百四十字小説纏め
彩色彩兎
第1話
百字•百四十字 小説もしくは散文詩 五篇纏め
作:彩色彩兎
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
・沈む言の葉
言葉を綴りたいのに、言葉が邪魔だ。
なにを言っても無意味。言葉はこぼれ落ちていく。
すくい上げてくれる人は居ないのに、落ちていった言葉の沈む水溜まりを、ただしゃがんで見下ろした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
・ヴィオラの音色
音楽室の雑音何をするにも
「はい、先生!」
指揮棒に振り回され
これが求めた音楽?
帰路から方向転換、河川敷でしゃがみ込む
向こう岸には同じクラスの、弦楽部
夕焼けに沈める気丈とヴィオラの音色
黄昏ても気ままな君の弓遣い
「練習しなきゃ」
河川敷の畔 足早に帰路に就く
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
・オランダの冬
12年振りの川の凍結。
この日はかつての伝統的な「スケートの日」
昔はいつも凍ってて、自転車の代わりにスケート靴だった。
「ほら、あんたも"庭"でワインを飲もう!」
今までただの風景だった、向こう岸の家の宴に飛び込んだ。
しばらくよろしく 、お隣さん。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
・絵葉書
かつて身体が動いた頃、たまに旅行に行っては売店の絵葉書を眺めていた。
『趣味で何となく集めるもの』というイメージ以上の感情を持っていなくて、すぐに視線は他に移った。
今、ベッドの上で思うよ。
君のために葉書を出していれば、君は隣で笑っていてくれただろうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
・タロット遊び
旅先でトランプを買ったつもりの旅行客が、封を開けて戸惑った。
そこにはインデントがなく、トランプも黒は1-6、赤は5-10が抜け落ちていた。
そしてよく分からないローマ数字のカード多数。
不良品と思った客は捨ててしまった。
それは、この地の伝統的なカード遊びだった。
百四十字小説纏め 彩色彩兎 @SaisyokuAyato
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