整形外科 下肢(足関節)の打撲/捻挫
(*2024.5.27追記あり)
整形外科に行くべき状況、第5回。
今回は「足関節」の打撲/捻挫についてです。
足関節とはすなわち「くるぶし」のことです。くるぶしには、外側と内側に骨の出っ張りが一つずつありますよね? このうち外側の骨を
足関節は、この腓骨と脛骨で出来た「穴」に、
それでは、まずは足関節の捻挫について。
そもそも捻挫とは、「関節に外力が加わった際に、関節を補強している靭帯や関節包が伸ばされて損傷を受けた状態」のことを言います。砕けて言えば、「関節が通常よりも大きく曲げられた際に靭帯が伸ばされて、痛みや内出血を起こした状態」ということです。
そして足関節は捻挫の中で一番頻度が高い部位です。皆さんも一度は足首をくじいた経験があるのではないでしょうか。そして思い出していただくと、足首を捻挫する際にその多くは、いわゆる「うち返し」、すなわち足の裏が内側を向く状態で痛めていることに気付かれると思います。ということは足関節の外側が強制的に引き延ばされるわけで、すなわち足関節の捻挫で痛みや腫れ・内出血が出る部位の多くは、「外側の骨(腓骨)の出っ張りの周囲、あるいはやや前」ということになります。
この場所には「足関節外側靭帯」というそのままな名前の靭帯があり、これが引き延ばされて痛みや内出血を生じます。
さて捻挫をした場合、症状によって医療機関を受診するかどうかを判断することになります。
まずは以前外傷の項で説明させていただいたRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)ですね。アイシングについては、アイスノンや
そして軽傷(第1度:軽度の腫れと痛みのみ)の場合は、数日程度は自分で様子を見てもよいでしょう。徐々に良くなっていけばそれで良し、歩行やスポーツについては痛みに応じて可という判断になります。
中等度(第2度:広い範囲の腫れと比較的強い圧痛がある)の場合は、やはり医療機関でX線写真を撮影してもらった方がよいと思います。脛腓骨骨折はたいてい通常のX線写真で診断がつきますので、これは診療所でもOKかと。それで骨折がはっきりしなければ、とりあえず足関節捻挫、すなわち外側靭帯損傷の診断がつくことになります。ここでも青あざ、すなわち皮下出血はなかなか頼りになる指標になります。大きな青あざがあれば、靭帯や骨から出血している、すなわち靭帯断裂や骨折を疑うことが出来ます。
重症(第3度:さらに強い腫れと痛みがあり歩行困難。靭帯が完全に断裂している可能性があり、足関節の不安定性が生じる)の場合、すなわち歩けなければ、やはり医療機関を受診してください。重症ともなれば松葉杖での免荷(体重をかけないこと)やギプス固定などが必要になることがあります。
なお、重症の場合での初期治療を誤らなければ、手術を必要とすることはあまりありません。スポーツ選手の早期復帰、あるいは重傷を放置した後に足関節の不安定性が残った場合(何度も捻挫を繰り返す、スポーツの時に踏ん張りがきかないなど)の時に靭帯再建術がまれに考慮される程度です。
(*2024.5/27追記)
強い(上記の第2~3度)足関節捻挫の後に、足首の痛みやぐらつき(不安定性)が残るという例が多く報告されています。
後遺症が残りやすい危険因子として、以下が挙げられています。
①女性
②前方へのぐらつきが強い(X線で評価します)
③ギプス固定期間が短い(7日未満は15日程度固定した群より症状が残存するリスクが高い)
④受傷から2週間以内での固定期間が短い(2.6日未満の固定は9日固定より治療成績が悪い)
痛みが残れば生涯にわたって困りますし、ぐらついたままスポーツを行うと、捻挫を繰り返すだけではなく、膝の痛みなど別の部位の障害の原因になるという報告もされるようになりました。このため、歩けないような捻挫をしてしまった場合には後遺症を残さないために初期治療が重要になってきます。
足関節捻挫の治療
第1度(軽度の腫れと痛みのみ):包帯固定やアイシング
第2度、第3度(広い範囲の腫れと比較的強い圧痛がある、あるいは歩行困難):
「受傷後2週間以内(できればすぐ)に、少なくとも9日以上のギプス固定を推奨」
