びゅ~てぃふるわ~るど

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びゅ~てぃふるわ~るど

アルコールで少しぼぅっとした頭でこれまでの事を想う。

思考が鈍重になったおかげで些か回復したメンタル。ほんと、こういう時はお酒万歳。大人になんてならなければいいのに。

帰ってきたまんまでベッドに倒れこんだから、セットした髪はグシャグシャ、パーティードレスもシワクチャになってそう。

顔と接触している枕には化粧もバッチリ移ってそう……でももうメイク落としにわざわざ起きるのも億劫だった。

神様も粋な計らいだよ、ベッドの下に乱雑に横たわっているパーティバッグに引き出物に、ブーケ。

これぞ予定調和。バーカ、くたばれ。


第一次接触は彼女から。

「あなた、かわいいね?」

「……どうも」

でも私の方が先に観測してたと思う。入学式から目で追っていたもの。それだけ彼女は目立ってた。

さらさらと軽やかな髪が、歩くたびに揺れていた。凛と伸びた背に気品があった。背丈の割に少し広い歩幅。

何より、笑うとこの人、へにゃって笑うんだ。


この人、ずるいんだよね。これだけかっこいいのに、本当は可愛い人なんだもの。


「あーあ、いい匂い。ずるいよね、このフワフワの髪。

お肌スベスベでさー。もぉー、いーなー、可愛いなぁー。私もこんな小っちゃくて可愛い生き物に生まれたかったなぁ」

そんな彼女が背中から私を抱えながら、私の肩に顔をうずめてぐりぐりしている。

「……ども」

そんな私はのけ反るように彼女に体重を預けて、後頭部を彼女の肩に乗せる。

「いいなー、いいなー」

そう彼女が繰り返す。

(あなたの方が私の100倍かわいいよ)

と言うのは憚られて、何も言わずに彼女のサラサラの髪をポンポンと叩いて、頭に手を乗せる。撫でて慰める。

彼女が好きな男子が好みのタイプの女子に私の名前を出したんだって。バカみたい。


傷心の彼女が回復するには少々かかった。

「もうね、あなただけがいれば私はいいよ」

わかってるさ、そんなのさ。幻想なんだって。リバーシと一緒。序盤白ばかりだと終盤黒ばかりになるの。だから期待してはダメ、その分返ってくるの。

でもさ、そんな風に言われたら、私だって期待だってしちゃうじゃん?夢見る乙女になっちゃうじゃん?

でもさ……

「彼女と付き合ってるの?」

「は?」

「だってさ、一緒にいてずっとベタベタしてるじゃんか?そうなのかなって……」

「んな訳ないじゃん。マンガとかに毒されすぎ」

私に告白してきた男子がそんな事を言ったのですぐさま否定した。

そりゃさ、一番仲良しだよ?たぶん、親友ってのが一番近いかな。彼女もそう思ってるか確認したことないけど。

でもさ、私は至って普通だよ?いい男がいればいいよ。でも今は見当たらないから彼女と一緒に居る時が一番楽しい、ただそれだけ。

……それだけ、なんだから。



「彼女、親友なんだ!」

と、彼氏に紹介された。私、親友なんだって。一番、仲のイイ友達なんだって。

そう言われて嬉しいハズなのに、胸の内に渦巻くのはどす黒い感情。

「……ども」

「は、初めまして……」

緊張した様子の彼氏さんだと紹介された男子は優しそうな雰囲気の人だった。

軽い感じよりは随分好印象だけど、この人は本当に彼女に相応しい相手だろうか?

思わず睨むようにマジマジと相手の顔を見てしまった。

「ど、どうかしました?」

「……いえ」

私に彼氏さんを会わせた彼女は始終嬉しそうだった。


彼氏さんはいい人だった。

ぐいぐい引っ張っていくタイプではないけれど、彼女の足りない部分を補えていて、バランスがいいように思えた。

文句の一つも言いたかったのに。

こちらに遠慮しつつも仲睦まじい様子に、何より彼女が私といる時とは違う表情を見せている事に、何も言葉が出なくなってしまった。

放課後の教室で、何となく将来の話になったことがあった。

「社会人になっても一緒に遊びに行こうね」

「うん」

「結婚してもさ、家族ぐるみでご飯食べたりとかさ」

「ウン」

「子供同士も仲良くなったら嬉しいなぁ」

「……ウン」

なぜだろう、私が一番そばにいたかったのは彼女なのに、この頃から距離が出来ていたように思える。

彼女からの距離は変わらない。私の心が離れてしまったのだ。そばに居たいと願いながら。

きっと私は独占欲が強いのだろう。一番仲の良い友達を彼氏さんに取られて、勝手に裏切られた気になっているのだ。

私に彼氏ができれば。そうすればきっと丁度いい具合に収まるんだと思う。

あーあ、どこかにいい人いないかな。まったくもう、バカみたいよ。

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