セイントウエポンの新たなる力

 魔物の群れが現れた場所では、魔物が暴れ散らかしていた。

 ゴブリン、スライム、ゴーレム、ワイバーンが周辺を蹂躙している。

 兵士たちは必死の抵抗をするも押され続けている。

 魔物にやられ、力尽きてしまった兵士も少なくない。


「これはひどい」

 ひっちが思わず言葉を漏らす。

「しかも数が多いときた」

「苦戦は避けられまい」

 かやんとだーいしも楽な戦いにならないことは予想していた。


「みんなを守るんだ、ひっち過激団行くぞ!」

 ひっちがセイントキャノンを放ち、目の前のゴブリンを吹き飛ばす。

 それが号砲となり、三人も後に続く。

「何としてでも押し返さないと」

 たまさんがセイントガンでスライムやゴブリンを撃ちながら倒していく。


 それでもまだ魔物たちが押し寄せてくる。

「ったく、キリがないぜ。こうなりゃ」

 かずやんも魔物の数に手間取っている。

「地獄のひと裂き受けてみな! デス・スラッシュ!」

 セイントサイズの刃先から漆黒の衝撃波が放たれた。

 その衝撃波はゴブリンやスライム、果てはゴーレムまでも巻き込んで切り刻んでいった。

 片足を切られたゴーレムがバランスを崩し、前のめりに倒れこんでしまった。


「やるな、かずやん。ゴーレムまでもダメージを与えるとは……」

 隣でだーいしが感心している。

「こちらも負けてはおれんな、ゆくぞ聖印刀せいんとう!」

だーいしがセイントサーベルを構えると、闘気と雷が刀身へと集まり始めた。

紫電一閃しでんいっせん!」

 闘気と雷を纏った一振りが、ゴーレムをいとも容易く真っ二つにしてしまった。

 切られたゴーレムが音を立てて崩れていく。


「何か知らんけど、あの二人勢いがすごいですなー」

「確かに……」

 ちょっと離れたところで、ひっちとたまさんがかずやんとだーいしの活躍を目の当たりにしていた。

「たまさんさあ、おれ思ったんだけど……」

「どしたの~?」

「おれたちの武器が若干魔物たちに通りが悪く感じるのって気のせい?」

「考えたくないけど、かもね~」


 かずやんとだーいしのおかげでちょっと余裕が出来てきたのか、ひっちとたまさんは戦いつつもひそひそ話をしていた。

「むむっ、空からワイバーンが!」

「撃ち落とさないと!」

 ひっちとたまさんがそれぞれの武器で射撃を行うも、ワイバーンは中々撃ち落とせない。

 それでもなおワイバーンがひっちとたまさんの方へと向かって来る。


「セイントガンが輝いている。そうか、これならっ」

 たまさんがセイントガンの銃口を迫りくるワイバーンへと向ける。

「そこだ、スパイラルショット!」

 螺旋らせんが刻まれた光弾がセイントガンから放たれ、ワイバーンの翼を貫通する。

 ワイバーンがバランスを崩し、あらぬ方向へと不時着しようとしていた。


「おっ、たまさんもやるじゃん! ワイバーンを倒すなら今だな」

 かずやんが不時着したワイバーンの首をすかさず刈り取ってしまった。

 抜け目なくとどめを刺しに行く。

「これで大体ケリがついたか……」

「後は掃討戦と言ったところか……」

 かずやんとだーいしが周囲を見渡しながら話をしていた。


 ひっち過激団の助太刀により、兵士たちも残り少数となったゴブリンやスライム相手に押し返している。

「ここまで来れば大丈夫そうですね」

「おおっ、クリスたそ!」

「ミッション完了、お疲れさまでした。今から皆さんを呼び戻します」

 クリスがひっち過激団を呼び戻す準備を始めた。


「あれ、姫とのイチャイチャは?」

「そんなん始めからねーんだよ!」

 ひっちはよっぽどミリアム姫とのイチャイチャを期待していたようだが、いくら異世界と言っても世の中そんなに甘くはない。

 そこを押さえているかずやんとそうでないひっちの差がここで出てしまった。

「ああっ、姫のプリンセスボインがああっ!」

「帰るよひっち」

 ひっちの姫への一方的な思いは届くことなく、ひっち過激団は『剣と魔法の世界』を後にした。

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