改定版特典! 懲りない翌週は韓国にて

七、敗残兵をかき集めて韓国へ


 勝負事というのは、やめなければ負けたわけではありません。そうです。わたしは自分が死ぬまでは負けてはいないのです。秦の始皇帝も戦での大敗や裏切りなどの苦難の道を乗り越えて最後に統一を達成しました。それを考えると、わたしの負けなど、たかだかお金を失っただけです。バカラに負けたからといって、その時代の捕虜のように、生き埋めにされるわけではないのです。


 ということで、わたしは敗残兵である僅かなお金と銀行からおろした兵力を再集結させて、翌土曜日に韓国の仁川インチョンへと向かいます。もちろんカジノなのは一緒なのですが、今度はポーカーで稼ぎに行きます。


 仁川空港からバスで五分というとんでもなく近いところにカジノがあり、わたしはささっとチェックインをすますと、僅か二つしか開いていないないポーカーテーブルに座ります。バイイン(参加費)は五〇万ウォン。約五万円です。チップに換えて座ります。


 テーブルのブラインド(一ゲームあたりの参加費)は三ドルから。テキサスホールデムというポーカーをします。キャッシュゲームという延々とゲームを続けるルールで、テーブルの出入りは自由になっています。


 面子を見ると中央アジア系と中国人が多く、日本人はいませんでした。はっきり言って、わたしより弱そうなばかりです。

 軽く挨拶をすると、わたしは「バクチ打ちのポーカー」を始めます。普通ポーカーはどこまでも確率に基づくプレーをするものなのですが、わたしは相手を油断させてからカモっていくスタイルでプレーしていたのです。すなわち、(そこそこ)若い女性であるのイメージを利用して、いかにも押しに弱いプレーを演じ続け、相手がわたしのことをブラフ(騙すこと)しやすい相手と侮らせておきます。ワザと負けてやったりして、このテーブルで最弱であるように振舞うのです。


 ある程度ができましたので、回収に入ります。わたしは秦の名将王翦おうせんのごとく連戦連勝していきます。それも相手にブラフをさせておいて、逆利用をして相手からチップを奪い取っていきます。「オー、ラッキー」なんて笑顔で言いながら、確実に相手のミスと油断を誘って勝っていけたのです。


 トドメとして、わたしの手札はかなり弱いのに敢えてゲームに参加して、相手の強いハンドを潰しに行きます。相手はティルト(逆上)して全チップをわたしに献上すると、ロシア語で何やらわたしを罵りながら、テーブルから去っていきます。小説ではなく、リアルのざまぁプレイをしたわけです。


 わたしは彼の背中を見送ると、自分もテーブルを立って喫煙ルームに行き、高級煙草「中華」を一本吸って、勝った金額を頭で思い浮かべました。先週の大敗から比べれば微々たるものですが、その後も思い通りのプレーができで、満足して日本へと凱旋するのでありました。


(終)

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(改定版+おまけ付)今は専業主婦だけど、昔はマカオのカジノでバカラをしていた話 犀川 よう @eowpihrfoiw

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