毒舌おばあさん降臨
滝口アルファ
毒舌おばあさん降臨
蒼い
それがトリガーになって、
優しいおばあさんは、
毒舌おばあさんに変貌を遂げました。
そしてテレビを観ながら、
独り言を言い始めました。
「やれやれ。
このアナウンサー、
また、画面のQRコードに
アクセスとかなんとか言ってるよ。
馬鹿のひとつ覚えじゃあるまいに。
QRコード、QRコードって、
QRコードがそんなに偉いのかい?
そもそも、
QRコードのQRが、
クイックレスポンスの略だってこと、
当然知ってて言っているんだろうねえ。
それすら疑わしいねえ。
そんなにQRコードを普及させたいのなら、
QRコードの新興宗教でも作って、
その教祖にでもなればいいんだよ」
毒舌おばあさんは、
緑茶を啜って、
テレビを観ながら、
また独り言を言い始めました。
「QRコードで思い出したけど、
キャッシュレスも気に入らないね。
わたしは、現金しか信用してないよ。
キャッシュレスなんて、
どうせキャッシュレス業界が儲けたいだけなんだから。
便利だとかポイントだとか、
目の前にニンジンぶら下げられて、
まんまとキャッシュレス業界の策略に、
国民が引っかかているんだよ。
国民はもっと自分を持ってほしいねえ。
ブレブレだよ。ブレブレ。
情けないねえ。不甲斐ないねえ。
だらだらと時代の潮流に流されていると、
自分を見失って、
そのうち痛い目に遭うんじゃないのかい?」
そう言って、
毒舌おばあさんは、
ヤマンバが人間の肉を食べるように、
いちご大福をむしゃむしゃと頬張りました。
そしてテレビを観ながら、
また独り言を言い始めました。
「デジタルねえ。
そもそもデジタルって何なんだい?
そういえば、
マイナンバーカードの
事実状の強制取得も腹立たしいことだよ。
最初は、任意って言ってたはずなんだ。
それがいつの間にか、
強制取得だからねえ。
まるで、
第二次世界大戦のときの
召集令状みたいじゃないか。
なぜ紙の保険証じゃ駄目なんだい?
説得力のある説明を
首相も誰もしていないじゃないか。
あんなマイナンバーカードなんて、
どう考えても眉唾ものだよ。
それなのに、
国民はなぜ、
唯々諾々と取得してしまうんだろうねえ。
これもマイナポイントとかいう飴を与えられて、
政府の思惑にまんまと嵌まっているんだろうねえ。
思う壺だよ。思う壺。
どうせ悪の巣窟の政府のことだから、
マイナンバーカードの中に、
マイクロチップのGPSでも仕込んでいるに違いない。
そうして、
国民の動きを監視しているんだろうよ。
ああ、うさんくさい、うさんくさい。
政府つまり国家権力は、
それくらいのことは平気でするからねえ。
国家権力は、
いつの時代も暴走するんだよ。
国民が脳天気に油断したところを狙ってくるんだ。
本当に気を付けないといけないよ。
くわばら、くわばら」
そう言い終わると、
毒舌おばあさんの中に溜まっていた、
負のエネルギーが浄化されて、
みるみるうちに、
元の優しいおばあさんに戻っていきました。
そして優しいおばあさんは、
「今日はなんだか疲れたねえ、
もう眠ろうかねえ」と言って、
テレビを切ると、
和室の羽毛布団にくるまって、
不思議の国のアリスのように、
すやすやと眠りに就いたのでした。
蒼い火球の流れた夜のことでした。
毒舌おばあさん降臨 滝口アルファ @971475
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます