第3話 秘密基地

 富江の兄の勲が、縁側で猫の喉を撫でている。

「こら! 爺さんとこのホオジロ、襲うたんか」

 勲は笑いながら、富江から話を聞いていた。

「けんど、おかしいで。猫がヒナを襲うたんなら、食うてしまうか、持って帰るかするはずや。なんで、巣箱の下に落ちとったんや」

 勲叔父さんはバイクのエンジン音を響かせながら、帰って行った。


 うららかな春の日差しを浴びながら、隆と洋一は河原で寝そべっていた。

 そこは村へ向かう道からは、死角になっていた。子供たちの秘密基地だった。ただ、権蔵爺さんも勲叔父さんも、村の男たちはみんなこの河原で遊んで大きくなっていた。

「落ちてきたんかなあ。けど、ヒナが自分で動いて巣から落ちることはないやろ」

「洋ちゃん。不思議やなあ」


 水鳥が川面を渡っていく。ホオジロの鳴き声も聞こえてきた。

「なんて鳴いとるんやろ」

 洋一は耳を澄ませた。

「なんや分からんけど、おしゃべりな鳥やな」

 隆にはただペチャクチャ言っているようにしか、聴こえなかった。


「カッコー、カッコー」

 遠くでカッコーの鳴き声もしている。

(カッコーくらい、鳴き声と名前が同じ鳥はいないなあ)

 2人は同じことを考えていた。

(一年中はいないなあ。渡り鳥やろな。だけど、カッコーはどこに巣を作るんやろ)

 そんな疑問が、隆に湧いた。


 洋一と隆は、勲叔父さんの家を訪ねた。

 バイクはなかった。修司とテレビを観て、時間をつぶした。修司は小学校のころのケガが原因で、足を少し引きずっている。勲叔父さんが叔母ちゃんと一緒に帰ってきた。


「おっちゃん。カッコーの巣ってどこにあるん?」

 洋一が訊いた。

「カッコーは自分の巣は作らんのや。托卵たくらんいうてな、モズやヨシキリ、ホオジロなんかの巣に卵を生み、育てさせるんや」

「それや!」

 洋一と隆は声を張り上げた。

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