整形外科 下肢(下腿)の打撲/捻挫
整形外科に行くべき状況、第4回。
今回は「下腿」の打撲/捻挫についてです。
膝より下となれば、すねとふくらはぎ。膝関節と足関節(くるぶしのところです)の間を下腿と言います。
下腿には外側に腓骨という細い骨、内側に脛骨という太い骨があります。すねをぶつけることは比較的多いと思いますがこの二本の骨が真ん中で折れることはまれ、かなり丈夫な骨です。仮にこの二本が折れる(脛腓骨骨幹部骨折)とすれば、バイク事故や高所からの転落などのかなりの高エネルギー外傷の場合となるでしょう。救急搬送一択と思います。
太ももの裏側(ハムストリングス)の肉離れが多いというのは大腿の項で述べましたが、ふくらはぎも肉離れが非常に多い場所です。
肉離れは3つの重症度があり、Ⅰ度:腱・筋膜の損傷がなく、筋内の内出血のみ Ⅱ度:筋腱移行部の損傷を認めるが、完全には断裂していないもの Ⅲ度:筋腱の完全断裂 に分類されています。つまり少し腫れるだけの軽いものから、筋肉が断裂してくぼみを触れるような重症のものまであるという事です。よって治療も、程度の軽いものは経過を見ていくことになりますが、筋が断裂した重度のものでは手術が必要になることがあります。
筋肉が切れているかどうかはX線ではわかりません(整形外科領域において、X線で見えるのは骨や石灰化などの一部の組織に限られます)。軽いものはいアイシングなどでしばらく経過を見てもいいと思いますが、くぼみを触れたり皮下出血が大きなもの、力が入らなかったり歩けないほどの症状が強いものは、病院でMRIを取ってもらうのが安心だと思います。
さらにこの延長線上にあるのがアキレス腱断裂です。これは10~20歳代よりも40~50歳代に比較的多く(腱が年齢とともに変性・老化するためです)、典型的にはバレーボール・テニス・バドミントンなどで踏み込んだ際に発症するスポーツ外傷です。
踏み込んだ瞬間に「後ろから蹴られた」「バチンと音がした」「ふくらはぎをバットで殴られた」などと表現されるような衝撃を感じ、アキレス腱に痛みを感じます。
このアキレス腱断裂。実はあまり痛くないことも多く、結構歩けてしまいます。では何が困るかというと、つま先立ちが出来なくなるのです。アキレス腱は足を底屈する(足先を下げる)際に働く腱ですので、これが切れると階段や坂道などで踏ん張りがきかずに、大変不自由な思いをすることになります。よって放置はよくありません。
診断。はっきりとくぼみがあれば触診のみでも容易ですが、腫れが強かったりすると結構見逃されてしまったりもします。放置したまま2~3週間経過すると、断裂した部分が縮んで治療が非常に難しくなってしまいます。「この診療所大丈夫か?」と思ったら、やはり病院でMRIを撮ってもらってください。肉離れだろうが腱断裂だろうがしっかりと診断がつきます。ここでもMRI最強。
治療は保存的治療と手術治療に分かれます。きっちりした治療を行えばどちらも治療成績は比較的良好ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。保存的治療とはすなわちギプス治療ですが、2か月程度の固定と松葉杖が必要で、結構不自由な期間が長い。一方手術は比較的早期復帰が可能(それでも6週間程度は装具が必要)ですが、当然入院と手術が必要です。
診療所では入院が出来ませんので当然保存的治療を提案されますし、逆に病院は手術をした方が手間が少ないし
自分がアキレス腱断裂を受傷したらどうするか……難しい選択ですが、自分はマラソンランナーなので手術を選ぶと思います。手術の方が早期に復帰できるのと、再断裂の確率が保存的治療よりもわずかに低いのがその理由です。手術は怖いですけれどね、合併症もゼロではありませんし。
ご自分のニーズに合わせて治療法を選択されてください。個人的には手術を選択したほうが悔いが残らないかなあ、という気はしています。
以上、今回は下腿だけで終わってしまいました。
ポイントは、
ⅰ)ふくらはぎの肉離れは重症度が様々。歩けないほどひどいものはMRIを。
ⅱ)アキレス腱断裂は中年のスポーツ外傷として頻度が高い。見落としも時々あるので、怪しいと思ったら複数の医療機関の受診を考慮。治療は保存的治療と手術治療のどちらもあり、それぞれ慣れていそうな医療機関を見極めたい。
次回は「足関節」、足首の捻挫と骨折を主題にしたいと思います。
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