教師近藤とかなわない相手

 近藤は、誰に対しても物怖じしない人間です。

 彼のことを最強と言う人もいます。

 ところが、そんな近藤でも、ある一人の人物には頭が上がらない態度をとっているのです。

 その人物というのは同僚の男性教師で、名前を小竹といい、年齢は二十代と近藤よりかなり下なうえに寡黙でおとなしく、やんちゃな生徒たちからは馬鹿にされて、ひどい扱いを受けることも珍しくありません。なのに、近藤がなぜ小竹には腰が低いのか、その場面を目にした人は皆、一様に不思議に思います。

 実は、小竹は見てしまったのです。彼が休みの日に街へ買い物に行ったところ、近藤が保険のショップで、そこの人からの保険のアドバイスに、すこぶる熱心に耳を傾けている姿を。そして、それを小竹に見られてしまったのを近藤のほうも気づいたのでした。

 普段、散々ハチャメチャやって、破天荒百パーセントな感じでいながら、保険の相談を受けて、しかもすごく真剣に話を聴くとは!

 彼を知る人なら誰もがそう思いそうななか、小竹は特に驚いたりせず、近藤にそのときのことをしゃべったりなども一切していません。

 しかし、近藤自身は相当恥ずかしかったようで、小竹に対しては恐縮した態度をとり続けているのでした。

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