教師近藤とストリート
近藤は休日の昼間に時折、ギターケースを抱え、駅前などの人通りが多くて開けた場所に現れます。
そのときは、普段めったに変わることなく身につけているスーツではなく、頭にはバンダナを巻き、着古したジーンズといった、一昔前のミュージシャンを思わせる格好をしています。
そして、ここだと決めた地点で歩みを止め、ケースを下ろして中を開けると、なんとそこにはギターではなく、大道芸人が使うボールやリング、スティックなどの道具が入っています。彼はそれを手に取ると、ギターを弾きながら歌唱し始めるものと思っていた周囲の人々の意表をついて、ジャグリングをやりだすのです。
その、言うなればつかみによって、注目を集めることは大概成功しますが、ちゃんとやる気があるにもかかわらず、ジャグリングは目を覆いたくなるくらいにド下手なのでした。それが結果的に再び見ている人たちの裏をかくこととなって、面白がられて歓声を浴びたり、近くに来る人を増やしたりする場合もよくあるのですけれども、宴会芸の領域にも到達していない、失敗するとあたふたもする、おっさんのだらしないサマが鑑賞に堪えられるはずもなく、すぐに飽きられて、せっかく目の前まで足を運んでくれた人たちに次々離れていかれてしまうのがオチなのです。
しかも、それを行うのは毎回気が向いたときで、急であり、路上でパフォーマンスをやる許可を取っていないために、しばらくすると警察官がやってきて、きつく注意されて帰ることになるのでした。
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