第11話 白山比咩 神社
突然にも伝えられた言葉の意味に、春花は頬を赤く染め、はにかむ表情を魅せる。その可愛らしい笑みや美しい
「――あっ、もしかして、いま何か言ってた?」
「う、うん。私にね、綺麗って言ってくれたよ」
不意に自分が発した言葉を思い出し、顔を赤らめ我に返る夏樹。漏れ出た声は隠しようがなく、春花の心と耳にしっかり届いていた。
「いや、いまのはね。えっと、何ていうんだろう。その、綺麗の意味はね。――そっ、そうだよ、馬子にも衣裳。って、言いたかったんだよね」
「馬子にも?」
「そっ、そう、馬子にもね」
「もうーせっかく綺麗って言ってくれたのに。まあ別にいいけどね、照れ隠しって知ってるから」
素直になれない夏樹は、冗談でごまかし言葉を濁す。この言葉に、春花は唇を尖らせながら不服そうに訴えかけた。
「照れ隠し? ぼっ、僕が? いやまあ、少しは綺麗だと思うけど」
「はいはい、そういう事にしておきますね。それよりも、混まないうちに早く神社へ行った方がよくない」
「それもそうだね」
和やかな雰囲気の中、混み合う前に目的の場所へ歩きだす二人。ところが、やはりと言うべきだろう。道中は前後で押し合う人で混雑していた。そのため、少し前を歩く夏樹は歩幅を合わせゆっくり進む。そんな何気ない仕草に触れる春花は、そっと浴衣の袖を掴み後をついていく……。
✿.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.✿【場面転換】✿.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.✿
待ち合わせの場所から歩くこと数十分、ようやく目的の
これにより、神社の前へ大きく構える一の鳥居を
「んっ? 夏樹くん、どうして私の後ろを上っているの」
「それは春花が
夏樹は少し後ろを歩き、距離をとりながら上る。そんな不可解な行動に、春花は首をかしげながら問いかけた。
「そうなんだ、ありがとう。夏樹くんって、優しいんだね」
「だっ、だってほら。春花は慌てん坊だからさ」
一心に見つめる春花。その姿に、動揺した夏樹は照れながら答える。
「ふふっ、そうね。じゃあ転んだ時は、夏樹くんに全て預けようかな。だけど困ったわ、最近少し重くなったから大丈夫かしら」
「――うっ、それはちょっと無理かも」
冗談交じりに呟く春花の言葉。これを受けた夏樹は、顔を少し歪め苦い表情を浮かべた。そんな他愛もない話をしていると、ようやく頂上付近へ差しかかる。こうして、やっとの思いで最後の石段を踏み終える二人。その頃には、周辺一帯の風景も次第に薄暗くなり始めた。
「はぁ……やっと着いたね」
「そうねえ……」
少しだけしゃがみ込む二人は、息を切らせながら目の前を見つめる。そこには、軒を連ねた夜店や人々が所狭しと立ち並ぶ。
その光景は、
そんな心を躍らせる情景に、足早に二の鳥居を
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