教師近藤と文化祭

 学校で、もうすぐ文化祭が行われる時期になりました。何かの制作、準備、練習と、生徒の動きが活発になるなか、近藤は変わらぬ日常を過ごしている様子で、文化祭への興味は薄いように見えました。しかし近藤のクラスのコたちは、「先生のことだから、いざ文化祭になったら、突然舞台にギターを持って登場して、オリジナルソングを披露しそう」などと話していました。

 そして迎えた文化祭の当日に、やはり近藤、文字通り学校のお祭りであるこのときに特別なことを何もやらないまま終わるわけはなく、演劇が上演されたりしている体育館の壇上に、あらかじめ発表されたプログラムにはなかったのに、つまりはサプライズで、姿を現しました。

 けれどもそこで披露したのは、生徒の多くが予想していたギターの弾き語りではありませんでした。

 近藤の出現後すぐに、頼んでおいたらしく別の人たちによって巨大な太鼓が運び込まれ、その間に彼自身は着ていたスーツを皆が見ている前で派手に脱ぎ捨てました。続けて、ねじりハチマキを頭に巻くと、あと身につけているのはメガネ以外ではふんどしのみという格好になり、両方の手のひらにつばをかけ、用意ができた和太鼓を猛烈な勢いで叩き始めたのです。

 近藤は客に背中を見せる向きで演奏しており、異様なほどに前傾姿勢でした。そのうえ、やたらと腰を振るために、観ている人の大半の視線が近藤の尻に集中することになりました。

 人々は近藤が自らの尻を自分たち観客に見せたがっているように感じましたが、本当のところはわかりません。ともかく、その腰の動きといい、メインのはずの太鼓の音よりも、荒々しくて滑稽な本人の見た目やアクションばかりが印象に残るパフォーマンスなのでした。また、堂々と見せるだけあって、彼の尻はデキモノ一つなく、つるつるの肌は光り輝くくらいでした。

 その日の出来事は、客席にいたかなりの割合の人の夜見た夢の中に近藤の尻が出てきたというので、伝説になったのでした。

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