第4話 恩知らず

 洋一と隆は図書室で、托卵について調べた。

 勲叔父さんが言ったように、カッコーはほかの鳥の巣に隙をみて卵を生みつける。卵はかえり、エサを独占するために、もとからあった卵のヒナたちを巣の外に落とす――ということが書かれていた。

 ヒナは成長する。ある日、親鳥がエサを運んで帰ると、巣箱が空になっている。その時、親鳥はどんな気持ちだろう。2人は想像してみた。


「それにしても、洋ちゃんとこの猫、かわいそうに。犯人にされ、ケガまでさせられて」

 隆は猫が哀れで仕方なかった。

「文句ゆうてやろか。どうせ分からんやろけどな」

 2人は権蔵爺さん家に乗り込んだ。


 権蔵爺さんたちも、洋一の家の猫の仕業でないことは気づいていた。

 爺さんが洋一の家から戻った翌朝、やはりヒナが落ちて死んでいた。

「あんだけ言うたのに!」

 爺さんは怒って、チャンを掛けた。

 案の定、洋一の家の猫がチャンに足を挟まれて鳴いていた。まさか本当に叩き殺すわけにはいかず、チャンから外してやったが、その夕方もヒナが落ちて死んでいるのを発見した。ケガをした足で、あの猫がやってきたとは考えられなかった。

「やったのは、隆の家の猫だったんや!」

 近所で思い当たるのは、それしかなかった。


 権蔵爺さんは隆を見て

(飛んで火にいる夏の虫やな)

 と思った。

「爺さん。犯人わかったで」

 洋一はもったいぶって言った。


「おう。謝りにきてくれたんか」

 権蔵爺さんも芝居気たっぷりだった。

「残念やけど、猫は犯人やない。やったのはカッコー鳥や。それも、カッコーのヒナがやったことや。もうチャンなんか掛けるな」

 洋一と隆は意気揚々と引き揚げてきた。


 托卵のことを聞き、権蔵爺さんと婆さんは

「鳥にも恩知らずがいるんやなあ」

 と語り合った。

 手塩にかけて育てた一人息子は、嫁がそそのかして出て行った。

「ほんま、カッコーみたいな嫁やな。我々はしょせんホオジロや。なあ、婆さん」

 2人はますます嫁への憎悪を燃やした。


 権蔵爺さん家の裏山で、カッコーが鳴いていた。

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続 村の少年探偵・隆 その1 他人任せ 山谷麻也 @mk1624

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