つまり強い捻挫をしてしまった場合には、弱くなった靭帯がある程度修復されるのに2週間程度の期間がかかるということです。以上より、ひどい捻挫の場合にはすぐに医療機関を受診してギプス固定を行ってもらうこと・また、たとえドクター側から4~5日で外そうと提案してきても、9~14日程度はギプス固定を続けてもらうようにこちらから話すことを推奨します。
また痛みや不安定性が残った場合には、まずは保存的治療を行います。
①タオルギャザー(足の指でタオルを引っ張る)②ゴムバンドによる(腓骨)筋力訓練 ③バランスボードによるバランス訓練 ④サポーター
スポーツ活動に困る場合には、手術が考慮されます。
(以上、追記終わり)
次に捻挫ではなく、X線写真で脛腓骨骨折が明らかになった場合。これもご多分に漏れず、手術が必要か必要でないかという判断が必要になります。
くるぶしの外側が腓骨、内側が脛骨と説明しましたね? 二本とも折れる場合、あるいはどちらか一本だけ折れる場合、どちらの可能性もあります。脛骨と腓骨が両方骨折している場合、その多くは手術が必要となります。二本とも折れていると足首が不安定となり、大きな変形が生じることが多いためです。恐らくはこの段階で病院へ紹介されることがほとんどでしょう、もちろん手術に際しては入院が必要になります。脛骨は骨折が小さければスクリューやワイヤー固定、大きければ金属プレート固定や髄内釘。腓骨も金属プレート固定やワイヤー固定などが行われます。
脛骨と腓骨どちらか一本が折れている場合は、骨折しているところがどのくらいずれているか、その度合いで手術を行うかどうかの判断になります。ずれがそこそこあれば大抵は手術を勧められると思います、ここはあまり選択の余地がありません。微妙なのはX線で骨折線は写っているけれどほとんどずれていない、という場合。これはアキレス腱断裂と同じく、早く復帰したいかどうかで患者さんが選択することになります。保存的治療(ギプス)の場合、幅はありますが4~8週間程度の免荷(体重をかけないこと)および松葉杖が必要になります。2か月、かなり長期間ですね。一方手術の場合、こちらも幅がありますが免荷期間は3~6週程度。
おや、手術をしても1~2週間しか変わらないな、手術を選ぶ人いるの?と思われるかもしれません。しかしギプス治療の場合、経過中にずれが大きくなってきてその時点で手術が必要となる可能性もあります。1か月診療所に通院した挙句、骨折部がずれてきてそこから手術が必要ともなれば、3ヶ月以上日常生活に不便を生じることになります。また、歩行を開始できる時期があまり変わらなかったとしても、手術を行った場合には術後1~2週間程度で足首を動かす練習を始めることが出来ます。1週間で足首を動かし始めるのとギプスで6週間固定してから足首を動かし始めるのでは、足首の可動域(動かせる範囲)の回復が大幅に違ってきます。足首がかたくなって背屈(足首を上にあげる)が出来なくなると、足先が地面に突っかかって非常に歩きにくくなり、後遺症として残存することすらあります。よって特に20~50歳くらいの働き盛りの方は、早期復帰や後遺障害の可能性を減らすことを目的として、手術を積極的に考えてもいいと思います。
自分だったら…まったくずれていない場合を除いては、手術を選びますかね…やっぱりまたランニングできるようになりたいですから…
以上、今回は少し専門的な用語も多くて申し訳ありません。
ポイントは、
ⅰ)足首の捻挫は外側が多い。捻挫したらとりあえずRICEを。
ⅱ)自分で大したことはないと判断できる捻挫は、多分大したことはない。少し様子を見ても可。
ⅲ)歩けない捻挫は、捻挫ではなく骨折の可能性がある。診療所か病院でX線を。
ⅳ)骨折の多くは手術のメリットが比較的高い。ただし根気があればギプスで治せる骨折もある、医師の説明をよく聞いて判断を。
次回は「足」に続けようと思ったのですが(足の甲とかと足の指など)、頻度が低いのでお困りの際はコメントに残していただければ幸いです。
というわけで、次回はいよいよ「腰痛」を主題にしたいと思います。
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