ちゃんが友達と一緒にいたわけさ。そしたら突然強い風が吹いてきて、まさにその時だった!」


 かずやんが当時の光景を思い出し、気分を高揚させていた。

「俺は見~た~、ビューティフルレインボー!」

「んだよ、ただのパンチラじゃん」

 思い出話にときめいているかずやんを、ひっちがばっさりと切り捨てた。


「だーいし、ここは力強いの頼むよ!」

「そうか……」

 ひっちがだーいしに話を振り始めた。

「自分は、真里亜ちゃんだ」

「ほほうほうほう」

 だーいしのカミングアウトにひっちが食いつく。


「彼女を選んだ理由はまず清楚な雰囲気が良いということだ」

「確かにそうだよね」

 だーいしの主張にたまさんが同意していた。

「彼女がクリスチャンなのは皆知っているか?」

「うん、知ってるよ」

 だーいしの質問にたまさんが首を縦に振った。


「たまたま彼女が通っているという教会の中をのぞいた時に見たんだ」

 だーいしもかずやんと同じくしみじみとした顔で回想にふけっていた。

「そこにいたのは、まさしく聖女であった」

「だーいしが珍しくフェチを炸裂させてるな」

 晴れやかな表情を見せるだーいしに、かずやんが説明気味なコメントを残した。


「シスター服は素晴らしいではないか!」

「気持ちは分からないでもないけどね」

 たまさんはだーいしの意見に賛同できる部分があるようだ。

「シメはたまさんだな」

「飲み屋さんじゃないんだから……。それじゃあ話すね」


 たまさんがゆっくりと口を開いた。

「僕は絵理奈ちゃんがいいな。SAMAの四人はみんな可愛いけど、絵理奈ちゃんが一番みんなに分け隔てなく接してくれるし、僕は彼女のそういうところがいいなって思うんだ」

「たまさんてめー、俺のおっぱいをディスってんじゃねー!」

「ひっち落ち着け、その言い方だと語弊しかないぞ」

 ひっちはたまさんに清華をディスるなと言いたかったらしい。

 たまらずかずやんがツッコミを入れてしまう。


「にしてもさ、それだけじゃないでしょ~」

 ひっちがいやらしい顔つきでたまさんにぐいぐい迫って来る。

「たまさん、もっとよく思い出してみるんだ!」

 今度はだーいしからもいじられ始めるたまさん。

「たまさんがそんなつまらないわけないよな!」

 かずやんも二人に便乗して話を振ってきた。


「うーん」

 たまさんは答えに困っていた。

「ちょっと思い出してみる」

 たまさんは目を閉じ、妄想を始めた。

 目の前に見えるのは、新体操をしている絵理奈のレオタード姿。

 柔軟な体を駆使した美技の数々が目に浮かぶ。


 そして、彼女のレオタード姿の秘部がアップで想像される。

 絵理奈のレオタードの食い込みがたまさんは気になっているようだ。

(絵理奈ちゃんの食い込み、食い込み、食い込みいいいいっ!)

「それは、上質を知る者にこそ許される領域!」

 たまさんが妄想によりたかぶっている。

 もはや誰にも止められそうにない。


「ふああああああっ!」

 たまさんが興奮のあまりその場で倒れこんでしまった。

「いかん、たまさんがのぼせてしまった!」

「何想像してたんだろうな……」

 だーいしとかずやんがたまさんを介抱し始めた。

「推しがいるというのは良きことですな!」

「奇麗にまとめてんじゃねーよ!」

 かずやんがひっちにパンチのあるツッコミをかました。

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